第33話 絶景

 リゼの働きかけで、皆が水着に着替えることになった。

 まあ、浴場で僕のシャワー魔法を堪能するためらしいけど。

 僕が浴場のドアを開けると、そこはパラダイスだった。

 リゼ、クラウ、カルラがすでに水着を着て、脱衣所で待っている。

 エルだけは着替えに手間取っているのか、姿が見えない。


「人数も多いし、先に始めようか」

「そうですね、大変かもしれませんが、お兄様お願いします」

「了解。じゃあ、リゼからいこうか」

「はい!」


 リゼの水着は、ラベンダー色のビキニで、上下共にフリルが付いたタイプだ。

 胸元がフリルで隠れるので、Aカップのリゼには心強い味方なのかもしれない。

 まあ、リゼならどの水着を着ても、超絶可愛いのだけど。


「はい、終わったよ」

「ありがとうございます、お兄様!」

「手慣れたものだな」


 クラウが驚嘆している。


「まあね、僕は5年間ずっと、リゼのお世話をしてきたからさ」

「5年もか、それは上手くなるな」

「さあ、次はクラウね」

「よろしく頼む、旦那様」

「はいはい」

「アタシとクリスの初めての共同作業だな」


 また、クラウが変なことを言い始めたが、気にせず作業に入ろうと決めた。

 クラウの水着は、エメラルドグリーンのタンクトップビキニ、いわゆるタンキニだ。

 動きやすさを重視した、クラウらしい選択だろうか。

 でも、せっかくのEカップが隠れてしまって、勿体ないかな。


「じゃあ、始めるよ」

「どんとこい」


 クラウの赤髪って奇麗だな。リゼの銀髪とは違う美しさがある。

 ポニーテールをほどいて、ストレートにしたクラウは、伯爵家の令嬢というイメージだ。

 ポニテのときは、剣士のイメージが強い。


「痒いところは、ない?」

「ああ、問題ない。しかし本当に上手いものだな。髪を洗ってもらって、こんなに気持ち良いのは初めてだ」


 クラウが絶賛している。


「じゃあ、シャワー魔法でお湯をかけるよ」

「ああ、いつでも来てくれ。受け入れる準備はできている」


 いや、ただシャワーでお湯をかけるだけなんだが。


「おお、水ではなくお湯が出るって素晴らしいではないか!」

「クラウ、手足にかけてもらうとマッサージみたいで、気持ち良いんだよ」

「本当か、リゼ! 旦那様、是非やってみてくれないだろうか」

「はいよ、とりあえず髪についたシャンプーを落としてからね」


 僕は、手早くクラウの髪にシャワーをかけて、洗髪を終わらせた。


「はい、お待たせ。じゃあ、手からいくよ」

「うむ、楽しみだ」


 僕は、クラウの肩から順に、指先へとシャワーをかけた。


「確かにリゼの言う通り、揉まれているみたいで気持ち良いな」

「でしょ、クラウにもお兄様の素晴らしさが伝わったかしら」

「ああ、もとよりクリスはアタシの素晴らしい旦那様だ」


 よく分からないが、リゼとクラウが意気投合している。

 まあ、インフィニティのメンバー同士が、絆を深めるのは良いことだ。


「クラウ、次は足いくよ~」

「ああ、遠慮せずに思いっきり来てくれ。アタシは、旦那様の全てを受け入れる」


 なんかクラウが一人で盛り上がっている。

 ただシャワー魔法を、足にかけるだけなんだが。

 僕は、足の指先から少しずつ上を目指すように、シャワーをかけてあげた。


「おお、これはいいな! 稽古で溜まった疲労が、洗い流されていくようだ」


 クラウがとてもシャワーを、気に入ったらしい。

 僕は膝まできていたシャワーを、クラウの太ももへと進めた。


「ふあっ、なんだこれ! 今までに感じたことのない感覚だな。これは、クセになりそう……」


 あ、クラウが新しい扉を開きかけているな。

 危ない、危ない……。


「はい、終わったよ~」

「ふええ、続きは?」

「続きも何も、ここで終わりだよ?」

「そうなのか……何か新しい境地が、開けそうだったのだが……」


 ふう~、危なかった。

 初めてシャワー魔法を体験する人には、注意が必要だな。

 刺激が強すぎるのかもしれない。


「はい、次カルラね。お待たせ~」

