『もつれた色彩』

 ビー玉のもつれた色彩、涙腺から流れる。

 ゆらめいて落つ滞空時間に、涙がビー玉をフォーカスし、色彩を転写したのだそれは、私がもっとも大切にしていたビー玉、色彩だけでなく思い出が内包されている。それを失うのだ今から、友達との勝負に負けて。

 友達の掌に、ビー玉が消えた。どうせなら涙も一緒に奪えよ、私はまだ数年しか生きていないというのに、この先これ以上の悲しみはないだろうと感じた。

 友達の掌が開いた。笑顔も開いた。歪んだ視界、世界、私の掌を開かせ、友達がビー玉を置いた。

 私は掌を握り締め、笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る