第53話

「なあ、くろ。どうやって首謀者を見つけたらいいんだ?」

 義則よしのりが自分から引き受けたことだが、例の如く、まったく考えはなかった。

『ふんっ、俺に聞いてどうする? 間宮家に詳しい者に聞け』

 くろは呆れたように言った。

「間宮家に詳しいって言ったら、間宮が一番詳しいだろう? だけど、あいつもまだ見つけられないんだぜ?」

『それなら、人脈を頼れ』

「じんみゃく? って何だ?」

『お前には仲間がいる。そいつらに頼れ』

「おう! それな!」

 義則は俄然張り切って、帰路についた。


 家に帰ると早速、

「じいちゃん! いるか?」

 まず初めに、祖父の則隆のりたかに聞くことにした。

「なんだ? どうしたんだ?」

 騒々しく帰ってきた義則に祖父が聞く。

「今、間宮んちに行って来たんだけどさ」

 と話を切り出すと、

「お前、直接、鱗十郎りんじゅうろうに会いに行ったのか?」

 と聞き返された。

「ああ。そうだけど?」

「それで、会ってもらえたのか?」

「おう! まあな。それで、間宮と約束したんだ」

「また、お前、自分から面倒なことに首を突っ込んだんだろう?」

 と祖父が言う。

「まあ、聞いてくれって。間宮の黄龍を奪おうとした奴を探すと約束した。それで、じいちゃんに聞きたい事があるんだ。間宮の親戚って誰か知っているか? 黄龍を欲しがっている奴は、その中の誰かじゃないかって、思っているんだ。間宮も調べているようだが、まだ分からないんだってよ」

 義則の話を聞いて、祖父は深くため息をついた。

「そこに座れ、長い話しになる」

 そう言って、祖父は語り始めた。


 間宮家は遡れば、宇多天皇の第八皇子に繋がる。それは遠い過去だが、間宮家が魔獣操士の頂点に立ち、王として君臨しているのも、その流れがあるからであり、黄龍を従えている事も、王としての資質が備わっているからだ。間宮という苗字は分流であり、正当な流れは佐々木だ。だが、黄龍が間宮家に受け継がれたのは、佐々木家にはその資質を持つ者がいなかったからだ。そのため、間宮家と佐々木家には軋轢が生まれ、関係は最悪だった。


 そこで語りを終えて、

「鱗十郎も、佐々木家の者を疑っているはずだ。だが、探りを入れようにも証拠がない。鱗十郎が動けば争いが起こる。だから、証拠を掴めずにいるのだろう。その点、お前なら誰からも注目されていないから探りやすいだろう。だが、気を付けろ。白龍使いに差し向けられた刺客も、相当な手練れだった。また呪術を使う者が現れるだろう。一人では行くな。仲間を集めて備えろよ」

 義則に注意を促した。

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