第4話 大臣への脅迫

 彼は、順調に成績を伸ばし、3年で課長から部長に昇格した。35歳で部長というのは異例だけど、彼への期待を最大限にすることができた私のおかげね。


 そこで、次に彼に与えられたミッションは、メタバース事業で、トップのメディア会社とアライアンスを組むことだった。


 私は、知っている。そのアライアンスには、正攻法ではダメなことを。そこで、メディア業界を所掌する総務大臣の弱みを見つけて、脅すことにした。


 通信会社のサーバーに入り込み、総務大臣のスマホでのやりとり、通話記録を1ヶ月間見ることにした。最初は、日頃から警戒しているのか、あまり問題とか見つからなかったけど、そんなことでつまづく私じゃない。


 やっぱり、ゲスなおじさんね。ホステスと2人で、税金を使って、フィンランドにお忍びの旅行に行っていたことがわかった。やっぱり、権力を持っているおじさんって、こんなもん。


 でも、あんな歳なのに、どうして女とやりたいのかしら。もう立たないでしょう。あなたも、太鼓のようなお腹を女に見せるの恥ずかしくないのかしら。もう、ヒキガエルのようで、人間じゃないって気づいていないの。


 私だったら、あなたの裸を見たら吐いちゃうと思う。まあ、金の亡者の女もたくさんいるから、吐きそうなのを我慢して、笑顔で素敵とか言っちゃうのかもね。ああ、考えただけでも、気持ち悪くなっちゃった。


 さらに、そのホステスも、嫌な女。お店があるビルのエレベーターの会話とか盗聴したけど、いつも、あいつから、いくら金を巻き上げられるかなんて話しばかり。さらに、お店の女の子等を脅して、売春までさせて、ピンハネしている金の亡者。


 これは、総務大臣とは別に制裁を加えないとダメね。どうしようかしら。ちょっとやそっとじゃ懲らしめられないから、この世から消えてもらうのがいいかも。


 そこで、まず、総務大臣から、トップのメディア会社の社長に、メタバース事業について当社とアライアンスを組むよう圧力をかけること、そのリーダーとして私の彼を入れること、このことは秘密にすることについて、匿名でメールをし、それをのまないと、お忍び旅行を公開するぞと脅迫した。


 どうも、メールは誰が出したか調べたようだったけど、そんなことで見つかる私ではない。私の力を侮らないで。


 最初は、あれやこれや言って、渋っていたから、今度は、娘の大学入学が裏口だっていう証拠も見つけて脅してやった。どこまでも悪人ね。娘のせいで、大学落ちた人のことどう思っているのよ。良い社会を作る義務がある政治家でしょ。


 さすがに観念したのか、わかったと返事が来て、その後、私の彼は社長から呼ばれ、お前を名指しで、メディア会社からアライアンスのオファーが来たぞと告げられた。彼は、やっぱり俺は実力があると大喜びだった。


 でも、総務大臣、こんな悪人、許すはずないでしょう。また、さらに偉くなって、今回の脅迫のこと再調査とかされても困るし。ただ、用心深いのか、脅しで使ったもの以外に、なかなか証拠が見つけられなかった。


 でも、叩けば埃は出てくる。1ヶ月ぐらい探したら、5年も前にはなるけど、消防車の購入で、自動車会社から賄賂をもらっているじゃない。やっぱ、あったわ。これを、週刊誌に売ってあげたら、大炎上、すぐに失脚となった。週刊誌からもお小遣いもらえたし。


 そうそう。こんなおじいさんは、早く消えればいいのよ。そうしないと、日本だけ、世界から置いていかれちゃう。こんな人が居座っているから、いつになっても、日本は変われないんだから。私は、この世の中を少しでも良くしたいの。


 私って、日本のバットマンとか。ダークだけど、社会のために頑張っているヒーローだとか。よく分かっているじゃないの。ありがとう。


 次に、ホステス。そのお店があるビルのエレベーター工事があるってわかったから、そのホステスがのる時間を調べてみた。


 いつも、16時半にお店に行くという几帳面な性格がわかったので、その時間に、その女が8階についた時、エレベータの電源を切って、ワイヤーのストッパーを外してやったわ。今は、どの装置も電気で操作することが多いから、私には、簡単に操れる。


 その女は8階から真っ逆さま。あとで聞いたけど、その女性の足の一方は頭のほうに折れ、手も折れ曲がって、その状態で30分も息があったらしい。そして、死んだ。


 これで、世の中のクズは、また1人減ったわ。この店の女の子達のためにも、いいことをした。きっと、いいことをしていれば、神様が助けてくれるって、星に祈りを捧げていると思う。


 その神様って私のことだけど。

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