第13話

「要覧から誰かが脱出したという知らせを聞いて、もしこのことに関係ない人があいつの無差別的な攻撃を受けて危険に処すかもしれないという考えで不安になっては急いで追跡に乗り出した。 感情に染まったエーテルの匂いに沿って素早く足を運び、難なくゆりかご近くの森の中で怯えたまま隠れている奴一人を発見した。 彼は私を見るやいなや何か直感したのかすぐに命だけ助けてくれと言うが、私は純粋なエーテルを持った誰かがあいつの感情に染まるのを防ぐためには絶対生かしておくことができないと言った。 彼は悔しい表情で訴えたが、「私はただやるべきことをしているだけだ」という言葉だけを繰り返し、冷ややかな反応を見せた。 彼もやはりいくら哀願しても何の役にも立たないということに気づいたのか、直ちに私に拳を振り回して飛び入り、私は大きくため息をつき透明な光を放つエーテルを巻いた鎌で一気にあいつを斬ってしまった。 彼は一撃で煙のように消え、私はその光景をじっと見つめながら「ただ摂理に従っただけだ」と答えた。 最近、このようなことが頻繁に起きているようで、ゆりかごに何の問題が生じたのか心配だ。 アイギス… 一体何が…」


ベルはすぐ次のページをめくる。


「タイトル : 騒動」


「今日、ゆりかごでひとしきり騒ぎがあった。 エーテルに戻ることを拒否する者たちが鎖の封印を解いて村で暴れたのだ。 私はどうしても彼らを乱暴に扱うことができなくて必死に哀願したが、彼らはすでに感情にとらわれていたので、私の言葉が届かなかった。 私が彼らをなんとかなだめようとしている間に、白いローブをかぶったリッパーがやってきて、セージ家の秘術で鎮圧した。 彼らのエーテルを強制的に抑制する鎖魔法だった。 鎖を握っている間に早く元の監獄に戻せと命令したが、私はそのようにもがくのをじっと見ていると、ただ残念な気持ちにとらわれて決定を下すことを迷った。 私がぐずぐずしている間、彼らの一部が鎖を破って私たちに飛びかかり、リッパーという使命を持った者たちもやはり鎌を抜いて彼らに対抗して大きな戦いが起きた。 彼らは鎌に透明なエーテルを巻いて反抗する人々を無残に斬り捨て、自分の同僚がエーテルとして消えるのを見て怯えたのか、一部はゆりかごから逃げるように抜け出した。 私は騒ぎが収まってから一人で座り込んで、その騒ぎに巻き込まれたまま戸惑ってばかりいた自分を恨んで嘆いた。 あの時私が本当に望んだことは果たして何だったのか… いったい何をためらっていたのだろうか…」


ベルはやはりすぐ次のページをめくる。


「タイトル : 宿命」


「最近、ゆりかごにかかった封印が弱くなる感じがする。 今日も実際に大勢が鎖を割ってゆりかごから脱出した。 ただそれだけではない。 私の体にも変化が生じる感じがする。 寝ようと横になると誰かの泣き声が頭の中に響く。 日がたつにつれて鮮明になり切実になる。 一日も早く私に決定を下すよう促すのだ。 今すぐ何か手を使わなければならないようだ。 セイジ家がこの事実を知ったらどんな反応を見せるのか気になりながらも恐ろしい。 もっと遅くなる前に… 取り返しのつかないことが起こる前に…」


その時、エルマも近づいてくる。


「役に立つものでも見つけましたか?」


ベルが本の内容に没頭してじっと読んでいると、その声にびっくりして素早く覆ってしまう。


「え?」


エルマは首をかしげる。


「どうしたんですか? 何かあったんですか?」


「あ…違うよ。 何でもない. 確かではないけど、一度確認してみたいことができた。」


ベルは戸惑いを隠そうとするかのように平然としたふりをしながら立って入り口を指す。


「本当ですか?楽しみですね。 所得があったなんて幸いですね。」


「ここはもう用事がないんですか?」


「そうだね、すぐ出発しよう。」


ベルが先頭に立って邸宅を出て村の外郭に向かう。


私の記憶が正しければ、近くに訓練場があるはずだ。


ベルの言葉を証明するように村を離れると、各種障害物が設置された閑静な空き地が出てくる。 ベルはやはり思い出にとらわれては、まさにこの荒涼とした野原を駆け回っていた自分の姿が目の前にちらつくようだ。


