第53話 ラインキック不発
それから数日が過ぎた。やはり予告通りにキングウルフがグレートウルフを引き連れて北門を攻撃してきたのだ。それに備えてここには剣士やら魔法使いやら役に立ちそうな連中が集まられていた。
俺たちのパーティーもすぐに駆け付けた。もちろんペロもアリシアが抱っこして連れて行った。
北門は前回よりもっとひどい状態になっている。警備兵どころか集められた剣士や魔法使いたちもやられて倒れている。殺されてはいないようだが、回復魔法でも治るまで長期間かかるくらいの重傷だ。
「もうやめるんだ!」
先頭に立った勇者ノブヒコが言った。すると倒れていたそばに警備兵がキングウルフに操られてふらふらと立ち上がり、その言葉を伝えた。
「お前たちか! 前回は不覚を取ったが今回はそうはいかぬ。あの仮面の奴はどうした?」
変身前の俺は認識されていないらしい。勇者ノブヒコはアリシアに抱っこされているペロを指さした。
「お前の家族は保護している。門のそばではぐれて動けなくなっていたのをこの町の人間が助けたのだ」
「いや、人間など信じられない。貴様らが一緒にいた妻を殺し、子供を連れ去ったのだ」
キングウルフは警備兵にそうしゃべらせた。
(妻? つまりペロの母親を殺した奴がいるのか? だとするとそれは・・・)
俺がキングウルフの前に出た。
「妻を亡くしたことは気の毒だと思うが、俺たちじゃない。お前たちは騙されている。この町を襲うように仕向けられているんだ」
「何だお前は! 嘘をつけ! 人間は嘘をつく! 我らが復讐してやる!」
キングウルフは聞く耳を持たない。しかも認めた相手である俺がわからないらしい。変身していないから・・・。
「まずはお前からだ!」
キングウルフが俺に襲い掛かってくる。早すぎて変身する暇がない・・・短縮バージョンもありだが、やはりここはかっこよく決めねばならない。
「トォーッ!」
俺はジャンプして北門の上に立った。なかなかいい
「ラインマスク! 変身! トォーッ!」
俺はまたジャンプして空中で回転しながらラインマスクに変身した。そして華麗に降り立つと、
「天が知る。地が知る。人が知る。俺は正義の仮面、ラインマスク参上!」
と名乗りを上げる。
「貴様だったのか!」
驚きの声が上がる。操られている警備兵から・・・。キングウルフからではないのが違和感を覚えるが・・・この際、よしとしよう。キングウルフは引き連れたグレートウルフを下がらせた。またタイマンで勝負するつもりなのだろう。
俺は考えていた。どうやってキングウルフに戦いを止めさせるかを・・・だがいい考えは浮かんでこない。そうするうちにキングウルフが襲い掛かってきた。前回の決着でもつけようというのか・・・。前足の爪が俺を切り裂こうとし、奴の牙が俺を突き刺そうとした。
俺は必死に応戦した。キングウルフは勝負をつけようとさらに攻撃を仕掛けてくる。奴を屈服させるしか手はないのかもしれない。俺は隙を見てジャンプした。そして空中で回転して、
「ラインキック!」
を放った。しかしキングウルフは両腕でブロックをする。強力な衝撃を必死に耐え、そして全身の力で押し返した。すると俺は空中に飛ばされていた。必殺のラインキックも跳ね返されてしまった。
(ラインキックが効かない・・・)
俺は態勢を立て直して何とか着地した。必殺技が破られるとさすがに俺も茫然としてしまう。頭が真っ白になって周囲が見えなくなってしまうのだ。そうなると隙だらけだ。何が襲ってきても気づけない状態になっていた。だが、ミキの
「危ない! 避けて!」
という叫び声が耳に入った。はっと我に返ると、そこにキングウルフは奴の必殺の技である「ローリングアタック」が迫ってきていた。
「トォーッ!」
俺は一瞬早く飛び上がって直撃を免れた。奴のローリングアタックは地面に深く穴をあけてだけで終わった。体を木っ端みじんにされるところだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます