一章 思い出す事など(3)

   Ⓚ


 夢を見ていた。十五年前の、在りし日の夢であった。

 漱石は鷗外と肩を並べて、とあるみすぼらしい家の部屋にいた。

 二人の前には一人の乙女が在る。

 乙女は下半身を布団のなかに差し入れ、上体を起こして二人に向き合う。枕元に湯呑と薬の袋。部屋の中に定期的に広がるコホコホという咳は、彼女の喉から生まれていた。

『手術を受けていただきたいのです』

 鷗外が乙女に訴えた。

『樋口さん、貴女は我が国の文学の魂の結晶です。貴女にはもっと生きて、素晴らしい文学を綴り上げていただきたいのです』

『一葉……いや、夏子。俺からも頼む』

 頭を下げ、漱石も言う。

『森先生が、青木たねみち博士の手術を受けられるよう取り計らってくださった。完治は難しいとして、数年の猶予を得ることは可能だと博士も仰っている。昔の許嫁の頼みを聞いてほしい。手術を受けてくれ』

 漱石に倣い、隣の鷗外も頭を下げた。

 二人にとって彼女は、自らの頭を下げるに値する相手であった。

 彼女は二人よりも年下で、しかも女性だったが、二人は詩魂溢れる才媛を尊敬した。

 そんな二人に、一葉という乙女は鷹揚にほほ笑む。

『森鷗外先生と金之助さんに頭を下げていただけるとは、作家冥利につきます。ですが、私の心は既に決まっております。私はこのままでいいのです』

『どうして!』

 漱石は顔を上げ、問う。

 死病を得ながら泰然としている彼女を、漱石は理解できなかった。

『黄泉路に片足を踏み出して、ようやく私は自分の文学というものを確立した気がするのです』

『貴女の文学?』

 鷗外がかすれた声で呟く。『ええ』と一葉は頷く。

『私は自然の色々な表情を詩や小説にして、紙の上に綴ってきました。私の文学は常に、大いなる自然から与えられたものでした。そして私もまた自然の一部であり、大きな流れのなかにいる存在だと気付いた時、小さな己に固執する無意味さを悟ったのです』

 そして彼女は言う。

『則天去私……それが私の文学の極致です。身を天地自然に委ねて生き、自然の大いなる流れの一部を借りて文学と為すことが、私の文学です。私の病気もまた、天地自然の流れの一部と言えるでしょう。ならば私は、己の病気も受け入れたく思います』