「やっと自分の番っすね。楽しみっす!」


 カルラの水着は、赤の三角ビキニだ。

 上下とも紐で結ぶタイプで、カルラの美少女度を爆上げしていた。

 いつものサイドテールから、ストレートのセミロングになると、雰囲気が変わる。

 落ちついた感じの淑やかな令嬢に見えるから不思議だ。

 女性って髪型を変えるだけで、こんなにもイメージが変化するのだな。


「まずは、髪を洗うよ~」

「お願いするっす」


 前世で見慣れた茶髪は、何か落ちつく感じがする。

 リゼほど長くもないので、時間もそれほどかからない。

 シャンプーを洗い流して、洗髪はすぐに終わった。


「は~、気持ちよかったっす」

「でしょう、カルラにもお兄様の素晴らしさが伝わったかしら」

「勿論っす。クリスっちは最高っすね」


 リゼは、カルラとも仲良しになったみたいだ。

 5年間、僕しか話し相手がいなかったので心配だったが、友達ができたみたいで良かった。


「カルラも手足にシャワー魔法かける?」

「是非、お願いするっす!」

「はいはい、じゃあいくよ~」


 僕は、カルラの手足にシャワーをかけるため、一歩前へ踏み出した。

 するとそこは……絶景だった!!


 洗髪中は、カルラの頭で隠れて見えなかった。

 でも今は、赤の三角ビキニからこぼれそうなGカップがそこにある。


 通常水着は、正面から見ることがほとんどだ。

 しかし、今僕はカルラの頭上、真上から水着を見ている!


 前世から女性の水着姿は見慣れているけど、真上の視点から見たのは初めてだ。

 カルラが少しでも動こうものなら、赤の三角ビキニとGカップの隙間から、大事な部分が顔をのぞかせそう。


「どうしたっすか? いつでもいいっすよ」


 困ったな……見てはダメと思う気持ちと、見てみたい気持ちが半々だ。

 う~ん、どうしよう……。

 いくら考えても結論が出ないので、僕は考えることを放棄した。


 成り行きに任せよう!

 名付けて『見えちゃったら仕方がないよね大作戦』である。


「ああ、ゴメンゴメン。じゃあ、始めるよ~」

「はいっす、楽しみっすね」


 僕はカルラの腕に、クラウのときと同じように上から下へとシャワーをかけた。


「おお、気持ちいいっすね」


 カルラが笑顔で答える。

 この程度では、ピクリとも動かないようだ。

 カルラに動きがないと、戦況に変化がない。


「次は、足いくよ~」

「どうぞっす」


 僕は、カルラのつま先から膝にかけてシャワーをかけた。


「ひゃ~、なんかくすぐったいっすね」


 カルラが微かに身をよじった。

 その瞬間、カルラのGカップと三角ビキニも不規則に形を変える。

 僕は、決定的瞬間を目に焼き付けようと、カルラの胸元を凝視した。


 しかし、偶然が偶然を呼んでいるのか、見えそうで見えない。

 ならば、クラウが新境地を開きそうになった、太ももを攻めるまで。


「どんどんいくよ~」

「きゃはは、限界が近いっす~」


 僕は、カルラの太ももの上部から外側を攻めた。


「うひゃひゃ、やめ、もう、限界かもっす~」


 カルラが、くすぐったくて限界を迎えそうになっている。

 体を大きく揺らして笑うたびに、Gカップと三角ビキニも大きく揺れた。


 だが、あと一歩、あとほんの一歩が届かない。

 こうなったら最終兵器の投入である。

 太ももの内側、さすがのカルラもこれには耐えられまい。


「最後いくよ~」

「あひゃひゃひゃ、まだあるんすか」

「ほい」

「ぶひゃひゃひゃ、ムリ、もうムリっす~!」


 くすぐったいカルラが限界に達し、突然椅子から立ち上がった。

 ちょっ、待って待って……僕の顔めがけてカルラの頭が飛んでくる。

 ギリギリ避けきれず、カルラの脳天が僕のアゴにスマッシュヒットした。


 僕は、ノックアウトされて大の字になって倒れる。

 クラウにも勝った僕が、まさかカルラに負けるなんて……。


 その後、リゼが僕とカルラにヒールをかけてくれて、事なきを得たのだった。

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