第41話 約束
仲のいい友達とともに異世界に転生したのはいいが、2人ともジョーカーにつかまって改造され、無理やり悪事に加担させられている。この異世界の人生を踏みにじられているのだ。それを聞いて俺はふつふつと心の奥で怒りが沸き起こってくるのを感じた。こんな非道なことをするジョーカーが許せないと・・・。
「俺がこの手でジョーカーを倒す。ラインマスクの俺が!」
俺は右手の拳をぎゅっと握りしめた。啓子はそれを見て目を丸くした。
「えっ! やっぱり本当のラインマスクだったの? 昔、ちらっとしか見たことがなかったの。子供番組だったから」
彼女は俺を本物のラインマスクと勘違いしているようだ。テレビ番組のヒーローは実在すると・・・。俺も少し前まではそうだった・・・そんなことはどうでもいい。ピンクレディーのファンだから前世では俺よりもかなり年上だろう。だから彼女は当時の子供が見ていたラインマスクをあまり知らないし、しっかりと覚えていないはずだ。本物のラインマスクとしてこのまま押し通すか・・・。
「ああ。そうだ。ラインマスクは本当にいる。この世に悪がある限り」
俺はキザにきめた・・・つもりだったが、恵子はクスっと笑った。こんなシリアスな場面に・・・と俺は不満そうな顔をすると、
「ごめんなさい。前世でラインマスクごっこをしていた甥がそんなセリフを言っていたから」
恵子は懐かしそうに言った。彼女の暗かった顔が明るくなったようだ。まあ、それなら少し笑われてもいい。雰囲気がよくなったところで俺は話を切り出した。
「俺に協力してくれ。このままではこのライムの町の住人は連れさられる。どうしてもそれを阻止したいんだ」
「わかったわ。これ以上、悲しむ人を増やしたくない。でも一つだけ約束して! ミッチを殺さないと。いくら怪人でも・・・」
恵子は真剣な目で俺を見た。俺は考えた。蜂怪女を倒さずに解決できるかどうか・・・それは難しい。
「いいわね! ミッチを無事に返して! 私の希望はそれだけよ!」
「う、うん。わかった」
俺はそう答えざるを得なかった。恵子の協力がなければ、ジョーカーに対抗することはできないからだ。
そうと決まれば作戦実行だ。まずは恵子をここから無事に連れ出す。その後で蜂怪女と対決しなければならない。彼女が持つ町の人を操る能力を破壊して、しかも元の池野美智代に戻さねばならないのだ。
(どうすればいいのか・・・。果たしてそんなことができるのか・・・)
恵子には安請け合いしたが、いい方法が浮かんだわけではない。俺は気づかれないようにため息をついた。
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