an encounter with scarlet③

「ただのって……」

「まぁまぁ、細かいことは気にしないの!」


 そう言われても、無理があるような……。

 しかし彼女の明るくニコッとした表情の前では何も言えなかった。

 そんな違和感のある発言をする彼女であったが壇上の方は目が向くとその明るさは影を潜める。


「ちょっと、そこで待っててね」

「何をする気だ……?」

「もちろん、し・ご・と」


 そう告げると彼女の足は真っ直ぐとマークの下へ走っていく――


「クククッ、来まスか」


 はやての如く駆けるその足は彼女をあっという間に壇上の前まで運び、空中へと向かって飛び上がらせる。

 すると指鉄砲のような形を手で作るとその先をマークに向けて口を開く――


 『我が内なる魔の流脈よ……輪廻のことわりより道を示す。我が言霊の魔力を得て形を成して、雷光の矢となって轟け』


〈ソーン・ソ・ウェイル!!〉


 するとバチバチと音を立てて、指先にまとった光が激しくほとばしってマークにその牙を向ける。

 その光は周囲に赤い稲妻を撒き散らしながら矢の如く飛び――彼の半身に大きな穴を空ける。

 その表情は驚いた様子でいた。

 しかし……


「!? クククッ……」


 少しして彼は不敵に笑う……。

 すると傷口が何やら沸騰するように怪しく蠢いた……。


「いい一撃だ、まともに喰らえバ、灰すら残らなかっただロウ……」


 そう言った矢先、傷はすごい速度でふさがっていく。


「だがを殺スまでニは、至ラない!」


 そう言うと自身の片腕を触手のようなものに変異させ、それを伸ばして床に強く突き刺す……。


「何だ!?」

 

 ――ダァァァァァァ!!! 

 すると床から大きな地鳴りとともに破壊音がする。

 その音はどんどんと彼女の方は近づいていき、次の瞬間、触手が飛びだしていくる。

 その魔手は獲物を狙うようにして猛スピード彼女に迫り、その牙を向ける――


 『我が内なる魔の流脈よ……輪廻の理より道を示す。我が言霊の魔力を得て形を成し、慈愛の楯へと昇華し、鉄壁の要とならん』


 〈――エオルフ・ソ・ウェイル〉


 すると彼女の足元から数メートル離れた先に透明な足場が展開する。

 そして足場に着地するとグッと踏み込み、蹴りだす。すると彼女の体は後転しながら宙を舞う。その動きはアクロバティックでありながら華麗でしなやかであった。


「ヤハリ、一発ではダメですカ……」

「ねぇ~隠すならもっとちゃんとしてよ……」

「それをしてもアナタは気づくでショ?」

「まぁね~、あたし、けっこうは結構利くんだぁ!」


 ドヤッと自信満々な表情で答える彼女であったがその直後、何か気づいたように鋭い目線をマークに向ける。


「それでさぁ、さっきから思ってたんだけどさぁ……あんた”人間”じゃないでしょ?」


 え……

 彼女の口から放たれた一言にアーロは目を丸くする。


「ど、どういうことだよ……?」

「言葉の通りよ! あいつは人間じゃない、を被った化け物なんだ!」


 なん……だよ、それ……。

 さらに出た衝撃的な発言に対し、思考が追いつかない。

 確かに腕を変質したことに対してはそういう節があったかもしれない。だけど魔装具の可能性だって捨てきれない。

 けれどそんな思惑とは裏腹にマークはにやけづく……。

 

「クククッ、バレていマしたカ……。シかシ、”二度”もあなた二邪魔をさレルとは思いませンでしタ」


 何を言って…… 


「オカゲでテしまいましたヨ……」


 その時、アズマとのやりとりが脳裏によぎりだす……

 『おまえ、あれ知っているか?』 

 『あれ?』 

 『例の神隠し』 

 『何せだったらしいからな』

 ま、まさか……彼が神隠しの犯人なのか!?

 

「どうして、人を……」

「ナゼって、クククッ! 君ハオカしなコとを聞きますネぇ――」


 この瞬間、マークの顔は狂喜のはらんだ表情へと変わり、周囲にどす黒いオーラが漂い始める……。


「君ハ知っテイるダろ? 、生物の死、血肉を獲ルことコソ我が本能なのだヨ。故ニ目的なんてモノはありはシナイ!」

「やっぱり……」


 ――2年前、ヴィオラート大陸のとある遺跡で1つのが発見された……。外観は損傷が激しく、血まみれの状態だったけど奇跡的に中身の映像は無事でなんとか再生することができた……。

 だけどその内容はひどいものだった……。

 ノイズとともに薄暗い画面の中で聞こえる数々の悲鳴と逃げ回る足音……。

 その生々しく肉を裂く鋭い音が響きは、流れる血の多さを物語る……。

 そんな惨たらしい状況の中、一人狂喜の声が上がってくる。

 その声はだんだんと近づき、映った瞬間――プツン、映像は途切れていった……。

 姿が映ったのはほんの数秒ほどだった。だけど、はっきりしたことがあったんだ……。

 

