第2話 彼女持ち

 どういうことだ?

何故、アランに彼女がいる?

 本来設定ではアランには最初から彼女はいなく選択肢を選んでいけば私と付き合える筈

なのにどうして彼女がいる?意味が分からない。


「アラン君、行こ〜」


「分かったからくっつくなよ」


 目の前で好きなキャラがよく分からないモブと付き合っていて更にはイチャイチャまでしている。

こんなの見るに耐えない。バッドエンドの方がまだマシなレベル。

 

「ま…まぁ違うルート目指そ…」


 今のはたまたまだったかもしれないしゲーム自体にはまだ別の攻略対象キャラが存在するのでそっちの方を攻略していけばいい。それなら今みたいな思いもしないで済む筈…

だった。


「先輩?どうかしましたか?」


「あのさ?放課後、空いてる?」


 次に私が狙ったのは後輩キャラのルーク君。

礼儀正しくて見た目もちっちゃくて可愛いんだよね。


「すみません…放課後は恋人と用事がありますので…」


「…そ、そう」


 また同じパターンだ。

アランも彼女持ちだったしルーク君もそうだった。

 次もまた別の誰かに話しかけてみるけれども嫌な予感しかしない。


「すみません…妻がいますので」


「はい…」


「俺様はな。彼女いるんだよ」


「ですよね」


 騎士のキャラだったり王子様のキャラにだったりと攻略対象キャラにひたすら話しかけてみるもまさかの全員彼女持ち。

あぁこれもう詰んだかもしれない。

 せっかくこの世界に転生してきたのにこれじゃあ意味がない。

何の為に生きていけばいいのか分からなくなってしまった。


「あぁ〜しんど〜」


 とわいえ今は生きているのとせっかく神が良心でこの世界に転生させてくれたので無駄にはできない

私なりに生きていこうと思う。

 幸い、この世界はモンスターがいたりはするが荒れたりはしていなく寧ろ平和なので生きていけられる。


「でもどうして…」


 普通に考えればゲーム通りの世界ならこんな筈はない。

いや待てよ?


「ゲーム通り…か」


 イケメンフロンティアはただでさえバグが多いゲーム。

恐らくこの世界でもバグが起きてしまっているのだろう。

 で、そのバグが攻略対象キャラ全員が彼女持ちになってしまっている。と。


「冗談じゃないってば…」


 ゲームでも実際、ちゃんと遊んでいたのにバッドエンドだったり場面と台詞が噛み合ってなかったりするといったバグは存在していたので今、バグが起きているとするならば辻褄が合う。

 こんなバグった世界に転生…あぁそうだ。私が生きたかったから来たんだった

この世界への転生を希望したのは他の誰でもない私自身。だからあれこれ今言っても仕方がない。

 攻略対象キャラじゃなくても彼女持ちではない誰かを好きになる可能性はあるのと2度目の学生生活を送れるので私なりにこの世界をエンジョイするとしよう。


「そろそろ次の授業…」


「あれ?エリム。今行くところ?」


 次の授業で使用する教科書とノートを鞄から出して整理していると誰かが私の隣に立った。


「あぁ…ジェシカか」


 ジェシカ、ゲーム本編では主人公である私の友達キャラになっている。

友達キャラってなだけあって出番はそこそこ多かった。


 今いる世界のジェシカはどんな感じなんだろうか?

彼氏とかいる?


「早く行かないと遅れちゃうわよ?」


「いやいいよジェシカ先行ってて」


 ゲームでのこのやりとりあったの思い出した。

この台詞を言ったらジェシカは先に今から行く移動教室向かうのだ。


「待つわよ。エリム、一緒に行きましょう」


「あ…あぁ…うん」


 あれ?これもゲームと違う。


「行こっか」


「えぇ」


 そうして私とジェシカは教室を移動する。

なんだか距離が近い気がするけど多分気のせい。


「ふぅ〜終わった終わった」


「そうね」


 今日1日全部の授業が終わったので屈伸する。

後は帰るだけかな?


「そうそう。エリム…ちょっといい?」


「何?」


 ジェシカが何かを聞いてきたので振り向く。

ゲームだとジェシカから出てくる台詞は大体攻略対象キャラの〜君好きなの?的な恋バナがメインになっている。

 恐らく今から始まる話も恐らく恋バナだろう。

そう軽い気持ちで振り向いて聞く。


「ショッピング行かない?欲しいノートあるんだけど一緒に見に行けたら楽しいかなって…」


「え?ショッピング?」


 ジェシカとショッピングなんて見たことがない。

というかそもそもジェシカは学園でしか出てこないキャラだったから学園以外でのジェシカを見るのは今回が初めてになる。


「あ…あぁ…うん。行こっか」


「ありがとね」


 どんなジェシカが見れるのか?

ゲームを遊び尽くしたがそんなのは初めて見るので面白半分でついて行くことにする。


「これね。これ」


「可愛い。私のはどう?」


「いいわね」


 2人で文房具屋でこれから買うノートの見せ合いっこをしている。

正直楽しい。


「買えたわ。ありがとうエリム」


「大丈夫だよ。私もノート買えたし」


「あのさ。この後…まだ大丈夫?」


「何かあった?」


 まだジェシカが私に何か言いたそうなので聞いてみる。


「あそこのレストラン、寄って行ってもいい?私、どうしても食べたいスイーツがあって…」


「いいよ。一緒に食べに行こっか」


「やったー!ありがとう」


 ジェシカと食事するなんて学食ぐらいでしか見たことないので割と新鮮だな。

お腹も空いてきていたし食べて行こう。


「えっと…ジェシカさん?それ全部食べるの…?」


「えぇ。エリムも食べる?」


 思ってたよりも段になっているパフェをジェシカは注文した。

実際、ゲームでも登場するので存在は知ってはいたが食べるキャラを見るのが今回が初めてだ。


「ぱく…う〜ん。おいし〜」


「お…美味しそうだね」


 ジェシカはそれをペロリと食べたので気にしながらも私は頼んだ料理を口にした。


「ってか食べる?」


「え?私も?」


「はい。あーん」


 ジェシカはアイスをスプーンの上に乗せて私の口元へと運んできた。

ゲームでは私が男子にあーんさせるイベントがあるんだけどまさか私がさせられる側になるなんて思ってもいなかったよ。


「あ、あーん」


 人前なので恥ずかしいが味は美味しい。


「こぼさず食べれたわね」


「う…うん…」


 何故かジェシカは私の頬を撫でてくる。

何処か温かく、自然と心が安らいでくる。


「あ〜美味しかった!今日はありがとう。エリム」


「大丈夫だよ。また誘って」


「えぇっ。じゃあ、また明日会いましょう」


「また明日…」


 攻略対象キャラに彼女がいて凹みそうになったがジェシカとノートも選んだし美味しい食事もできたので今日は楽しかったかな。

 また明日も頑張ろう…と私は自宅に向かった。

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