【絶望の檻】~昔イジメてた男が姉と結婚して同居することになった件~【当時メスガキ(8歳)だった私(現役JK)にパパ活してたドMロリコン野郎との熱き腹の探り合い】
八゜幡寺
1:人生の転機は唐突に。
懺悔します。
私、
もちろん今はそんなことしていない。過去の過ちを見つめなおし、足を洗い、身の丈に合った生活と、人並みの努力を心掛けて生きることを決めた。
無言実行。現にこれまで、おおよそ一般的な女の子としての振る舞いができていたと自負している。
現在、高校二年生。ピチピチのJK真っ盛り。青春盛り!
割と早い段階で金銭感覚や生活習慣を改善することができたおかげで、友達もできたし、毎月、お小遣いの範疇でやりくりできてる。
「天原さん、マックドに寄って帰らない?」
本日も授業も終えて、帰路に差し掛かる頃。背中から呼び掛けられた。
友達の、あけ美だ。こんな穢れた私に話しかけてくれる人がいるってだけでも嬉しく思う。
当然だけど、パパ活をしていたなんて話は墓まで持っていく。あけ美にはもちろん、家族にだって、誰にだって話さない。SNSで裏アカウントを作って呟くなんてことも、絶対にしない。
私の黒歴史。絶対に、誰にも打ち明けることはない。
いずれ、記憶から完全に忘れ去るその日がくることが、私の願い……。
「ごめん、あけ美ー! 今日、お姉ちゃんが帰ってきてるから、相手してあげなきゃ! またあそぼ!」
「そっかー。お姉ちゃんって、てー子によく似てる人だよね。ボブカットの可愛い系だけど、めちゃくちゃ落ち着いててカッコイイ人だよねー」
「自慢の姉でございますぅ。あははっ」
私に似てるって、そりゃそうだ。
パパ活卒業後、真人間になるべく参考にしたのがお姉ちゃんなんだから。
外観はもう完コピ。中身はでも大人すぎるから、身近な友達を参考にして、カンペキなJKへと自分を作り替えた。
……残念ながら、おっぱいの大きさは、どうしても埋められなかったのだけれど。
Bカップ……。
「東京に住んでるんだっけ? 都会っていいなー。私、やっぱ進路は東京の大学にしよっかなー」
「それなー。あ、もう行くね。じゃーねー!」
「うん、ばいばい!」
都会。うん、私も憧れる。東京にはなんでもあって、どこにも行ける。
それに……田舎の学生には考えもつかない、運命的な出会いだってある。
お姉ちゃんのように。
お姉ちゃんは今日、婚約の報告をしに我が家に返ってくる。なんともおめでたい日だ。
私は二人が付き合い始めた頃から、お姉ちゃんとはメッセージアプリでやり取りして、茶化したり応援したりしてたから、二人のなれそめは分かっている。これまで話を聞いていても、相手はとても誠実な方らしいというのもわかる。
二人が出会った経緯は、駅でお姉ちゃんが眼鏡を落としてしまい、そこに結婚相手の方が拾ってあげようとしたものの、誤って踏んづけて壊してしまったのだという。
普通なら怒るところだが、それがなぜかお姉ちゃんの笑いのツボにハマって、眼鏡を弁償してもらった後も一緒にお出かけとかするようになって、付き合って……。
『大事な話があるから、今日、家に帰るね。彼も一緒に来ます』
今朝、お姉ちゃんからこんなメッセージが届いた。
年頃(結婚適齢期)の娘が、彼氏を連れて実家にやってくる。
皆まで言われなくとも察しが付く。これはもう……『娘さんを僕に下さい!』案件だ!
そんな場面、絶対に見逃せない!
うちの両親は互いにほのぼの系で、「娘はやらん!」なんてことは絶対にないのだけど、互いの緊張した初々しいやりとりとかヤジウマしたい。茶化したい。JKという年頃にだけ許されたハイテンションで茶化したい。
雲一つない快晴の下。歩き慣れた道を早足で進む。
何気ない日常に舞い降りた、姉の結婚報告という非日常を存分に楽しむ!
