第4話 佐藤 芽衣
私は、佐藤 芽衣。結婚する相手は一流会社の社員がいいって思い、丸菱商事に入った。そう、結婚目当ての入社とか言われると思うけど、図星。それで、丸菱商事で三島さんのアシスタントをしている。なんでもバリバリこなす三島さんには憧れている。すごいわ。
入社する前は、ごく平凡な大学生だった。テニスサークルの先輩と付き合って、先輩の部屋にも時々行ったり、一緒に旅行したりして、楽しい日々を過ごした。
でも、なんとなくマンネリ化してきたときに、私に好意を持っている人を見つけた。そして、その人が確実に付き合えると思える段階で、今、付き合っている彼には別れ話しを持ち出した。だって、彼がいない期間ができちゃうのって嫌じゃない。
私は、男性に暖かく抱擁されるのが好き。だって、愛されてるって感じられるもの。だから、毎晩、男性と一緒に過ごしたいし、過ごしてきた。
男性がいない夜なんて、寂しくて耐えられない。そして、自分の部屋はあるけど、ほとんど帰ったことはない。賃貸、やめようかしら。でも、生理の時とかは、恥ずかしいから、自分の部屋は欲しいし、まあ、今のままにしておくしかないわね。
男性も、私の体が目当てなのかわからないけど、私が、ずっと一緒にいたいというと、誰もが夜を一緒に過ごしてくれる。私は、男性と一体になるときが、愛されているって感じられて、大好き。ずっと、そうしていたい。
三島さんは、そうは言っても、上司だし、すぐに肉体関係を持ちたいなんて言えない。だから、今は、セフレはキープしつつ、気持ちは、三島さんだけに捧げている。
でも、男性って、どうして女性のこと好きになるのかしら。関係ないか。私は、甘えたいの。話しも聞いてもらいたい。褒めてもらいたい。そんな男性と一緒にいられるのが楽しい。私は、少し極端なところもあるけど、そう思うのは、ごく普通のことでしょ。
三島さんも、私のこと、なんでも聞いてくれて、褒めてくれる日々。そんなことばかり考えて、気づいたらお昼になってた。あれ、午前中は何も仕事をしていなかった。それは別として、私も、セフレから卒業して、しっかりした人と結婚を考える年齢よね。その相手は三島さんがいい。
三島さんは、アシスタントの私にも、いつも優しい言葉をかけてくれて、とっても素敵。結婚したいNo.1って、あんな人じゃないかな。聞くところによると、御曹司だというし、顔もイケメン。高校の時は、バスケで国体に出たというからすごいじゃない。欠点が見当たらない。
当社で周りを見てると、アシスタントに、早くお茶もってこいとか、なんで、いつもこんなことができないんだとか、怒鳴っている人をよく見かける。アシスタントとの関係がそもそも、そういうものなのか、そのアシスタントがドジなのか、わからないけど。
このような発言がパワハラかどうかは別として、私が、そんなこと言われたら気持ちが持たないわ。でも、三島さんは、もちろん、そんなことは言わない。紳士だもの。
さらに、三島さんの仕事のやり方をアシスタントとして学べば、次のステップに行けるじゃない。いえ、それは違うわね。三島さんだから、あんなやり方で成功するのよ。違う人が同じことをしても失敗するだけ。
だから、三島さんの奥様になるのがベストな生き方だわ。そのためにも、三島さんに好かれる人にならないと。
いつも、三島さんに何を言えば、何をすれば好きになってもらえるのか考えちゃって、よくぼーっとしていると三島さんから笑われることがある。あなたのこと考えているのよと言ってみたいけど、ちょっと、まだ早いわね。
ところで、先日、六本木を歩いていたら、三島さんが女性と腕組んで歩いていたから、彼女がいるんだと思う。でも、どうして三島さんが、あんな女性と付き合ってるのかわからない。
あれなら、私の方が2倍じゃなくて2桁ぐらいいい女性だと思う。でも、よく映画とかで見る、親が決めたいいなづけとか、何か訳があるのだろうから、それ以上、詮索をするのはやめた。
それから、悲しい気持ちになって、三島さんにも笑顔を見せられなくなった。私は、三島さんの奥様になれないんだって。どうして、世の中はこんなに理不尽なんだろう。
