デスティニーランド失踪事件
あめはしつつじ
りく
むかしむかし、永田さんと、美作さんと、椎名さんと、井手君と、飯田君がいました。
永田さんと、美作さんと、椎名さんと、井手君と、飯田君は、小学校の修学旅行で、デスティニーランドにやってきました。
手の甲に、ペタン。と、スタンプを押されたら。そこは、夢の国。
永田さんと、美作さんと、
「ねえねえ、お城の前で、みんなで写真撮ろうよ」
「白樺姫から、花冠をもらえるんだよ」
井手君は、
「これ、造花だな。まあ、大量生産できるし、土産で持って帰っても、枯れないってこと考えたら、生花なわけないか」
椎名さんは、
「見て見て、小人たちもいる、私たちとあんまり、背変らないね」
飯田君は、
「シーダーにトゥーマッチ、サイプレスにファイアーウッドだね、知ってる」
井手君は、
「連れ去った子供を中に入れて労働させているんだよ」
永田さんと、美作さんと、椎名さんと、井手君と、飯田君は、カリブのハニーハントに乗りました。
「ヨーホー、ヨーホー」とBコロニーの蜂蜜を奪いにくる海賊たち。
五人は迎撃型ハニーポットを発進させ、応戦します。
「みーちゃん、熱殺蜂球を発射して」
永田さんが言うと、美作さん、
「駄目、キャノン冷却中です。砲身が溶けてしまいます」
「コロニーがやられるよりはマシです。撃てー」
椎名さんが叫ぶと、轟音と衝撃。乗っているハニーポットが少し浮かび上がり、熱い空気が顔に吹きかかります。
「そこから、後で、ハチミツの匂いが出るよ」
と飯田君。
Bコロニーに帰還してきたハニーポット。
戦う者たちを知らない、お祝いのティーパーティー。
「なんでもない日、おめでとう」
ティーカップやソーサーがカチャカチャと音を立て。
ハチミツがたっぷりかけられたクラッカーの匂いが広がります。
宴は続き、夜になります。
永田さんと、美作さんが、
「プロジェクションマッピングだ、すごーい」
「綺麗ー」
井手君は、
「違げーよ、手の甲、見てみろよ、紋章みたいなの浮かんでんだろ。あれは、ブラックライトで光るインクを使ってるんだよ。似たようなやつ持ってんだろ」
アトラクションを降りたところに、お土産売り場がありました。
椎名さんが、
「ねえ、すごいよ、小学生、年間パスポート無料だって。今日から一年って、中学まで使えるじゃん」
飯田君は、
「知ってる」
永田さんは、
「えー、すごー。また、みんなで来よーよー」
永田さんと、美作さんと、椎名さんが、申し込み用紙に名前や住所を書いていると。
井手君は、
「そうすれば、大人とか、他の兄弟とか、連れてくるからな、上手い経営戦略だよ」
それは喧嘩ではありません。喧嘩は両成敗ですが、一方的な成敗でした。
井手君は、永田さんと、美作さんと、椎名さんに、しばかれました。
「じゃあ、みんなでまわるから」
永田さんは、美作さんと、椎名さんと、三人だけでまわるという選択をしました。
口をつぼみ、話題に花、咲かせようとしないことは、アトラクションの待ち時間でやってはいけないことですが。
夢の国のムードを壊すような、余計な一言を言ってしまうのは、テーマパークでもっと、やってはいけないことです。
「痛でー」
「そうだね、君は井手君だね、知ってる」
「何で俺だけ、こんなボコボコにされるんだよ、飯田」
「知らない」
「クソッ、腹立ったら、腹空いてきた。飯田、飯だ」
「何食べるの?」
「ハンバーガーだ、ばーか」
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