第7話 ジェシカと手紙
「参ったわね…」
朝1番、ジェシカは手紙を見ながら頭を悩ませていた。
「おはよう。ジェシカ、何見てるの?」
「これよ」
私が話しかけるとジェシカは手紙らしき紙を私に見せてきた。
「これは…手紙?」
「そうよ。私宛に届いたの」
「何が書いてあったの?」
「それが分かんないのよ」
「え?」
手紙がジェシカの元に届いたのは理解できたがどういった文章が書かれているのかまでは分からなかった
「これ…鍵魔法がかかってるのよ。合言葉を言わないと解けないのよ。で、私はその合言葉を知らないの」
「鍵魔法か…」
鍵魔法は、ゲームで存在は知っていたので単語の意味は理解できた。
鍵魔法とは、その魔法を掛けると特定の物に対して鍵をかけることができる魔法だ。
今の世界で例えるなら携帯電話のパスワードみたいなものだ。
鍵魔法を解くには、魔法をかける際に決めた合言葉を言わなくてはいけない。
つまりその鍵魔法が、ジェシカの持っている手紙にかけられているので開くことができないのが、今の現状だ。
「でもどうしてその手紙がジェシカの元に?」
「多分、私と誰かを送る相手先が間違ってこうなってしまったのよ。誤字が原因と考えられるわ」
「だからね…」
ジェシカは手紙の鍵魔法の合言葉を知らないので恐らくジェシカ宛の手紙ではないだろう。
そうなってくると誰に向けて送られた手紙なんだろうか?ジェシカと名前が似ている誰か?
「学校終わったらこの手紙の本当に行くはずだった人、探さない?」
「そうね。もしかしたらとても大事なこととか書いてあるかもしれないし。賛成するわ」
私が手紙の宛先を探す話にジェシカは賛同してくれた。
見つかるといいな。
「で、どうやって探すのよ?」
「あ」
放課後になり、探そうとした。
だけれど、どうやって探すのかを考えていなかった。
「エリムらしいわね。そういうとこ」
「私らしいって何さ…えぇっと…何かないかな…」
すると
「あれその手紙…?」
「え?」
探していたら誰かから話しかけられる。
同級生のミシェルだ。
「良かった…ジェシカが持っていたんだ…」
「え…えぇ。この手紙?ミシェルの?」
「そう。シェシカに向けて書くつもりだったんだけど…間違えてジェシカに送っちゃって…」
ジェシカとシェシカ。確かに似てる名前ではある。
「そうなの?じゃあこれ返すわ」
「…いい。やっぱり」
ジェシカはミシェルに手紙を返そうとしたら。受け取りを断られてしまった。
「どうして?シェシカに渡したいんじゃないの?」
「ううん。いいの…もう」
ミシェルは何故か悲しそうにしている。
「聞き捨てならないわね?ミシェル…私宛だったとしてもこの手紙、相当大事なのが書かれているんじゃないの?合言葉決めておくぐらいなんだから大切な手紙に見えるわ」
「そ…それは…」
ジェシカは真剣な眼差しでミシェルに問う。
「分かった。ちゃんと…お話するから。場所を変えさせて」
ミシェルは私とジェシカを人気の少ないところにまで連れてきた。
「私とシェシカは普段から手紙でやり取りをしてるの。お互い、口では話しづらいんだけど…手紙でなら、一緒に楽しくやり取りできるの」
「いい友達じゃない」
「けど…やっぱり口でもお話ししたいからその話を今回出す手紙に書いたの。でも…ちょっとそれが緊張してて…やっぱり手紙のままでいいかなって思っちゃって…」
ミシェルは今に至る経緯を話してくれた。
その緊張のせいで手紙の名前の記入を、シェシカとジェシカを間違えてしまったのだろう。
「そうね…でも、手紙で文字のやり取りも素敵だけど、直接こうやって会話するのも大事だと思うわ。実際に顔を見て話してみて初めて分かるってことって沢山あるわ」
「例えば?」