私だって、努力してきたし、周りの人に悪いことをしたこともない。そろそろ、神様も、私の願いを叶えてくれてもいいのにって。
ある会社の飲み会で、大勢いたけど、アシスタントということで三島さんの横に座り、お酒を注いだりしていた。三島さんは、私が、最近、暗いようだけど、何か悩みがあるの、あるなら相談に乗るよと言って、飲み会の後、近くのショットバーに一緒に行こうと誘ってくれた。
少しでも、三島さんと一緒にいたいという気持ちが抑えられなくて、ついて行って、飲んでたら、悩みのせいかもしれないけど、だいぶ酔っ払ってしまったの。
その後は、覚えていない。カーテンから漏れる朝日が眩しくて起きたんだけど、私は、どこにいるんだろう。
ベットで横を見ると、三島さんの横で寝ていた。何があったか全く覚えていないけど、パンツも下着も何も着ていないし、パンツ見たら汚れてたから、昨晩は三島さんとエッチしたと思う。
裸のままで、頭の中が真っ白になり、しばらく体が動かなかった。失敗したと思ったけど、今更、どうしょうもないので、朝、まだ三島さんが寝ているうちにホテルを出たの。
その日、会社で会ったんだけど、ごめんとか言ってきた。ごめんって何? そんなこと言わずに、彼女と別れて私と付き合ってよと思った。でも、子供じゃないんだから、そんな恥ずかしいことは言えないわね。
一応、上司だから、全く記憶にないのですが、私こそ恥ずかしいことしちゃって、ごめんなさいと言ってから、彼女はいるんですかと小声で聞いてみた。
そしたら、いないよというので、この前、三浦さんと一緒にいた女性のことは気になったけど、勇気を出して、じゃあ、私と付き合ってくださいと言った。
三島さんは、ゆっくり頷き、付き合おうと言ってくれた。私は、周りが全て華やかな色で染まったように見えたの。そう、やっと、私の苦労が実ったんだから。これから、三島さんが、私を包み込んでくれる。
それから、よく一緒に出かけるようになり、将生、芽衣と呼び合うようにもなった。
そうね。この前見た女性は将生の彼女じゃなかったのよ。やっと、私にも幸せになる時がきた。これまで、頑張って生きてきた甲斐があったわ。これで結婚して、会社をやめて、子供が生まれ、笑顔で溢れる家族と一緒に過ごす。夢が叶うわ。
毎回、贅沢なレストランとかに連れていってくれて、本当に楽しい日々が続いた。夏には、アシスタントは、上司が休みで仕事がない時じゃないと休めないからという理由で、将生が休む日と同じ日に休んで、イタリア旅行に行った。こんな幸せな日々がずっと続いてほしい。
まだ、あの女性と付き合っているなんてことはないわよね。そんなことがあったら、別れさせてやる。私が一番なんだから。そうよ。将生は私を抱いていたいの。昨晩も、私のこと抱いて、芽衣が大好きと叫んでいたんだから。
そんな日々を過ごしていると、最近、あれが来ていないことが心配になっていた。誰にも相談できなかったけど、数ヶ月続いたから病院に行ったら妊娠しているって。
多分、将生も、独身生活は楽しいし、結婚するためには、何かきっかけを待っているのよ。その一番乗りが私なのね。
そして、将生との子供。男の子かしら、女の子かしら。きっと、優しくて、甘えん坊で、可愛くて、利発な子供よね。将生と私の子供だもの。絶対に幸せになる。
その子が私のお腹の中にいる。そう、こういう日を待っていたの。将生との子供、本当に愛してる。体中が、暖かい幸せの気持ちで包まれていた。
これはもう隠しておけない。三島さんに会って、結婚しようと話そう。そして、あの女が、今もいるなら、彼から引き剥がさないと。
そうだ、直接、話すのも怖いから、まず、伝えたいことを手紙に書いて、渡しておこう。アシスタントなんだから、職場にある将生の鞄に入れるのがいい。
誰かに見られても、業務連絡でメモを入れたといえば、そんなにおかしくない。そして、数日あったら読むだろうから、その後に直接会って、結婚してと伝える。これがいい。
これでやっと、将生と結婚できる。
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