第17話 ベルリスと幽霊退治・前編

 私はエリム

授業が終わったので自宅に向かって帰る最中、ある光景を目にした。


「嫌だ!行ってたまるか!」


 ベルリスが誰かに向かって駄々をこねていた。


「ベルリス?どうかしたの?」


「じ、実は...」


 ベルリスは何かを言いたそうにしているが、口を開かない。


「先輩のお友達ですか?実は先輩、幽霊退治の任務を任されたのですが、今みたいに行きたがらないんですよ...」


 ベルリスの後輩らしき人物が、状況を説明してくれた。


「ベルリス。任務はちゃんと行かなきゃ。私、怒っちゃうよ?もう一緒に見回りとかもしてあげないよ?」


「それは嫌だ!くっ、殺せ!」


 始まった。

さて。どうやってベルリスを落ち着かせようかな?


「あの騎士のお姉ちゃん駄々こねてる〜面白い!」


「あーあ...」


 街を歩く子供たちから笑われてしまっている。

こうなってしまえば、一緒にいるこっちまで恥ずかしくなってくる。


「すみません。先輩とご同行...お願いしても宜しいでしょうか?」


「私!?」


「エリムさん、ですよね?よく先輩がエリムさんのお話、聞かせてくれるんですよ。騎士たちの間でも話題ですよ。なので、エリムさんがいれば、きっと先輩は任務に行けると思うんです...」


「なるほどね...」


 ベルリスは私がいれば幽霊退治だろうが、任務に行ける。

それなら選択肢はこれしかない。


「分かった。私、ベルリスと一緒にその幽霊退治、行くよ。それならベルリスはちゃんと任務に行けるんでしょ?」


「あぁ...行ける。じゃあ、決まりだね。一緒にその幽霊退治、行こっか」


 私はベルリスと幽霊退治に行く決意をした。


 正直、私も幽霊は怖いけれど今の世界に転生する前の世界にいた頃に、ホラーゲームで遊んだり映画館でホラー映画を見に行ったりした経験があるので大丈夫な気がする。


「では、ギルドに」


 2人でギルドに行き、私は防具を身に付けた。

防具を身につけるのはベルリスと見回りに行った日以来だ。


「ベルリス、大丈夫?行けそう?」


「あ...あ、あぁ。大丈夫...だの...だの...大丈夫」


「うん。震えてるね」


 ベルリスはかなり震えている。


「はい。一旦落ち着こ」


 私はベルリスの手を握る。


「...落ち着いた」


 手を握っただけでベルリスは落ち着いた。

かなり分かりやすい性格をしている。


「分かりやすい」


「何がだ?」


「なんでもないよ。じゃあ、行こっか?その幽霊は一体、どこにいるの?」


 幽霊退治といえど、場所が分からなくては意味がないので、どこにいるのかを聞いてみる。


「あぁ...村だ。ユーレイ村という場所だ」


「名前からして出そう...よし、行こっか」


 私はそのままベルリスと一緒にユーレイ村に行こうとした。

が、その瞬間だった。


「待て!」


「何!?」


 ベルリスがいきなり大声を上げた。

正直、驚く。


「手...繋いでほしい」


「いいよ...」


 何かと思えばそれか。

ベルリスらしいと思いつつ、手を繋いであげる。


「出発だ!」


「テンションの差...」


 手を繋いだ瞬間、ベルリスはテンションが上がった。


「で、その村はどの辺にあるの?」


「多分この辺りだ」


 

 私とベルリスはユーレイ村まで歩いていると、それらしき村が見えてきた。


「人...いない」


「あぁ...」


 まだ昼なので外に人がいてもおかしくはないので辺りを見渡してみるも、人どころか動物の気配させしない。


「出てこい幽霊!エリムが相手になる!」


「私!?」


 ベルリスは早く帰りたいからか、幽霊を呼んだ。


 何故か私任せで。


「出てこない...本当に幽霊なんて存在するのか?」


「昼だからじゃないの?大体、幽霊とかって夜に出てくるでしょ?」


「そ、そうなのか?夜までここにいなくてはいけないのか!?」


「うん」


 かなりベルリスは嫌がっている。

それぐらい幽霊に会いたくないのだろう。


「とりあえず宿かなんか探すよ?夜に出るにしても、野宿とかは嫌でしょ?」


「そうだな...野宿よりはマシだな」


 で、泊まれそうな宿を探す。


「あそこしかなさそうだね...」


 かなりボロボロだが、宿を見つけた。

この村にはこの宿しかなさそうだ。


「ここに泊まるのか!?」


「当たり前でしょ。さっ、行くよ」


「そんなぁ...」


 ベルリスを連れて行きながら、宿に入る。


「すみませーん!泊まりたいんですけど?」


 誰かいないか声をあげて話しかける。


「はい...」


 奥から声が小さな老人が現れた。


「泊まりたいです...2人で」


「はい...」


 手を出してきた。

恐らくは宿泊料だろう。


「私とベルリスだから...銀貨2枚だね」


 1人1泊で銀貨1枚なので2人で1泊だから私とベルリスとで2人ずつ、宿泊料を老人に払った。


「ごゆっくり...」


 私に老人は部屋の鍵を渡す。


「あのっ!聞きたいことが...」


 幽霊について何か知っているかもしれないので老人に聞こうとしたが、老人は奥の部屋に行ってしまった。


「とりあえず!昼の内に幽霊を見つけ出そう」


「だね...見つかると良いけど...」


 2人で幽霊を探しに探したが、昼の内には見つからなかった。

仕方がないので部屋に戻る。


「見つからなかったな...」


「今は夜だし、そろそろ出てくるんじゃないかな?」


「夜は怖い!」


「頑張ってよ」


 今は既に夜、いつ幽霊が現れてもおかしくはない。


「今から私、外に行くけどベルリスは行く?」


「怖いから嫌だ!」


「はぁ...じゃあ私1人で行くね」


「それも嫌だ!私を1人にするな!」


「じゃあどうすれば良いのさ!?」


 そうこうしている内にいきなりコツ...コツ...と音が鳴る。


「だ、誰か来たのか?」



「分からない...開けてみるね」


 誰が来たのかが気になったのでドアを開けようとする。


 けれど。


「あれ?開かない...」


「どうなっている!?」


 部屋のドアが開かない。


 必死にドアを開けようと力を込める。


 そうしていると私とベルリスの後ろに。


「こんばんは」


 誰かが現れた。


 少女だ。


「うわぁぁわぁぁ!驚いたぞ!」


 ベルリスが大声で驚いた。


「ベルリスの声の方が驚いたよ!?で...誰?どうやってこの部屋に入ったの?」


 ベルリスの大声に驚きつつも、少女にどうやってこの部屋に入って来たのかを、問う。


「私、ずっと待ってたの」


「ずっと?」


 少女はにやけながら私とベルリスを見つめる。


「待ってたの...ずっと...待ってたの...ずっと...」


 少女はだんだんとこちらに近づいてくる。


「待って...たのおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉ!」


 少女は姿を骨に変え、巨大化した。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!出たぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!」


 私とベルリスは大声で叫んだ。


 続く。

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