【月・水・金の週3投稿】天上の要請者~神に仕えし者には裏の顔があるようです~
桜月零歌
【プロローグ】過去と現在編
第1社
12月24日といえば、クリスマスイブ。私の通う中学校はそんなめでたい日でも授業があった。
世の中の学生たちは、冬休みに入ってクリスマスムードだろうに。どうしてうちの学校だけ授業があるのかな……。と言っても今日はテスト返却だから、まだマシな方か。
心の中でグチグチ言っている私は、前から4番の席で頬杖をつきながら、テストが返ってくるのを待っていた。
現在、季節は冬真っ只中。いくら北海道よりマシだからって、冬の京都・嵐山を舐めてはいけない。しかも、この教室のエアコンだけ何故か壊れているし、換気のために窓が全開なので、油断すると凍死しかねないのだ。
「おーい、
「あ、すいません」
手の中にあるホッカイロを弄っていたら、担任の先生に名前を呼ばれた。私は机に手をつきながら席を立ち、先生の元へ向かう。
今回のテスト、一夜漬けだったから正直自信ないんだけど……。取り敢えず、赤点だけは回避したい。
先生からテストの答案を受け取り、急いで席に戻る。
「さて、結果はどうかな」
恐る恐る半分に折られたテストの答案を開けていく。この学校の赤点ラインは30点。それを超えると、再テストか補修になる。創作の時間がなくなってしまうから、それだけは絶対に避けたい。
『テストの点数何点だった?』
「うおっ⁉ びっくりした……。って、あ……」
「どうした? 北桜。何か手違いでもあったんか?」
急に声が頭の中に響いたので、思わず声をあげてしまう。それを聞いた先生と周りの生徒は不思議そうな表情で私を見ていた。
ヤバい、やっちゃった.……。
「な、なんでもないです!」
「そうか。ならええんやけど」
慌てて先生に向かってそう言うと、テスト返却が終わったのか、先生の解説が始まった。
ふぅ~と息を吐くと、私の左隣でふわふわ浮いている声の主の方を睨みつけながら、心の中で話す。
『ちょっと、急に話しかけるのやめてくんない!?』
『ごめんごめん。いやぁ、秋葉のテストの点数が気になってさ。それで何点だったの?』
『えっとね……。67点』
『おぉ~。平均超えたね』
点数を教えると、ふわふわ浮いている物体は喜びの表情を見せる。
さて、そろそろ私の周りを飛んでいる物体のことを説明しなければならない。コイツの名前はエル。分かりやすく言うなら、白い狼の胴体に、黒い鴉のような翼が生えたマスコット。大きさは人の顔ぐらいで、人語を喋る。ここまで言えばエルが人外だということは分かるだろう。そう、コイツは――
『ちょっと、ボクが褒めてあげてるのにだんまりはないんじゃないかな?』
『うるさいな。今、授業中なの! 分かる!?』
『はいはい。黙りますよーっと』
エルはつまらなさそうな表情をしながら、解説中の先生の方へ飛んでいった。私はそれを目で追う。すると、エルは先生の頭をつんつんしたり、禿げ隠しのための前髪を引っ張り始めた。
ホント、何やってんの……。これ以上先生の髪の毛弄ったら、まだ30代なのにデコ部分が禿げちゃってる先生の頭が更に禿げちゃうでしょーが。
再び頬杖をつきながら、先生を哀れみの目で見つめる。周りの生徒は外から入ってきた風で、先生の前髪が上がっていると思っているのか、大笑いしていた。
「こら! 何、解説中に笑ってるんや!」
「いやだって、風で前髪が」
「お前ら、今年受験なんやからちゃんと聞いとけよ」
エルのやつ、いくら視えないからってあれはやっちゃダメでしょ。ほら、現に笑ってた生徒が怒られてるじゃん。可哀想に。
そう、エルはどうやら私以外の人間には視えないらしい。何故かは知らない。けど、私には視えるのだ。
思い返せば、昔からよく変なものを見ることが多かった。
例えば、廊下側の席に座っている男子生徒。あの子の背後に幽霊みたいに透けた人がいる。他にも、禿げの先生が立っている教壇に寝そべっている腕が6本生えたやつもその1つだ。
今のところ特に害もないので放っているけど、動き出したら流石にまずい。対処の仕方なんて知らないし、動き出したら逃げるしかない。まぁ、いざとなったらエルを盾にしてやるつもりではいる。
ぐだくだ考え事をしている間に、授業も3分の2を過ぎただろうと、時計を見るがまだ半分しか経っていない。
早く昼休みになれ。こっちは退屈すぎて死にそうなんだよ。もうこうなったら寝てやる。平均以上取ってるんだから、別にいいでしょ! てか、こっちは徹夜明けなんだから寝かせろ。
一度欠伸をかますと、机に顔を伏せて寝る体勢をとる。すると、エルがこちらにやってきた。いつも通り私の周りをふわふわ浮いている。
『あれ? 寝ちゃうの?』
『暇すぎるからね。せめて筆箱を出せれば、キャラ設定の1つや2つできるんだろうけど……』
『テスト返却中は赤ペンしか出しちゃダメだから、仕方ないよ。終わりがけに起こすね』
『ん。ありがと』
エルにお礼を言うと、目を閉じた。
そういや、エルと出会ったのっていつだっけ。確か私が中学1年の頃だったような気が……。
徹夜の疲れが出たのか、目を閉じた私は1分もしないうちに意識を飛ばすのだった。
――――――――
☆あとがき
というわけで始まりました、天上の
いいね・小説のフォロー・レビュー・応援コメントその他諸々待ってます!
また、Twitter(@sami63dare)の方に秋葉とエルのイメ画を載せていますので、よろしければそちらもご覧いただけると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます