第24話 病気


「ゲホッ。」


 喉が痛い。

 夏祭りが終わってからすごい体調が悪い。


 夏祭りの最後に告白されて…。

 いや私からしたようなもんだけど…。


 結果付き合うことになって、最初はそれで浮かれすぎていたのかと思ったけれど流石に長すぎる。

 ここまで病気って長引くのだろうか。


 親から病院に行けって言われたけれど病院は嫌い。

 勝手な印象だけどヤブ医者ばっかな気がするんだもん。


 勝手な印象だけどね。


 で、どうしよう。

 流石に今回は長すぎるし、喉は大事にしないとだからね。


 そう思って私は病院に向かった。


 久しぶりだなぁ病院。

 こんなに綺麗だっけ…。


 受付を済ませて呼ばれるのを待つ。


 そういえば慶太くんのお父さんってお祭りの実行委員だったんだなあ。

 いい機会をもらえてよかったな。


 友達から聞いたけどかなりSNSに私たちの動画が出回っているらしい。

 ちなみに私のSNSのフォロワーもうなぎ登りだ。

 元々130人だったのがもう3万人になった。

 こうやって一歩ずつ世界に向かって歩いていかないと。


 いつかドームでライブをやるって…。

 これで一歩ドームに近づいたな。


 それにしてもみんな私のSNS探すの早いわね。

 驚いちゃう。


 次の路上ライブはかなりの人が期待できそう…。

 みんなからの歓声を浴びながら…。


「ぐへへへへ…。」


 やばい。変な声が漏れた。

 みんなからちやほやされる様子を想像してたら気持ち悪い声を出しちゃった。


 でも幸い私のことをあまり気にかけてない人ばかりだ。

 嬉しい半面声かけてくれる人がいるかななんて思っていた自分が馬鹿らしい。

 ちょっと地域のお祭りで歌ったぐらいじゃ駄目か…。


「永見さーん。」


 あ。呼ばれた。

 とっとと薬もらって帰ろっと。

 気まずいから。


「どうされました?」

「少し喉が痛くて…。あと時々熱が出るんです。」

「いつ頃からですか?」

「夏祭りのあとぐらいですかね…?」

「あ。あそこで歌ってた子?」

「そうです!」


 嬉しい!声かけてくれた!

 これで私も有名人っていうにはまだ早いか…。


「まあ。風邪だと思います。ちょっと気になるところはあったので大きい病院の紹介状だけ書いておきますね。」

「え…?紹介状。」

「はい。でも大丈夫だと思いますよ…。」

「わかりました…。」


 医者には大丈夫って言われたけど、紹介状って。

 やっぱヤブ医者ばっかじゃん。


 ちょっと強がったけれど心の中は少しモヤモヤしている。

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