『天に則り私を去る――運命を受け入れ、現世に執着するのを止める気か』

 漱石は彼女の言葉の意を読み取った。だからといって納得はできない。

『私は嬉しいのです。ようやく文学というものが分かりかけてきましたから』

 透き通った笑顔を浮かべる一葉に、漱石と鷗外はなおも言葉を重ねて説得を試みた。

 それが無為に終わった時、二人は無力感を共有した。


 一葉――樋口夏子の訃報が、漱石に届けられた。

 彼女の死は、漱石の歩む道に大きな影響を与えた。

 漱石は、心底敬愛した女性が「則天去私」を選んだというのであれば、その選択は尊重するべきだと考えていた。

 一方、一葉に死を受け入れさせた「則天去私」という思想は、絶対に認めなかった。

 あまりに頑なな態度は、余人から咎められるほどであったが、漱石は譲らなかった。

『則天去私を選んだ一葉の自由は尊重する。だが、俺が則天去私を否定する自由は、何者にも奪わせない』

 漱石は主張した。他者の自由は守りつつ、自分の信念だけは曲げないと。

 何者にも流されず、私を去ることなく、夏目漱石という自身に執着し続けると。

 その主張は、やがて爛々とした輝きを放つ「個人主義」という思想へ変化していく。

『俺は自由であり続けたい。だからこそ他者の自由を尊重する。そして自由であり続けるために、他者の自由は命懸けで守り抜く』

 自由な己を守るために、他者の自由を守る――「個人主義」の旗を掲げた漱石は、作家たちの筆を縛ろうとする政府や社会主義者と戦う決意をした。

 自由を奪う者は暴力で排除するという過激な決意は、彼を作家から戦士に変えた。

 そしてその決意は、樋口一葉を失ったことを源泉としていた。

 それだけ漱石にとって、いや、日本文学にとって。

 彼女の存在は大きなものであった。


   Ⓚ


 一九一一年七月十四日。

 漱石が目覚め、そして英世によって寝かしつけられてから五日後のこと。

 治療を受け続ける漱石の元に、再び鷗外が訪れた。

「気分はどうだね?」

 鷗外の問いに、漱石は言葉を返す。

 以前の自分の声とは比べものにならぬ、美しい声で。

「最悪だ」

 鷗外が目を見開いた。発声できるとは思っていなかったのだろう。

「見たまえラトルスネーク、嬉しい誤算じゃないか。もう喋れるようになるなんて」

「ここ数日、患者はひたすら発声練習に取り組んでいましてね。ドクトル、あなたに罵詈雑言を浴びせるためだそうです」

「まぁ、そうだろうな。夏目君の怒りは理解できる」

 英世がベッドの脇に椅子を用意する。

 鷗外は椅子に腰かけて、漱石と視線をぶつけた。

「で?」

 会話の口火は漱石が切った。

「森先生、どう説明をつける? 他界した一葉の肉体は勝手に冷凍保存されていて、しかも俺の脳味噌が彼女の頭の中に移植されていた。俺と一葉を実験動物にするとは、大したお方だ」

「随分な言い様だな」

「これは序の口だ。これからもっと口が悪くなる。おいラトルスネークとやら、外してくれ。森先生と二人だけで話がしたい」

「駄目だ。彼はここにいてもらう」

 漱石は鷗外を睨みつける。

 今は麗しき乙女の身体なので、威圧の効果はいささか心もとない。

「あんたの護衛ってわけか?」

「違う。君の護衛だ」

「俺の?」

「君は殺されかけた……いや、殺されたんだぞ。使われたのは昨年英国で開発されたばかりの新兵器である小銃擲弾ライフルグレネードだ。こんなものを日本に持ち込むには、相応に力がある人間が関わっていなければならない。分かるか、君は本格的に政府から命を狙われていたんだ。護衛をつけるべきだろう」

