チャット

チャット・上司がうぜぇ

 疲れた身体、部屋着に着替えることもせずベッドの上へ投げ出した。

 徐に右手に握っていたスマートフォンの画面を開く。ほぼ無意識のうちにチャットアプリを呼び出し「ソウルメイト」と書かれたグループに入った。

 

 三角:「集合」

 兵賀:「どうかしたか?」

 三角:「上司がうぜぇ」

 兵賀:「解散」

 九木田:「解散」

 

「え?おふたりとも、ひどいのではなくて?」

 せっかく集合をかけたというのに、三人しかいないメンバーのうち二人に解散指示を出されてしまった。遺憾の意。わたしは負けじと返信を打ち込む。両手打ちだ。

 

 三角:「なんでこんな時だけ反応早いの?」

 三角:「特に九木田」

 九木田:「解散」

 三角:「頑なか?」

 九木田:「俺は今イベントで忙しい」

 三角:「わたしもアイテム集めに走らなきゃだわ」

 兵賀:「このゲーマーどもめ」

 

 兵賀の発言で、話したい内容からすっかりずれていることを思い出す。けれどもなんとなくイラッときたので悪態をつく。

 

 三角:「うっせーよ兵賀」

 九木田:「兵賀は画面酔いでゲームできないからな。あまり言ってやるな」

 三角:「そうだった、ごめんねひょーちゃん」

 兵賀:「喧しい。上司の話はどうした」

 

「あー……」

 そういえば上司についての愚痴を言いたくてこのグループに駆け込んだんだったと思い出す。どうでもいいことを話していたら、愚痴の方がよっぽどどうでもよくなってしまった。この浮上した気分であんな奴の話題は出したくない。楽しい気分のまま終わりたい。

 

 三角:「あー、打ち込むのめんどくさいからパスで」

 兵賀:「解散!!」

 

「あっはっはっは!」

 きっと怖い顔をして解散を叫んでいるであろう兵賀の姿は想像に難くない。わたしは少しすっとした胸を抱えて、明日のためにシャワーを浴びることにした。

 今日もわたしのソウルメイトたちは優しい。

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