二人の個性……?
「ただいま……って二人とも……どうしたんですか?」
家に戻った有希とマナはずんと沈んだ様子でテーブルに突っ伏していた。
外から帰ってきたイキシアの質問も聞こえていない程に放心状態で、二人の代わりにフェルミが答える。
「何とかホロウに技能とオマケに魔法の適正も教えて貰えたらしいんだけどその結果が……」
「マ、マナさんが魔法を一切使えなくて……そして有希さんが技能を持っていない…… そういうことで……」
だいたい落ち込んでいる理由がわかったイキシアは沈みこんだ二人を見ながら苦笑いを浮かべた。
「あれ……でもマナさんはともかく、有希さんの技能が無いってどういうこと? プレイヤーで技能を持っていない人なんて存在するの?」
「少なくとも私は今までそんな人聞いた事無いわね。 有希だけ特殊でなのか、それともホロウがあえて教えなかったのか。 ……あの性格ならやりかねないわね……」
「あはは…… とりあえず、二人とも元気だしてください! 別に技能や魔法がないと生きていけないわけじゃないですから!」
何とか励まそうとポジティブな言葉で呼びかける。
「そうね、実際私も魔法は使えないし、今まで会ったプレイヤーの中にはどこで使うのか分からない謎能力を持ってる人だっているわ。 だから元気だして」
「……でも」
小さな声でマナが呟いたと思った瞬間――
「でも私も魔法を使ってみたかったー! 魔法を使えたら絶対楽しかったのにー!」
「ははっ……私はそもそもプレイヤーなんでしょうか…… 実はプレイヤーだと思い込んでるだけで実際は違うのかも……」
マナは大声で泣き始め、有希は病んでるかの如く独り言を呟き始めた。
「ふ、二人とも落ち着いてください! うう……どうすれば……」
イキシアがなだめようとしても止まらない。
「いい加減にしなさい!!」
耐えかねたフェルミの怒号が途端に家全体に轟いた。
「二人とも、とりあえず落ち着いた?」
「「は、はい!」」
笑顔で語りかけるフェルミからはまだ怒りの圧をひしひしと感じることができる。
二人はとにかく姿勢を良くして黙って座っていた。
「泣いても叫んでも別に技能が増えたりしないし、魔法が使えるようになる訳じゃないのはさすがに分かるわよね?」
「はいっ! 分かります!」
「なら、ずっと落ち込んでないでしっかりしなさい!」
「はいっ! 分かりました!」
「よろしい! それで二人はホロウになんて言われたわけ?」
いつも通りのフェルミの表情に戻ると、有希とマナはひとまず胸を撫で下ろした。
「えっと、私は魔法適正は平均以上にはあるらしいです。 動くのも得意じゃないから魔法使いがおすすめだって言われました」
「服もそれっぽいしいいんじゃないって言われてたよね」
「でも技能は無いってきっぱり言われちゃって…… 『まるでネイティブだ』とか、『さすがイレギュラープレイヤーだ』とかって言われて……」
「なるほどね、ホロウには後で色々言っておくわ。 それでマナの方はどうだったの?」
「ふふふ……それじゃあ一度、私の技能を見せてしんぜよう!」
その後外に出た四人は、広めな場所に行くと、マナがニヤッと笑って必殺技名を言うように叫んだ。
「ニャハハっ! それじゃあ行くよ!『アクセルドライブ』!」
叫んだ瞬間、マナの体全体にピンク色の光が出現し、光をまとっているような見た目になった。
マナの周りには光の粒が浮かんでは消えるをくり返し、絶えず光が溢れていた。
マナが動き始めると、ギリギリ目で追えるか追えないかくらいの素早い速度で動き始めた。
動いている最中はその場に残像が残り、よりその速さが見てとれる。
移動の速さだけじゃなくて跳躍力も上がってほとんど浮いてるかのようだ。
しばらくすると纏っていた光は薄くなっていき、完全に無くなると動きも元に戻った。
「これが私の技能、『アクセルドライブ』。 10秒間体が発光してその間は数倍の速度で動くことのできるって技だよ!」
「なるほど、結構役に立つ技能なんじゃない?見たところ既に使いこなせてるみたいだしね」
「へへっ、でも一つ弱点があってね……」
そこまで言うとマナは急に倒れ込んだ。
「フルで使っちゃうと結構身体の負担がすごくて……しばらく動けなくなっちゃうんだよね……」
「それって結構致命的な弱点じゃない……?」
「まあでもかっこいいからよしっ! とりあえず有希ちゃん起こして〜!」
「とりあえず二人とも少し心残りはあるかもだけどしっかりといざと言う時でも何とかできそうで良かったじゃない。 それにあのホロウが無条件でそこまで教えてくれるなんてね」
「いやそれが実は……」
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