「政府が俺の命を狙ったのなら、どうして俺を軍の施設に入れた」

 ここ数日、漱石は部屋から出ていない。

 だが、回復していく目と耳で集めた情報から、ここが軍の秘密病院であることの確信を得ている。ついでに、入院させたのが鷗外であることも見抜いていた。

「一年前の事件『修善寺の大患』に軍の関与はない。あれば私が気付いたはずだ」

「あんたや軍は暗殺に関与していないと?」

「当然だ。むしろ君の命を狙った政府は、私に計画を悟られぬよう、軍を計画の外に置いた。お陰で事件から一年経った今も、下手人の痕跡が掴めん」

 鷗外が表情に垣間見せた疲れは、漱石が眠っている間に、鷗外が方々手を尽くしていたことを表すものだった。

 その表情を見た時、漱石はほんの少しだけ鷗外を信用してもいい気になった。

 あくまでほんの少しだけだが。

「君の今後にも、彼の支援は重要になってくる。ここは受け入れてくれ、夏目君」

 受け入れないと話が進まない、と言わんばかりだ。

 場に一人立っている英世をひと睨みしてから、漱石は頷いた。

 意地を張るべき場面がここではないとは分かっている。

「さて、まずは樋口さんの肉体の冷凍保存について語ろう」

 長い語りの前に、鷗外はそう前置いた。

「知っての通り、彼女は今から十五年前、一八九六年に二十四歳の若さで他界した。己の死も自然の一部と受け入れ、末期まで詩を詠み、自然と命の美しさを世に留め置いた」

 鷗外の声には寂寥の響きがあった。

 漱石も「そうだったな」と、一葉の声で相槌を打つ。

「君と同様、私も彼女の死を大いに悔やんだ。彼女の死は受け入れがたかった。だから、彼女の死が目前に迫った時、私は意識を失った彼女に冷凍保存措置を施した」

 鷗外は目を爛々と輝かせる。

「身体を冷凍保存して今まで残していたのは、彼女への未練の表れだった。同時に、未来の医学でなら彼女を完全回復させられるかもしれないという、一縷の望みの発露だった。私は氷の中に彼女の肉体と脳と、そして魂を閉じ込め、次世代に託すつもりだった」

 肉体を勝手に冷凍保存するなど、許しがたい蛮行である。

 当然、漱石には鷗外を糾弾する権利があった。

 元とはいえ、彼女は許嫁であったのだから。

 しかし鷗外がいかに彼女のことを尊敬していたかを知る漱石は、鷗外の逸脱を糾弾する言葉を持ち合わせていなかった。

 自分が鷗外の立場だったら、あるいは同じことをしていたかもしれない。

 漱石の口から、糾弾の代わりに問いが出た。

「冷凍保存なんて、あんたにそんな技術があったのか?」

 鷗外は首を横に振る。

「いや、あの技術は協力者が提供してくれた。名をほしはじめという」

「その名前、新聞で目にしたことがある」

「科学者であり、実業家でもありながら、福島から衆議院議員として当選した才能の化身だ。特に薬学と冷凍技術の方面に碩学で、作家としての顔も持つ。まさに天才だ」

 才能の怪物キメラだな、と漱石は内心で思った。

「星先生はSFにも詳しく、若い頃よりタイムスリップの研究をしていた。コールドスリープすることにより、人間は三十年後や百年後、それ以上先の世界に至ることができると論じてきた。そして若き日の彼と私は手を組み、氷で彼女の身体に流れる時を止めた」

「時よ止まれ、お前は美しい――か。とんだファウストもいたもんだ」

「私がファウストなら、星先生はさしずめメフィストフェレスといったところかな」

 ゲーテの作品を引用しつつ、鷗外は語りを続ける。

「彼女は、私が管理する軍の研究施設の地下に保管されていた。本来なら彼女は、凍った時のなかで悠久に眠り続けるはずだった。ところが、二つの事件が起きた」

「二つ?」

「一つは言わずと知れた『修善寺の大患』だ。君が小銃擲弾ライフルグレネードにより重体となった。医学の粋を尽くしての治療で、絶命までに約一年間の猶予を持たせることには成功した。しかし肉体の治癒は望めず、迫り来る死は防ぎようがなかった」

 そこで鷗外はもう一度、倫理の壁を踏み越えることにしたという。

「私はかつての誓いを思い出した。もう二度と、若い作家を死なせるまいと」

「俺はもう四十を超えていた。若くはない」

 乙女の若々しい声で呟けば、鷗外が苦笑する。

「私からしてみれば君は若い。そして何より、樋口さん同様、君もまた日本文学にとって欠くことのできない人物だった。例え君の死が天の運命であったとしても、私はその運命を覆すことを決めた」

 もう一つ事件があった、と鷗外が続ける。

 彼の声が平坦になった。

 感情を抑え、冷静に話そうとする努力が透ける声だった。

「修善寺の事件から数か月後。治療も虚しく、君の身体の限界が近づいていた頃だ。軍の研究施設に侵入し、彼女を解凍し、頭を切開して脳を盗んだ者がいる」

「……ッ!?」

 猟奇的な内容だった。初めて聞いた話でなければ、もっと驚いていただろう。

 そう、この猟奇的な犯行には聞き覚えがあった。漱石との因縁も深い犯行だった。

「まさか『ブレインイーター』が!?」

「そうだ。作家を襲い、脳を持ち去っていく猟奇的殺人犯――通称・ブレインイーターの犯行だ。これまで何人もの作家が奴の餌食になった。犠牲者の中には、我々のよく知った人物もいる」

