はじまりの初デート(2)
「はぁ〜、もうほんと感動しちゃった! 最後、結ばれて本当によかったよ〜」
「円樹先輩、ちょっと涙ぐんでましたね」
「え、わかっちゃった……!? 恥ずかしい……」
――映画を観終わったアタシたちは、ファストフード店でのんびりと余韻に浸っていた。
カウンター席しか空いてなかったから、自然と隣同士になる。ちょっと気を抜くと肩がひっつきそうな距離に緊張しつつも、実は心の内では喜んでいた。
「それにしても意外。守くんも恋愛映画好きなんだ」
「いや、恋愛映画が好きというより……たまたまその映画が気になっていたんですよ」
「まあ確かに公開前から盛り上がってたもんねー。禁断の兄妹愛とかっていってさー」
お互い何気ない会話を交わすこの時間は、アタシにとって何よりも心地よかった。
学校でもずっとこんなふうに話せていたらいいのにと思うけれど、学年が違うとなかなかそれも難しいのが残念なところ。
「円樹先輩は恋愛映画好きなんですか?」
「うん! 恋愛モノは昔から好きなの。少女マンガとか今も集めてるよ。……アタシね、ずっと恋愛に憧れがあって、自然と追いかけちゃうの」
守くんは「……憧れ、ですか」と、アタシの言葉に興味を持ってくれたようだ。
「そう、憧れ。アタシね……こういっちゃ自意識過剰って思われるかもしれないけれど、すごい
「ああ、それは十分理解してます」
守くんはクスリと笑った。いつもよりも気を許して話してくれているみたいで、アタシはうれしくなる。
「アタシはみんなから好意を向けられるけれど――アタシからは誰かを特に好きになるってことは今までなくって。だからね、物語の恋する少女に夢見てたの……でも、今」
アタシは一旦言葉を区切り、守くんを見つめた。
「――今、アタシはやっと『恋』してる」
守くんは口をポカンと開け、目を丸くしていた。
急にどうしたんだろう――と思って、すぐきアタシは自分の発言に気がつく。
(――って、アタシったら、超恥ずかしいこと言ってない!?)
っていうかこれ、ほとんど守くんに『恋』してるって言っているようなものだよ! どうしよう、今度こそ守くんになんて言われるかわからないよ……!
ダメだ……守くんの目、見れない――と、アタシは堪らず目を逸らした。
守くんが今どんな表情をしているかなんてわからない。アタシはただ手元を見つめながら、守くんがなんて切り出すのか、じっと耳を澄ました。
「……円樹先輩」
反射的に肩が震え、ピンと背筋に力が入る。それから、アタシは恐る恐る守くんを見つめた。
「食べ終わったら、またどこか行きましょうか」
そう話す守くんは、ほんのり顔が赤いように思えた。
「……今日はせっかくのデート……ですし」
「……う、うん。そうだね……そう、しよっか」
上擦る声を必死に抑えて、アタシは頷いた。
変に期待するのはよくないと、もちろんわかっているけれど。
――これは、ほんの少しだけは……みゃ、脈アリだと期待してもいいんじゃないかな?
(緊張しすぎて、へ、変な行動だけはしないように気をつけないと……!)
アタシは改めて、こっそりと胸の内で気合いを入れ直すのだった。
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