「そうね…恋…とか?手紙だと文字だけになるけど直接話すってなると顔を見て話すことになるじゃない?だから、そこから恋が芽生える。なんてこともあるのよ。まぁ今のは例えだけど…」
「私が…シェシカに…」
ジェシカが直接会って話すことの大切さを話している最中に、例え話で恋の話を出してきた。
すると、ミシェルは固まった。
「…好きなの?シェシカのこと」
「…」
ミシェルはジェシカの問いに頷く。
「じゃあ…より一層、その手紙も出さなくちゃいけないし直接、お喋りもしなきゃいけないわね…ついでに告白もしちゃう?」
ジェシカはニヤニヤとミシェルに聞いてみる。
「そ…そんな…私なんかが…それに私の性別は…」
「性別なんて関係ないじゃない。私だって昔から女子を恋愛的な目で見ているんだし、ミシェルだけじゃない。女子同士の恋愛は、いつか普通になる筈よ。だから、自信持ちなさい!きっとミシェルの思いは伝わるわ!私が保証する!」
「ジェシカ…」
ミシェルはしっかりとジェシカの伝えたい話を聞く。
「分かった…私、シェシカと手紙のやり取りはこれまで通り続けるけど、ちゃんと会ってお話もする!で…で…」
「で〜?」
「告白する!」
「そうよ!行きなさい!」
「ありがとうジェシカ…行ってくる!」
そうしてミシェルはシェシカのいるところに向かって行く。
「ちょっと見に行きましょう。ちゃんと言えるか心配だわ」
「そうだね」
私とジェシカはこっそりとミシェルについて行った。
「シェシカ!」
「ミシェル…?どうしたのよ?」
ミシェルとシェシカが会話しているのが見える。
シェシカ、ジェシカと髪の色が違うが、見た目がかなり似ている。
「今日…手紙…届いてなくってごめんね…でもね、シェシカ。ちょっと言いたいことがあるの…」
「何…?言ってほしいわ」
「私…手紙だけじゃなくってシェシカとこうやって顔を見てお喋りしたい…もっとシェシカのこと、知りたい…」
「ミシェル…」
「これからは…手紙だけじゃなくって…シェシカとこうしてお喋りしていきたい…いい…?」
「…えぇ勿論!私、ミシェルとちゃんとこうやって話してみたかったわ」
「シェシカ…ありがとう!」
上手くいっている。
後は…告白か?
「もう一つ…いいかな?」
「何?」
「シェシカ…好きです。付き合ってください」
「…私も好きよ。付き合いましょう」
告白も上手くいった。
が、まさかのここで。
「やったわ!告白作戦大成功よ!私ったら恋のキューピットになっちゃったかしら〜?自分で自分の才能に惚れ惚れしちゃうわ〜。まぁ、告白も成功したんだし、どっかでプロポーズもするといいわね」
「ジェシカ…聞こえてる」
「え?」
ジェシカと私はバレないように小声で話していたが、告白成功した途端、大声を出してしまったのでミシェルにもシェシカにも聞かれてしまった。
「ご。ごめんね?2人とも…」
ジェシカは今ので固まってしまったので代わりに私が謝る。
一緒について来てる時点で私も同じだけれど。
「いいよ…2人のお陰でちゃんと告白できたし…ね?シェシカ」
「この2人からがきっかけだったの?ありがとう。ミシェル、後でその話、聞かせてほしいわ。私の家でどうかしら?」
「行く!シェシカの家、行ってみたい!」
私とジェシカのお陰でこの2人はカップルになれた。
こっそり聞いていたのはバレてしまったけれども怒ってないみたいだし、良いだろう。
「2人とも…ありがとう。エリムもジェシカも…お似合いだね?」
「そ…そうかな?ありがとう」
ミシェルは私とジェシカが、お似合いに見えたらしい。
ジェシカは今、固まってしまっているので耳に入っていないだろうが、もしここでジェシカが今の話を聞いていたらどうなっていたんだろうか?
そう考えつつも、私はイリスが待っている家に帰ったのだった。
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