「懐かしい光景だね。 昔のことを思い出すわ。」


「ここにはどんなご用件でいらっしゃったんですか?」


「よく見て。」


ベルは微笑みながら鎌を取り出し、空き地の片方に置かれた訓練用の木片を軽く切ってしまう。


切り取った場所にすぐ木片が復旧する。


「やはりここは昔の姿を展示した博物館と変わらない。」


「不思議ですね。また元に戻るなんて。 では、さっき町を通りかかった人たちも同じですか?」


「そう、私の考えではそうだ。 この村全体がまるで実体のある歓迎のようだ。」


「では、ここにいるのはいくら倒しても無駄だということですか?」


「まったくそうではない。 私ならできるよ。」


「ああ…本当ですか? 何か尖った手があるようですね!」


「よく見て。」


ベルが精神を集中してエーテルを鎌に巻いてから大きく振ると、木片がやはりきれいに切れる。 ベルの行動はやはりあまり変わらないが、まさにこの木片は切られた部分が床に落ちて煙のように消えては復旧できない。


「あ…復旧が… ダメなんですね。」


「私の幼い頃の思い出が込められた村を展示しておいたのをこのように壊すのがとても残念だが、これがリッパーの能力だ。 エーテルを切り取る力だよ。 その時代にはリッパーだけが自分のエーテルをこのように武力で活用することができた。」


「この力で誰かを斬ってしまうんですね。」


「そうだね。その時は役立たなくなった存在をこの方式でエーテルに戻したんだ。 現在は不死者が絶えずエーテルを吸収して無駄だが、もしかしたらこのような特別な環境であるため、この力を完全に活用できるかもしれないね。 この村は外の世界と断絶したところだから幻影が持っているエーテルを切ってしまえば何でも倒すことができる。」


「なるほど。」


「この話をしたら行ってみたいところができた。」


ベルは鎌を折って背中に背負ってエルマとカディヤに手招きする。


ベルが2人を率いて到着したところは、外観から厳粛な雰囲気が漂う神殿だ。


カディヤが空の高いことを知らずにそびえ立つ神殿を見上げると、その雄大な風采におのずと口が開く。


「わあ…」


「カーディ、そんなに口を開けて感嘆したらあごが抜けそう。」


「ここは…」


「ブラフマに祈る祭壇があるところだった。 うちのリッパーはいつもここに来て誓約を確認した。 自分のエーテルの色が変わっていないか検査し、自分でその意味を再確認した。」


「今ここに来た特別な理由があるんですか?」


「特別な理由というか? 私の思い出にゆっくりついて歩いていると、思い出したところというか? その時代に世の中のバランスを守ってほしかったリッパーなら、この魔法と関連があると思った。 世の中に流れるエーテルのバランスを守る神様を祀る場所だから、この村で一番象徴性が大きい場所でもあるからね。」


「なるほど。」


「そう、その当時の篤い信念と確固たる使命感を胸に秘めたリッパーなら、きっと望んでいたはずだ。」


ベルが淡々と社殿の中に入る。


エルマとカディヤがベルに沿って行く途中、神殿入口で透明な壁に遮られる。


ベル様!


