短編集

莉夜

ベッドおんざクローゼット

動くのがめんどくさい。


ずっとベッドの上でゴロゴロしながらスマホをいじる。そんな毎日。


友達と遊ぶのが苦手な私は春休みをそうやって浪費していた。


曖昧な人生に嫌気がさす。


流石に着替えようと一度ベッドの上で起き上がってみたは良いものの、向かいにあるクローゼットに目をやり今日何度目かの溜息をつく。


なんだかごちゃごちゃしてて汚いな。


昔は可愛い服を綺麗に並べて開くだけでキラキラした感情に支配されていたのに。


着替える気が失せてもう一度ベッドに横になる。


そして今日1日だけで何度開いたから分からないSNSのアイコンをタップする。


そこは変わらずキラキラしていた。



私の心はいつまでもキラキラしないのに。


スマホという小さな箱に詰められただけの虚は少しでも視線を逸らせばそんなキラキラは世界の裏側にでも飛んでいった。




不意に通知音がなる。



「今から暇?」



唯一と言って過言でない友人からメッセージが送られてきた。


「暇だけど暇じゃない」

何だか外に出させるような予感がして曖昧な返事をする。


「何だよそれ笑」


気にしていないような様子の彼から再び追って画像とメッセージが送られてきた。



「これ、似合うと思って。買いに行かね?」


いつからか着なくなった少し可愛らしい洋服。

それでもいつの間にか私の口角が上がっているのが分かった。


「まぁ良いよ。行こう」


その嬉しさを隠すように素っ気ない返事をしたが、それだけでは可愛げがないと思い、可愛いOKサインのスタンプを添付する。


「じゃあ今から迎えに行くから準備して待ってて」


そう言われたのを確認してから先程送られてきた画像を再び表示して意味もなく拡大したりしてみる。



クローゼットを見てもいつの間にかキラキラした感情を持ち合わせなくなった私の心が久しぶりにワクワクした。



だって君が似合うって言ってくれたから。


さっさと準備をしよう。私はもう一度起き上がってクローゼットに足を運んだ。

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