第7話 三令嬢 マチルダ・オテーヌ エリーザ・ラバーナ アン・ロマーナ

 私は教室の扉を開ける。中にはマチルダ、エリーザ、アンの三人の令嬢が待ち受けている。マチルダが先頭に立ち、その左側にいるエリーザいる。二人は高圧的に見える。アン様は俯いていて興味がなさそうである。


「失礼します、マチルダ様。ユリア様のことで話があると伺い参りました」


「あらアンドゥー。来ないかと思ったわ。でなければ、私の衛兵を差し向けてたわよ」


「はぁ」


「冗談よ。私が野蛮なことするわけないでしょ。ねぇ、そうよね、エリーザさん?」


「そうよ。マチルダさんは、あなたの緊張を解いてあげようとしているのよ。彼女の気遣いも察してあげることも出来ないの? だから……」


「それ以上は止めて差し上げたら、かわいそうよ」


「そうですわね」


「ところで。ユリアさんに何をしたのかしら? あの臭い小屋に行くなんて有り得ないわ。あのユリアさんがよ。認めたくはないけど学年一の才女よ。考えたら馬鹿でも理解できるわ」


「私には心当たりはありません」


「嘘を言っては駄目よ。私は心配しているの。彼女が帰ってきた時、私は側に近づいて臭いが染みついてないか確認したのよ。さすが、メリーチ家の令嬢だわ。彼女に漂う気品が、それを寄せつけなったのね。残念……なんでも無いわ」


「本当に何もしておりません」


「ふざけるんじゃないわよ! 私を誰だと思っているの。私は、あの大嫌……いや、お慕いしてるユリアさんを幼少から見続けてきたのよ。その表情、しぐさ、立ち振る舞いをね」


「決して、ふざけてなんかいません」


「冷静さを欠いてしまったわ。私は見逃さなかったわよ。小屋から帰ってきたときの彼女の表情をね。口角が僅かに下がっていたのよ。あの鉄仮面女がよ。あら失礼」


「ずっと見続けてるだけありますわ、マチルダさん。流石です」


「えぇ、そうかしら?」


「はぁ、そうなんですか。でも、本当に心当たりがありません」


「嘘は吐いてなさそうね。では、話をかえましょう。彼女は何をしに来たのかしら?」


「用があるとのことでした」


「その用とは何? 差し支えなければ教えて頂けないかしら?」


 彼女が何かを探っているのは明らかだ。しかし、それは徒労である。これ以上、彼女に付きまとわれても困る。私は、はぐらかせると不味いと考える。私は彼女に明日の放課後も呼び出されそうな勢いである。彼女なら、やりかねないと思う。今日で終わらせなくては、私は三人で帰れなくなってしまうので話すことにする。


「今日の迎えは不要とのことでした」


「それだけ?」


「はい、そうです」


「彼女に変った様子は?」


「いえ、特にありませんでした」


「他に何か言わなかったのかしら?」


「友人を紹介して欲しいと言われました」


「友人ねぇ、わかったわ。もう帰っていいわよ」


「失礼します」


 私は彼女たちに一礼して部屋を後にする。

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