新たな脅威とケンカ慣れのせい
4月2日、土曜日。午後4時、駅前。
「遅すぎる。」
既読のつかないトークアプリのチャット欄を眺めながら、呟く。
駅によくある謎オブジェを前に僕は、1時間近く人を待っていた。相手は無論九条さん。
昨日は連絡先を交換しただけで案外簡単に解放された。
何か試されてるのか、異様な遅さだ。
そんなこんな考えていると、謎オブジェの上から声が掛かった。
「よっ」
「誰だよ」
知らない童女がそこに居た。
「とりあえず危ないから降りなー」
「アタシは猫噛 彩子っていうんだ。よろしくなー」
黒いツインテールの毛先をクルクルしながら名乗る。
「無視かよ」
「アンタはー?」
「知ってんじゃないの」
「有名人にでもなったつもりか?」
僕の目の前に飛び降りた猫噛
あからさまな呆れ顔で、猫噛はため息を吐いた。
「名前も知らずに話しかけて来るとは思わないでしょうが。」
なんだこの子供。と思いながら僕も一応、答えを返す。
「はあ、桐ヶ丘旭でーす。」
「適当だなあ。」
「で、どういう用かな?」
「後で話す、面貸せ」
「無理だよ。僕、ここで待ち合わせしt」
パチン
僕の発言を遮るように猫噛は指を鳴らす。違和感を感じた。次の瞬間、鳩尾に衝撃が走る。
「ぐ。」
「アタシは『貸せ』っつったんだよ。お願いじゃねえぜ?」
彼女は歩み寄り、否、距離を詰め、僕の襟首を引っ掴む。腹を抱えて座った姿勢を無理矢理起こした形になるので、結構気持ちが悪い。
「てめえが大人しけりゃ、もう手荒な真似はしねえよ。」
なんて言ってるところから、この衝撃は彼女が起こしたものらしい。
「最後まで言い切ってねえよ。」
「知るか。」
指パッチンの指の形を今度は左手で形作る。どうやら、指を鳴らすのが、あの衝撃のトリガーらしい。
こちらに背を向け歩いて行く。どうやらここで長く話すつもりはないらしい。ダメージの直後でこのまま逃げても、逃げきれない。かといってこのままじっとさせてもくれないだろう。
「何で来ねえ。」
ああ、もう振り向きやがった。く、一芝居打つか。
「来いって言われてないし、、、あと痛くて動けないんだよ。さっきのあれのせいで。」
「え、マジ。」
「狙ってやったんじゃないのかよ・・・」
「悪い悪い、てめえの弱さ考えてなかったわ」
と言いながら、彼女は対面のベンチへと歩きだす。僕から数歩進んだ距離がすたすたと縮まっていく。
今だ。まず、左手を払い、開かせる、素早く猫噛の両手を抑え、足を軽く踏む。椅子に座った抑えた両手を後ろのベンチに叩き付けた。
「なっ」
彼女が驚きの声を発する頃には、僕は完全に彼女をとらえていた。
やったぜ。思った瞬間、後ろから声がかかった
「なにしてるの?」
赤信号を渡れない @mesa-jp
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