エルマが慌てた表情でじっと立っていると、壁越しにベルが首をかしげる。


「何かあったの?」


エルマはその壁を手のひらでたたいてみるが,びくともしない。


「何か立ちはだかっているようです。」


「神殿自体の結界が私だけが通過できるように許可したようだね。 エーテルの性質で侵入者が誰なのか区分するんだ。 やっぱりややこしいね。 こんなにお客さんを選り分けるなんて。」


エルマは困惑した様子をはっきりと示している。


「いや…これは…」


ベルは途方に暮れているエルマを安心させようとただにっこり笑う。


「神聖で大切な場所だから、誰もが入れないように一種の保安装置をしておいたんだ。 確かに私の思い出旅行なのに、こんなに一人だけの時間が全くないのも少し残念だった。 これも悪くない。」


「いや!どうしてこんな状況で そんなのんきな言葉を… 何か脅威が潜んでいるかもしれないのに。」


「心配しないで。何が待っているかは分からないけど、私がそんなに簡単にやられるはずがないことをあなたもよく知っているでしょう。 すぐに解決してくるから、その間二人でこぢんまりと散歩でもしていて。」


ベルは適当に手を振りながら再会を何気なく約束し、神殿の中にゆっくりと入る。


カディヤはベルが深い闇の中に完全に消えるまでじっと見守る。


「エルマ様、私たちは本当に楽にベル様だけを信じて待てばいいですか? ついていけないのがちょっと残念です。」


ベルの後ろ姿から目が離せないエルマの顔もやはり心配でいっぱいだ。


残念ですが、すぐにできることはそれしかないと思います。


一方、ベルはカディヤとエルマに訳もなく心配をかけたくなかったので、努めて平気なふりをしたが、いざ一人で落ちると漠然とした緊張感にとらわれる。 にこにこした表情は跡形もなく、神経を尖らせたまま周囲だけを警戒する。 暗い闇の中から何が飛び出しても、直ちに鎌を抜くことができるように自ら準備をしっかりする。


ベルの足音が静かな空気に乗って神殿全体に広がる。 ベルは固く心を引き締めて、周りにいるのは皆欺瞞に過ぎないと自ら再確認しても到底歓迎とは信じられないほど生々しい。


ベルがそのように精一杯敏感になったまま闇を突き抜けて進むと、いつのまにか神殿の最深部に辿り着く。 端っこでやはり見慣れた感じがする小さな泉を発見し、まるで取り憑かれたかのようにゆっくりと近づいていく。 やはり敬虔な心構えで透明な泉に顔を映してみる。 大きくため息をつきながら心を整え、まるでその時代に自分がしたかのようにエーテルを泉に流す。


動悸をかろうじて抑えたまましばらく待つと、泉がベルのエーテルに反応して赤い光を放つ。


「…」


ベルは口を閉じて複雑な表情でじっと見つめている。


まさにその時、どこかから出てくる声がぎこちない静けさが漂う神殿全体を鳴らし、精一杯敏感になったベルの心に触れる。


「久しぶりのお客様ですね。」


ベルは素早く鎌を取り出し,鋭い目つきであたりを見回す。


「この声は… 確かに…」ベルはどこかで響く親しみやすい声にびっくりしては自然に瞳孔が揺れる。


ちょうどその時、正面にある彫刻像からクリスタルが一つ現れ、きらびやかな青い光を放つ。


「それは私が聞きたい言葉です。 どなたですか?ここに何のご用件でいらっしゃったんですか?」


ベルは真正面に視線を向ける。


「夢のように夢ではないところでこんなに先に歓迎してくれる存在に会えて嬉しいね。 私はただ噂だけ聞いてこの村がどんなところなのか知りたくて来たけど、実際どこに行ってもただのトリックのような歓迎しかなくてとても残念だったんだ。」


「どうしたんですか? あえてここまで来たのを見ると、単なる散歩で立ち寄ったとか、道に迷っていて偶然来たとは到底言えないような気がするんですけれども。」


「そう、君の言う通りだ。 絶対違うよ。 私の性格もそういうのとよく合わないし。 だから単刀直入に聞いてみる。 この村のエーテルを閉じ込めて時間を止めたのはお前か。」


「はい、そのとおりです。」


「率直にすぐ答えてくれていいね。 じゃあ、むしろ用件はとても明確だよね。 私はこの村にかかった魔法を解きに来たんだ。」


「だめだと言ったらどうするつもりですか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る