 漱石は一葉の口で奥歯を噛みしめる。

 脳裏をよぎったのは、学生時代の思い出。野球をした時のこと。

 グラウンドをひときわ陽気に駆けていく彼の姿は、今でも鮮明に覚えている。

「私と親交があり、君の親友であった作家・まさおかだ。彼はブレインイーターの最初の犠牲者だった。病で臥せているところを狙われ、頭蓋を破壊され、脳を奪われた」

 鷗外が語ったのは九年前の出来事である。

 漱石の親友で野球仲間でもあった正岡子規が殺されて以来、ブレインイーターの被害は続いていた。

 かつて漱石が、その文才に惜しみない称賛を送った作家・くにどっ

 あきと親交深く、『文壇の白百合』の異名を持つ女流作家・やまかわ

 直近でも二名が犠牲になっている。命を、未来を、そして脳までも奪われた。

「どうやってブレインイーターが彼女の肉体の所在を知ったのかは不明だ。だが現実問題として、奴は冷凍保存された樋口さんから脳を持ち去った。しかも雑に解凍されたことで肉体の再冷凍も困難となった。我々は肉体を有効活用する以外に、方途がなくなった」

「そして脳を失った彼女の肉体に、肉体を失いつつあった俺の脳を移植したのか」

「狂気の発露だと謗ってくれていい。実際に、私も自分のやろうとしていることは狂気に満ちていたと思った。だがこの方法にすがらなければ、樋口さんと君の両方……日本文学の対の翼が失われる。私は必死だった」

 鷗外は重いため息を場に落とした。

「手術の成功確率は無に等しかった。薬と冷気で完全に近い状態で保存したものの、彼女の身体は一度心臓を止めている。再び心臓が動き出す保証はない。脳の神経や血管やらを完全に繋ぎ合わせる技術のある医者もそう居るはずがない。しかしまぁ、持つべきものはやはり協力者だ」

 協力者とは、先に鷗外が言及していた星博士のことだろう。

「今度も協力者が力強いサポートをしてくれたよ。彼はとある医者を知っていた。それがラトルスネーク……野口英世君だ」

 鷗外の説明するところによると、技術について星博士からの絶対の信頼を勝ち得ている医師・野口英世は、幼少の頃、囲炉裏に左手を突っ込んでしまい、左手が不自由になってしまった。

 しかし左手の機能を補うかのように右手が異常発達し、高速かつ精緻な手術を手掛けられるようになったという。

 やがてアメリカに渡った彼は、危険を伴う毒蛇の毒の研究を行うようになった。

 強い毒を持つガラガラヘビラトルスネークを、拘束しつつ毒を抽出するという危険な作業を右手のみで行い、命知らずの荒業を見た研究仲間たちから『ラトルスネーク』と呼ばれるようになったという。

 その彼は漱石の手術のため日本に招かれていたが、ブレインイーターの案件が発生。

 脳移植手術という前人未到の領域に挑むこととなり、無事に成功させたのだ。

「ああ、他の功労者についても触れる必要があるな」

 鷗外は思い出したように言う。

たかはまきょ君だ。君が修善寺で会っていた客だよ。小銃榴弾の攻撃に巻き込まれたが、命は保ち得ている。君を助けようと必死だったそうだ」

「虚子が……なるほど」

 虚子は正岡子規の弟子で、漱石が『吾輩は猫である』を執筆した時には編集として活躍してくれた仲だ。生みの苦しみを共に味わった、漱石の創作における相棒と言っていい。

『夏目先生、死んではいけません! 夏目漱石先生ィッ‼』

 彼が叫んでいた言葉を思い出した。

 血と火薬の臭いの中で、彼は懸命に漱石の生存を祈ってくれていた。

 あの恩義に報いることができる日はくるのだろうか。

「――以上が、君が再び目を覚ますまでの経過だ」

 長い語りに区切りをつけて、鷗外が大きく息を吐き出した。

「君は修善寺で死んだことになっている。君の命を狙う輩に君の生存が知られたら、また血が流れることだろう。だから君の生存は徹底的に秘匿する。君はこれから樋口さんの体で、新しい人生を送るんだ」

