31 三宮

19:20にさんきた広場に着いた。若者がたむろする光景は、もう慣れた。

新築の神戸三宮阪急ビルと、巨大モニターの光が眩しい。

「10分ほど遅れます」

DIGNOを開くと、弓子からメールがあった。

しみずはそれを確認して、ビブスを着用し、トングを取った。

「今日は何で見かけたんですか?」

し「なにかボランティアのサイトで……」

何恥ずかしがっとおんや、私。

今日は6月20日。第三金曜日。普段なら弓子と食事の予定だ。

その均衡を破ったのは、私だった。

「今日は何か、特別なことしてみません?」

ゴミ拾いを選んだ理由は単純で、活動として分かりやすいからだ。

「神戸」「地域活動」で検索しても、無数のサイトが表示される。「子供の学習支援」「立ち上げインターン」初心者はこういった本気感の伴うものは興味ない。

始めるならゴミ拾いからでも良いではないか。


さんきた広場を出た我々は、生田新道を西へ。見よう見まねでたばこの吸い殻をトングでつかみ、ポリ袋へ投下する。暗いと余計分かりにくい。

昔親に連れられた東急ハンズのビルは、解体された。生田神社で活動の安全を祈願し、そこから生田ロードを南進し、阪急の高架沿いに歩いて広場へ戻る。

この辺りは客引きの多さが目立つ。やはり三宮は、嫌いだ。どうもこの雰囲気は合わない。


10分ほど休憩になる。コンビニエンスストアで購入してもらった緑茶を開ける。

私は決まって飲み物は緑茶と決めている。なぜだろう。糖分を摂取することを避けている。

弓「こんな活動あったのは知らへんかったわ」

弓子はたいてい、ロイヤルミルクティーだ。

ごみの大半は吸い殻とペットボトルだ。たいてい車道と歩道の境目くらいに落ちている。

駅の北と南を結ぶ道路は、もうすぐ通行止めになると言われている。


後半は、JRの高架を東へ進む。高架下の駐輪場を通り抜け、神姫バスターミナルの前を通る。ここは、高架下が車庫になっており、バス車体は巨体を揺らしてバック進入で駐車する。子供のころから、この光景を見るのが好きだった。

新バスターミナルが整備されると、この光景も過去のものになるのだろう。


ミント神戸の横を通り、東急ホテルの前で解散となった。その隣には、かつて中央区役所と三宮図書館、そしてサンパルがあった。

スタンプカードをもらった。何回か通うとグッズがもらえるらしい。次行くかわからへんけど。


長い間、私にとってサンパルは三宮で唯一入れる商業施設だった。あの独特の天井の照明と、赤いエレベーター。端の1基が常に停止中だった気がする。

1階に2割引きの文具屋があって、そこで初めて自分の小遣いで物を買うことを覚えた。


弓「変わったね」

終わった後、阪急高架下の「五国ワールド」で食事した。益次郎が教えてくれた。

弓「なんか今日、結構笑ってた」

そう言われて、はじめて、私はこの一カ月でほとんど笑っていないことに気づいた。いやもっと長い?

「弓子さんは、今はどんなことをやってみようと?」

今日はこれを聞きに来た。

今日は「弓子さん」という。以前は「北神さん」と呼んでいたのに。

「んーとね……いろいろやね」

参加したいプロジェクト。手伝いたいイベント。

私は弓子について何も知らなかった。いつも支えられる側だったからだろうか。

「7月にこんなんあるんやね」

弓子はスマートフォンの画面を見せた。拡大機能は、私のガラケーにはない。

「友子からメールで。ボランティアが不足してるみたい」

また一つ、「機会」ができた。

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