1~2分で読める短編小説集

或虎

1分30小説『余計』

「普通盛りで」

「あのー、当店ボリュームがウリのお店でして、普通盛りだとかなり麺の量多いのですが」

「そう?じゃあ初めてだし小盛りにしとこうか」

「小盛りだとですねぇ。『こんなに美味しいのなら普通盛りにしとけばよかった』と殆どの方が後悔されます」

「……なるほどね。ちょっと考えていい?」

「はい、お決まりになりましたらお呼び下さい」


*********************


「ごめん、ちょっといいかな?」

「はい、お決まりになりましたか?」

「さっきの小盛りの情報だけどさ」

「はい?」

「あれ、要る?普通盛りが予想以上に多い、その告知は分かる。でも小盛り足りないかもって情報は要らないよ。お陰で決められなくなっちゃってる」

「え?!そんな……私はお客様のためにと思って――」

「ごめんなさいだけど、貴方のその"親切もどき"が逆に俺を"どちらを選んでも後悔しそうだ"って状況に追い込んでるわけ!キツい言い方になってたらごめんね。注文いい?」

「はい、麺の量はどうしましょう?」

「爆盛りで」

「え?」

「聞こえなかった?爆盛りで」

「でもお客様、当店の爆盛りは――」

「分かってるよ。めっちゃ多いんでしょ?でも一か八か後悔するかもって選択肢を選んで『やっぱり……』ってなるより、後悔すると分かりきっている選択肢を選んだ方が寧ろ精神的ダメージが少ない。だから爆盛りで」

「お客様、余計なことかもしれませんが――」

「何?」

「人生は一度きりです」

「な?!」

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