第73話 地下3階
俺は地下3階に下りた。今回は変身したままだ。先ほどの声の主が襲ってくるかもしれないからだ。この階は上からの照明があり、中は明るかった。しかも天井が高い。これなら十分に戦える。
すると周囲から魔物が飛び出してきた。
「さあ、来い!」
俺の前には見たことのある魔物がずらりと並んだ。スライムからコウモリ、クモの化け物からゴースト、アナコンダからゾンビ、帽子の魔物、デーモン、火を噴くドラゴン、首のない騎士・・・ここぞとばかり押し寄せてくる。
(こんなに数がいたらかなり苦戦するな。ラインマスクと言えども・・・)
まずはスライムやゾンビなどの魔物が襲い掛かってきた。だがこんな奴らは一撃だ。数は多いがHP《ヒットポイント》が低いから何のことはない。パンチやキックを放つたびに消滅していく。ペロもMP《マジックポイント》を使って体を大きくしてグレートウルフのようになって魔物を蹴散らせている。
すると第2陣が迫ってきた。それは俺の苦手とする魔法系の魔物だ。奴らは遠隔で強力な攻撃を放ってくる。今回も俺が手が出せない距離から先制攻撃をしてくるだろう。俺はじっと身構えた。するとやはり火や雷、水流に石が束になって飛んできた。
(ん? なんだ?)
確かに攻撃を受けているが、そんなものは両腕で軽くはね返せた。ラインマスクになっているからではない。威力が全く弱いのである。上の階ではあれほど苦戦したのに・・・。
「トォーッ!」
俺は奴らの攻撃を避けてジャンプした。そばによって直接打撃攻撃をするためである。魔法系は接近戦に弱い、奴らが魔法を発動する前に叩くのである。
「ウェー!」「グアー!」「ヒェー!」
魔物は断末魔の叫びを上げて消滅していった。
その様子を見て今度は騎士や剣士たちが襲い掛かってきた。こいつらの剣さばきの鋭さと言ったら・・・。
(あれ? 動きが鈍いな・・・)
上の階で戦った奴とは比べものにならない。俺がこいつらとの戦いになれたから・・・というわけでもないらしい。
TVのラインマスクもそうだった。敵の幹部と戦うクールの最後では、再生怪人と称して今までに登場した怪人が集団で現れる。それまでは1体を倒すのにあれほど苦労したのに、その回は必殺技を使わなくてもぶつけるだけでいとも簡単に怪人を倒せるのである。解説書では再生怪人は急造されたものだからオリジナルのものより弱いとか説明されていたが・・・そんなことはどうでもいい。
とにかくこのようにたくさんの魔物を出してくるからには、この階にはラスボスが控えているに違いない。いよいよダンジョンも佳境になったのだろう。
「ラインパンチ! ストレートラインキック!」
俺はパンチやキックを次々に放っていく。上の階では苦戦した相手もいとも簡単に倒せた。ともかくこいつらをさっさと片付けねばならない。グレートウルフ化したペロも俺の背後から襲ってくる魔物をやっつけてくれていた。やはり信頼する仲間に背中は預けられるものである。
こうして数多くいた再生怪人、もとい魔物どもは消えていった。
「すべて倒したぞ! 姿を見せろ!」
すると拍手しながら出てきた。それはやはりあいつだ。
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