第10章 6人目

 福本飛鳥は奈良杏奈を三角絞めで始末した。「アンタも、私を裏切るのね?」

 三角絞めは、格闘技などで使用される絞め技の一種。相手の首と片腕を両足で捕らえ、相手の片側の頚動脈を内腿で絞めながら相手自身の肩で反対の頚動脈を絞める技である。戦前の日本で盛んだった旧制高校の柔道大会、いわゆる高専柔道で開発されたものだが、近年、ブラジリアン柔術やMMAなど世界中の格闘技に広がっている。

 七尾を結花が、真里愛を飛鳥が、鎌倉を杏奈が殺した。

 

 愛知の北東部に位置する豊橋。佐藤健太は、強盗を親から子へと家業のように引き継がれてゆくこの街から抜け出そうとしていた。しかし、その思いとは裏腹に、今では強盗一味のリーダーに収まり、狭い街角で家族のように血と骨を分け合って育った3人の仲間たちと、ひとつの証拠も残さない完全犯罪に命を張っていた。


 その日も綿密な計画に従って蛇骨電工を襲撃。だが、逃走するまでの間、予定外の人質を取る羽目になる。人質となった工場長の高橋亜美が豊橋の住民だと知った佐藤は、何を見たのかを確認するため、正体を隠して彼に近づく。決して交わるはずのなかった2人の出会いは、やがて豊橋の人々の運命をも変えてゆく。激しい恋に落ちた亜美との新しい人生を願う佐藤。


 だが、愛知県警の捜査官、桐谷は執拗な追及で一味を追いつめる。一方、豊橋を出ていこうとする佐藤を許さない仲間の福本飛鳥。そして、亜美に忍び寄る裏社会の掟。仲間を裏切るか、愛という名の希望を失うのか……。佐藤は創業者・馬場の襲撃という最も危険な最後の仕事へと向かう。人は生まれ持った宿命から逃れ、人生を変えることが出来るのか・・・?

 

 

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