「二年前のあの事故、あんたが起こしたのね」

「クッ、ククク! ちょうどいいタイミングで獲物が来まシテねェ。この姿はその時、捕食シタ人間の姿モノでしてネェ」

「事故だと!? じゃあ……」

「エエ……、本物ノ彼はこの肉体ト共にいタダきましたヨ……」

「だったら、今日の発表やつは……!?」

「モチロン、私の食事を得ルためノですヨ」


 なんてことだ……神隠しに続いて、二年前の調査までもが……。


「……」

「と言ってもソレもそこのお嬢さんニ嗅ぎつけラれまシタがネ……。せっかく魔装具ヲ使って結界を張ったトイウノに……」


 悪い夢だったら覚めてほしい……。そんな願いをアーロは心の中で思ってしまう。

 しかし、偽りの体現者が目の前にいる以上、それはできそうになかった……。


「それはソウト、アナタは一つ見落シているコとがありマス」

「見落とし? 何のこと……?」

「アナタは私が人間ではナイと見抜きましタ……」


 ――それはアナタにはがアルからだと考えられまス……。

 おそらくソノ体質は目二は見えない何か、つまり何らかの波動や流れといった類を肌で感じ取ル感覚なのでしょウ……。

 それ故に私のコとを識別でキタ……。

 

「シかシ……その源までハ感じていないはずデス……」

「どういうこと……?」

「なぜ、私ガ魔獣を生成できタノか……。ナゼ、魔装具をココに仕掛けタノか……クククッ……」


 不敵な笑むマーク……そんな彼をヴェルメリアは怪しげに思い、警戒する。

 ――ブスッ!!

 しかし突然、アーロの背後で鋭い音がする。

 『え!?』と困惑した様子で恐る恐る後ろを見る……。


「なッ……!?」


 するとマークの触手と同じものが自分の背中腰に刺さっており、目を大きく見開く。


「……かはッ!!」


 口元から血が流れ、そのまま膝から崩れると体は床に横たわった……。


「おにぃさんッ!」

「サァ、狩りショーノ再会だァ!」

「コノぉっ!!」


 怒りに駆られた彼女の腕が颯爽と伸びる。しかし何かに気づいたのか、体勢を変え、急いで飛び上がる……。

 するとそこから大きな破壊音とともにおびただしい量の触手が這い出てくるとその鋭利な先端を光らせ、彼女に迫っていく。


「ッ! エオルフ・ソ――!」


 しかし、突如走った痛みにヴェルメリアの顔が歪む。

 まさかと思い、後ろを振り向く。すると案の定、さっきのものと同様のものが彼女の腰に直撃し、頭上から落下していく――


「ッ! エ、エオルフ・ソ・ウェイル!」


 そんな最中、なんとか足場を出現させ、その上へ着地する。

 しかしつま先が触れた瞬間、ピキッ! と音とともにその表面にヒビが入る……。割れ目は一気に広がると粉々に砕け散り、彼女の体は体勢を崩して落下しする――

 ドゴーンツ!!!

 そんな大きな衝撃音が会場全体に響き渡り、破片が飛び散っていく。


「ククッ……分かリマしタか……?」


 不穏な空気に包まれ、ニヤけづくマーク。

 そんな中……しばらくして残骸の中からヴェルメリアが起き上がる……。頭から血を流し、緊迫した表情で彼を見つめ、彼女の口は静かに開く……。

 

「……”瘴気”」

「ゴ名答……」

「……」

「つイでに言うとコの結界モ瘴気が含まれていマス。そシて、これは私ト

 

 この時、彼女の周囲には幾つもの触手が包囲を囲み、狙いを定める。


「つまり……コの檻全体フィールドガ私の手足トイウこトですヨ!!」


 その言葉を合図に、それらが一斉に襲い掛かる――


「ホウ……」

  

 しかし届いてはいなかった。

 彼女を覆ったエネルギー、それが防壁となって攻撃を防でいた……。


「魔力ですカ……。ソノ量、余程多イと見えマス」

「なんでおにぃさんを狙ったの……?」

「言ったでしょ、ここハ狩場、餌ヲ狙うのが当然といウモノでしょ? マシテヤ狩りそこナッタものナラなおさら……」

「アタシが聞いているのはそこじゃないッ!!」

「クククククッ! 簡単ナ事デス。アナタはメインディッシュ、彼含めここの記者たちは”前菜”、タダそれだけデスヨっ!」

「やっぱ……あんたらは……」


 この瞬間、ヴェルメリアを覆うものがムッと色濃くなる……。

 それは赤色というにはあまりにも濃すぎた……深紅の紅蓮のように熱く……周囲を染め上げるような濃淡な色合いをしていた。

 その強い力は風が吹くように彼女の髪をなびかせると同時にスッと居合のような構えを取らせる。


「なら――」


 すると構えに応じるように体を覆ったエネルギーが右手に集中して流れ込んでいく……。周囲の空気はピリッとした雰囲気に包まれ、ジリリ……と小さな音が走る。

 そんな中、右手のエネルギーがだんだんと収縮し始め、何かを形作っていく。そして、グッとそれを握りしめると一気に引き抜く。


「アタシがここであんたをッ!!!」


 その力強い声とともに、その手には深紅の刃が握られていた――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る