だってそれが、普通の人の、平凡な幸せなんだから。
「たっだいまー」
家に着くと、知らん顔でまずはあいさつ。玄関にはすでにお姉ちゃんと、彼氏のものと思われる二足が並んであった。遅かったかな? いや、私の下校時刻に合わせて来るって言ってたから、たぶん二人も、今しがた到着したに違いない。
私だって早足で来たから、たぶん、僅差なんじゃないかな。
「あ、てー子? おかえりー。ちょっとこっち来てー」
リビングから聞こえてきたのは、お姉ちゃんの声だ。
うー、緊張する。
一年前から知っていることだけど、お姉ちゃんの彼氏の顔は一度も見たことがない。写真、苦手なんだって。だから今回が初顔合わせなのは、私も、お父さんお母さんと一緒なのだ。
どんな人なんだろう。
ごくりと喉を鳴らしてから、いざ、リビングに向かうと……。
「あれ、お姉ちゃん。彼氏さんは?」
「おかえり、てー子。トイレだって」
「来て早々!?」
聞いてた話よりもずうずうしい人くない!?
と驚いていると、ソファに座るお父さんが、細い目をさらに細くして、申し訳なさそうにうなだれていた。
「ごめんよぉ。緊張しちゃって、お茶薦めまくっちゃって……」
「ええ……」
台所のお母さんも苦笑いだった。
もー。私の緊張を返してほしい。リビングに入る直前のベスト緊張コンディションが、すっかり抜けてしまった。
そしてそんなタイミングで、トイレのドアが開閉する音を聞く。足音がこちらに向かう。
態勢を立て直す間もなく、その男は、ぬぼーっと現れたのだった。
「どうもすみません……お手洗いをお借りして……」
顔を見た瞬間、急いで挨拶をしようとお辞儀した私は……。
「――へ?」
言葉が出てこず、代わりに、素っ頓狂な声を上げるのだった。
言葉と同時に、お姉ちゃんの彼氏さんを二度見する。
紺色のスーツにセンター分けに整髪された頭は、とても勤勉なサラリーマンといった風体だった。
少しひょろりとした体格にスーツがよく似合う。
お姉ちゃんからは、ときおり、「ナヨナヨしていてそこがカワイイ」なんてのろけ話を聞いていたが、そんな要素は、この見てくれからは感じられない。
だけど――似てる。
あまりにも、似すぎている。
――私がパパ活していたお兄さんに――!?
思わずじっと、顔を覗き込んでいた。動悸が逸る。顔が熱いのに、鳥肌が立つほど、心が寒い。
私の黒歴史……パパ活時代の負の遺産……!
それを知ってる人物が、まさか、目の前に――!?
「てー子? どうしたの? 大丈夫?」
お姉ちゃんの心配の声に、はっと我に返った。
そうだ、落ち着け。そんなはずない。
たまたま似ているだけ。だってパパ活していた頃のお兄さんは、てんでダメ人間だった。
親が金持ちというだけで、ろくに働きもせず、私と一緒に居ることだけが生き甲斐のどうしようもないクズニートのロリコンだった。
だから私はお兄さんを心の底から舐めまくっていた。
さんざんこき使って、気に食わなければ蹴って叩いてボロクソになじって。
まあそのお兄さん、ドMだからむしろ喜んでたんだけど……。
だから、こんな品行方正を絵にかいたような男の人とは、似ても似つかない。
全くの別人だ。
……そうに決まってる。それに、そんな奴が、こともあろうにお姉ちゃんの彼氏で、今しがた婚約者にもなるような人物なわけがない。一瞬でもそう思ってしまった自分を呪いたいくらいだ。
頭の中で、必死に言い訳をして、心を落ち着かせる。
そうだよ。そもそもあおのお兄さん、ロリコンじゃん!
お姉ちゃんは今年で25歳になる立派な社会人!
二人が交わる事なんて絶対にないじゃん!
その結論に至ったところで、ようやく、私の中でパパ活ロリコンクソニートと目の前の男性が完全に分離した。あーよかった!
「うそだろ。まさかとは思ったけど……本当に、てー子ちゃん!?」
唐突に、お姉ちゃんの彼氏さんは、目を真ん丸とこじ開けて、そう漏らした。
分離したはずの二つの人格が、いま、光の速さで、一体化した――!
「あー! やっぱり! ながのりお兄さん!? えっ! なんで!? どうしてうちに!?」
やっぱりそうだ! 絶対にそうだ!
この人、私とパパ活してたお兄さんだ!!!
私が人生で一番調子に乗ってた時代――! メスガキ(8歳)時代を共に過ごした人生の汚点そのものだーっ!!!
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