4 スタートは赤ん坊から



 私の人生をズタズタにしておいて自分だけ異世界で貴族になって優雅な生活を送るつもり?


 そんなの不公平すぎる。あまりにも身勝手で自己中心な男。こんなヤツに今まで尽くしていた自分に吐き気がする。


 ゆるせない……ううん、ゆるさない・・・・・、異世界の地だろうと追いかけて復讐を果たす。


 私は現金を持たないままシリアルコードを入力し、主人公の友人、シリカ・ランバートとして転生した。


 ✜


 まぶしい……。


 光が目に飛び込んできた。とてもボンヤリとしか見えない。モノクロのボカした映像を見ているみたいな視界で手足も思い通りに動かせない。


 赤ん坊からのスタート……おそらく今、私を産まれたばかり……ゲームでは学園スタートだったので少し驚いた。


 いけない。声を上げない私が心配になって誰か見分けがつかないけど私を見下ろしている。


「おぎゃーおぎゃー」

「よかった、元気な女の子です」


 言葉は異世界の言語でワケが分からなかったら、どうしようかと思っていたが大丈夫そう。


 そっか、元気な女の子なんだ。いいな……私のお腹の子もあんなことがなかったら無事生まれてきてくれたかな?


 でも、アイツアルトは認知してくれなくてシングルマザーになってたんだろうな。でも別にそれでも構わなかった。お腹の子が無事でさえいてくれてたら……。


 転生してこの異世界……とくにこの国は魔法の実力がすべて……私の転生したこの家、ランバート家は第7階位貴族ゴードフロント……平民とさして変わらないほど低い身分で父親が魔法省の役人をしている。隣国との紛争で国に貢献した祖父が3代まで有効な叙爵を受けた。治める土地などはなく、普通の家より少し家が立派な程度しかなかったはず。主人公を操作して、彼女の家に遊びに行ったことがあるので覚えている。


 前世の記憶がある私にとっては、赤ん坊はとても楽なもの。でも今の内にできることをしておかないと……。


 ゲームのプレイ中に主人公が魔法学校で学んでいた魔法基礎学の内容を思いだす。


 まず魔力を知覚することから始まる。


 この世界では自然のなかに存在するが普段は目に見えず、触れられず、臭いも、音も、味もしない。普通は触媒となる魔力の籠った石や水晶を使って魔力を知覚するところから始めるが赤ん坊の私には魔法石や水晶を用意できない。なので触媒無しでの方法も習っていたので、それを試す。


 目を瞑って意識を集中する。

 魔力は空気中にただようホコリのように普段は見えず陽光に当たって見えるのと同じようなもの。浮遊している微量の魔力を五感ではないもので感知しなければならない。


 電気を感じ取るサメの知覚能力やマダニの二酸化炭素を感知する能力、ミツバチなどが持つ磁覚は元いた世界でも存在は認知されていても科学で解明できていない感覚がある。それと同じように手探りで〝魔力〟を知覚できるよう日々努力した。


 生後6か月くらいでようやく魔力を知覚できた。一度知覚できると空中に浮かんでいる微量の魔力を意識を集中すると小さな粒が光っているのが見えるようになった。


 父と母は私が初めての子であるため、これほどまでに手がかからないのが普通なのか分かってないと思う。おねしょやお腹が空いている時以外は滅多に泣かないのは私が普通じゃないから……きっと2番目の子が生まれたら大変なんだろうな。


 それと私が手のかからないのをいいことに夜は隣の部屋で●●●アーン♡なことをしている。赤ん坊の私が行為を認識しているとは露ほども思ってないだろう(うふふふ)。


 主人公の友人、シリカ・ランバートの得意な魔法は遠隔操作と水魔法が得意だったのを覚えていた。誰もいないところで遠隔操作を練習する。詠唱が「視えざる手よ」と短いので赤ん坊でも唱えられた。



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