「俺に木曜会を捨てろと? 戦いを忘れろと?」

「木曜会は解体された」

 不意討ち気味に浴びせられた言葉に、息を呑む。

「修善寺の大患後、副司令官であったてらとらひこが君の後を継ぎ、二代目司令官として就任した。彼は政府と交渉を行い、木曜会の解体を条件に、作家たちへの不介入を政府に約束させた」

「あいつは……講和を選んだのか」

 呟いた漱石の口は、しばらくの思考により閉じられる。

 寺田寅彦は、漱石の弟子である。

 だが、実際のところは漱石が寺田に教えを乞う場面も多々あって、弟子というよりも兄弟分であった。

 漱石は彼を副司令官に据え、有事の際の全権を彼に任せていた。

 寺田が講和路線を決めたのなら、きっと深慮あってのことだろうと考えた。ならば尊重するべきだとも思った。

 実のところ、いくら意気盛んといえど、木曜会も無限に戦い続けられるわけではなかった。どこかで手打ちが必要だと、頭の隅では分かっていた。

 そこで寺田が動いたのだ。

 振り返ってみれば、政府は漱石を討ったことで面子を保ち、作家たちは政府の不介入という実を得た。

 きっと、これが戦いの丁度良い収まりどころだったのだろう。


「森先生、ひとつ聞いてもいいか」

 ここで漱石は鷗外を真っすぐ見つめる。

 鷗外も漱石を見つめ返した。

「いきなり改まったな。察するに、ご家族のことだろう?」

「ああ」

「君の奥方、そして二人の息子と五人の娘、みんな無事だ。ご家族については、かつて君の勤め先だった朝日新聞社が面倒を見るとのことだ」

「そうか」

 嘆息で漱石の胸が大きく動いた。胸のつかえが取れた気がする。

 正直、鷗外に対しては色々と言いたいこともある。

 けれども鷗外の働きに対する感謝と、家族の安全が確認できた安堵が、漱石のささくれ立った心を多少和らげてくれていた。

 家族の顔を思い出し、漱石は湿っぽい感情を含む声で呟く。

「万全の支えだな。あいつらに、もう俺は必要ないということか」

「少なくとも生活の支えは十分だ。今の君は、やるべきことに目を向けたまえ」

「世間に再びの荒波を立てないために、この体で目立たず生きていく……か」

 鷗外は英世に目配せをした。

 すると英世が懐から幾つかの書類を取り出す。

「新しいあんたの人生に必要な戸籍と身分登記だ。あんたは樋口一葉の体を使い、『樋口夏子』として生きていくことになる」

 漱石……改め、夏子は紙を受け取って、目線を紙面に滑らせる。

 ふと、ある記載のところで目が留まった。

「九月より、神田高等女学校の教師に就任?」

「そうだ。君は秋から女性教師として女学校に勤務することになる」

 教師は得意だろう、と鷗外から言われた。

 彼のなかでは気を利かせた提案だったらしい。

 もっとも、夏子がそう受け取るかは別の話である。

「今は七月十四日だから、教師としての着任まで二か月を切っている。まず君は、新しい体と名に慣れることだ」

 語りに終わりの気配があった。

 鷗外が椅子から立ち上がる。

「では、公務があるのでな。私はこれで」

 退出しようとする鷗外は、病室の扉の前でふと立ち止まる。

 振り返らないまま、彼は夏子に語り掛ける。

「君が生きていてくれてよかった。これは私の本心だ」

 そのまま彼は、夏子の返事を待たずに去っていった。

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