本格始動と新年 Ⅶ
北暦290年
ケプラー日時 12月31日 15:33
第2超巨大コロニー グリーゼ 宇宙連合軍 士官学校 第2訓練場
ゼノビア、リュドミラ、ザヴァリィ、ジョセフィーヌ。4人の秘書とトレーニングを開始してから早くも6日目――
中々キツイ……
普段もほぼ毎日約1.5時間にわたり有酸素運動や筋トレなどを行ってはいるが、やはり本格的なDDパイロット用の強度の高い運動は身体に響く。
初日よりはこの辛さに身体が慣れてきていると感じつつ、何をやっても彼女達に置いて行かれる悔しさを少し噛み締めていた。
彼女達もブランクがある様だが、軽々とメニューを熟していく姿を見ると自分の衰えを痛感する。
あれが若さか……
6日目にもなってくると最初は俺の事を色眼鏡で見ていて集中できていなかった彼女達は日に日に訓練に集中するようになっている。
「アスト大佐、無理せず休憩なさっても大丈夫ですよ?」
「アスト大佐、今のフォームどうですか?」
「大佐、私と模擬戦する?」
「アスト様、次は耐G訓練へ行きませんか?」
いや、なってなかった。
今更おっさんにこんなハードな訓練は無理。俺が小説の中の人物と違って(内容は知らない)ダサい所を見せれば少しは寄り付かなくなるだろうと、楽観的になっていた自分がアホだった。
「そうだな……射撃訓練なんてどうだ?」
これなら多少節々が痛まずに済む。
という情けない理由での提案は満場一致。5人は士官学校の射撃訓練場へ移動する。
5人がしっかりと宇宙連合軍仕様のシューティンググラス、射撃用ベストを着用、首からイヤーマフを下げ射撃訓練場へと入る。各々が隔離された射台へ立ち、射撃準備ができた者から的へ発砲し始めた。
アストはそこへは立たず、後ろのモニターで誰がどのような射撃を行っているか確認していた。
この6日間である程度、彼女達の実力が見えてきた。
リュドミラ・スミルノフ
赤みを帯びた黒髪セミロングが特徴的な彼女は訓練の様子を見るにどの様な訓練を行なっても息を乱さず忍耐力が高い。そして射撃のセンスがあり、特に狙撃の正確さはリリアといい勝負だ。
ゼノビア・マルティノス
ダークブロンドの波状ロングヘアーを靡かせる彼女は洞察力が高く、そして気配り上手だ。その性格のお陰か銃の残弾管理、スムーズなリロードを行っている。優しい性格でいつも休憩を提案してくれるのも彼女だ。
ザヴァリィ・カーメネフ
黒髪ショート、小柄でボーイッシュな彼女は近接格闘訓練の際は体格で劣るジョセフィーヌ相手に互角に渡り合う程の練度を持ち、拳銃の扱いはかなり様になっている。アーシアの様な未曾有の闘い方とは逆に堅実に攻めるタイプだ。
マリー・ジェンナ・ローサルト・タシェ・ドーラ・ボアルネ
訓練中は長い髪を三つ編みにして纏めている愛称ジョセフィーヌは、宇宙連合艦隊で最も規模が大きく、また最も強いと言われている第7艦隊に所属していた経歴がある。訓練での振る舞いを見るに先程の3人を足して割らずに掛け合わせた様な心技体全てにおいて無類の強さを感じ、本当にあの第7艦隊に居たんだなと思い知った。
訓練中の彼女達はとても優秀だが、結局は実戦になってみなければ本質は分からない。
過度な期待はしない方がいいだろう。
モニターを眺めているアストに「大佐も撃って」とザヴァリィが拳銃のグリップ側を向け手渡す。
まぁ撃つだけなら、やらんこともない
アストは手渡された銃を握り、背中に期待の眼差しを受けながら射台へ立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます