カルメラの迷宮

いもさと

プロローグ

0.鋼鉄の死神

その石板タブレットには、十二個の正方形のパネルが埋め込まれていて、それぞれに記号がついている。


「貴重なアイテムを簡単に取られるわけにはいきません」


ルシルは勢いよく左上のパネルを手でたたいた。石板に魔力が注入され、パネルが輝きはじめる。


「鋼鉄の死神、始動!」


全身甲冑の大鎧は、命を吹き込まれたように軽快に動き始めた。


巨大な斧をブンブン振り回し、三人の冒険者を宝箱に寄せつけない。


「労せずしてアイテムが手に入ると思ったら大間違いです!」


パネルのひとつひとつが命令コマンドになっていて、それらの組み合わせで次々と攻撃アクションが繰り出される仕組みだ。


けれども、なかなか命中しないのだった。空振りばかりだ。三人の動きの素早さは、鋼鉄の死神を上回っている。


「くっ! ちょこまかと! こうなったら……必殺! 無限稲妻斬りエターナルサンダースラッシュ!!」


鋼鉄の死神がシッチャカメッチャカにやっぱり斧を振り回した。


しかし、それでもあたらない。


三人組は反撃してきた。鋼鉄の死神は足もとをねらわれて、派手に転倒した。


「ひ、ひきょうです!」


べつにひきょうではないような──祐太ゆうたは思った。


この三人が強すぎるのだ。きっと手練れの冒険者にちがいない。ルシルの大鎧が一方的にほんろうされている。


「やむを得ません……」


ルシルはもうひとつ石板を用意していた。


「ガーディアン二号、血染めの聖騎士を投入します! ユータ、お願いします」


「えっ?」


メモ用紙もわたされた。


「これは?」


「必殺技コマンドです。説明している時間はありません。実戦で覚えてくださいっ」


こうして、鋼鉄の死神と似たような感じの血染めの聖騎士が出現した。


新手のガーディアンが出現したことで、三人組は動揺した。そこにわずかな隙すきが生まれた。


「いまです! ユータ! 合体技、双竜剛戦斧ダブルドラゴンストロングバトルアクスをたたきこむのです!」


「なんて!?」


奇跡が起こった。イチかバチか、祐太がメモを見ながら入力したコマンドは、完璧なタイミングで味方同士の合体技を発動させた。


「これで決まりです! はさみうちです!」


だが、完璧すぎるタイミングゆえに、それはかえって動きを読まれる結果となった。


三人組は完璧なタイミングで合体技を回避した。


二体の大鎧が振り下ろした斧は、完璧なタイミングで向かい合う味方の甲冑を互いに粉砕した。


「あああーっ!?」


「あ、相打ち……?」


見事、二体の大鎧は完璧に大破した。


「ふにゃー……。ま、負けました……」


ルシルはソファに突っ伏した。

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