市姫とジムに行く約束
今日はジムの日。
つまり夕方までは勉強。
ということで学校で市姫さんと勉強だ。
とはいっても分からないとこを聞いたり雑談したりということは殆どない。
市姫さんは普段どうり勉強をして、俺がそのやり方を真似るだけ。
これを半月やっただけで成績が上がっている実感が持てることが凄い。
マジでリスペクトだ。
1時間勉強したら15分の休憩。
これも市姫さんスタイル。
集中力の持続時間の話とか学校でも教えてほしかったくらいだ。
『勉強学』って授業が欲しい。
そう思うくらい明確に効率のいいやり方を市姫さんは取り入れている。
というわけで休憩。
家から持ってきた水筒でアイスコーヒー(カフェインが良いらしい)を飲みながらぼーっとしていると、珍しく市姫さんが話しかけていた。
「そういえば試合勝ったらしいわね。
おめでとう」
「ありがとう。
でもなんで知ってるの?」
「インスタフォローし合ってるじゃない」
「あ、そうだね。
見てくれてるんだ」
そういえばそうだった。
忘れてた。
「普通に見るわよ。
いいねだってしたはずだけれど」
ああ、結構ジムの人がいいねしてくれるから見落としてた。
これは気づかなかった俺が悪いな。
「ごめん、気づかなかった。
ありがとね」
「まあいいけれど。
フォロワーに女の人多いわね。
交友関係が広くてびっくりしたわ」
「あー、それはジムの女の人だね」
梨衣花ちゃんと姉川さん以外はジムメンだ。
女友達は存在しない。
悲しい現実。
「へえ、女の人も格闘技やるのね。
写真に映ってる女の人は誰かの家族なのだと思っていたわ」
「結構多いよ。
ダイエットとかストレス解消にキックボクシングが良いらしいし」
「でも武田くんの動画みたいに殴り合うのでしょう?
怖くないの?」
「あれはやりたい人しかやらないから。
女の人はミット打ちっていってマトを殴ったり蹴ったりする練習が終わったら大体帰っちゃうよ」
「へえ、そうなのね」
スパーの参加は自由なのだ。
人それぞれ目的が違うしね。
「私もやってみようかしら」
「え!?」
急にどうした?
あまりに予想外なので叫んでしまった。
「なによ、そんなに驚くことないじゃない」
「いや、そういうの嫌いかと。
元々俺のことも怖がってたみたいだし」
「警戒していた、ね。
別に怖いとまでは思ってなかったわ」
確かに。
そんなタマじゃないか。
「武田くんのおかげで陰湿ストーカー問題はほぼ解決したけれど、それはそれとして日々ストレスは溜まっているし、体型だって気になるもの」
「ふーん。
まあでも運動するのは良いことだよね」
体型については何も言わない。
言っていいことは何もないからだ。
ただ、運動は体と心の健康に良い。
それだけは確かだ。
「あら、てっきり十分細いだろとか言うかと思ったわ」
「なりたい自分像ってのは人それぞれだし」
「ふふ、危機管理能力が高いわね。
とてもいいことだわ」
案の定罠だった。
姉川さんとは違う意味で口が悪い。
いや、性根か?
「なにか思った?」
「黙秘します」
なんだその追求。
そりゃ思うだろ。
怖いよ。
「武田くんの通ってるジムってどこら辺にあるの?」
「1番近い駅から電車で10分だね」
「へえ、駅の近くなの?」
「歩いてすぐだよ。
設備も結構綺麗でエンジョイ系だし。
平日の昼に女性専用クラスがあるから体験で行ってみたら?」
一緒には行きたくないな。
という感情が顔に出ないように気を付ける。
しかし、
「あら冷たいじゃない。
せっかくだから一緒にいきましょうよ。
彼氏彼女なのだから」
「……そっすね」
駄目でした。
人の目があるところでは偽装だのどうだの発言することは禁止されている。
そしてここは学校。
否定できないタイミングの提案なのだ。
別にいいんだけど、なんか嵌められたような気分だ。
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