第20話 ルドルフ様の様子がおかしいです
「アメリナ、昨日のルドルフ様の様子、なんだか変じゃなかった?急に真っ青な顔をして走って行かれて。あれから教室に戻って来なかったし」
朝一番で話しかけてきたのは、サーラだ。確かに彼女の言う通り、ルドルフ様の様子が変だった。それにあの後、彼は1人で校舎裏で泣いていたのだ。あのルドルフ様が泣くだなんて。きっと大嫌いな私に見られてショックだっただろう。
とにかくこの件は、私の心の中にしまっておこう。でも、泣くほどショックな事なんて何かあったかしら?う~ん、よくわからないわ。
「アメリナ、聞いている?」
「ええ、聞いているわ。きっとよほど何かショックな事でもあったのではなくって?とにかく、私達には関係ない事だから、そっとしておきましょう」
「そうね、私たちの食事中に退席するくらいショックなことがあったのだから、きっともう絡んでこないでしょう。とにかく私達には関係ない事だものね」
確かに私達には関係ない事。でも、なぜだろう…ルドルフ様の泣き顔を見た瞬間、胸が締め付けられるような感覚に襲われたのだ。
ルドルフ様の事は吹っ切ったと思っていたのに…そう簡単には忘れられるものではないわよね…
とにかくもう、彼の事は考えないようにしよう。そう思っていたのだが…
「アメリナ、昨日はハンカチを貸してくれてありがとう。あのハンカチ、昔俺の為に龍の刺繍を入れてくれたときに、練習用として使っていたものだよね。あのハンカチは貰ってもいいかな?それからこれ、昔アメリナが大好きだった家の料理長が作ったマカロンだよ。お礼に食べて欲しい」
そう言ってマカロンを渡してきたのだ。昨日までのルドルフ様とは打って変わり、穏やかな表情で私を見つめている。それに私が子供の頃に入れた龍の刺繍の事を、未だに覚えていてくれていただなんて…
ビックリして固まる私に
「あら?マカロンですか?美味しそうですわね。私にも1つ頂けますか?」
笑顔で私たちの前にやって来たのは、クレア様だ。私から箱を奪い取ると、嬉しそうにマカロンを食べたのだ。あら?この人、こんな人だったかしら?
その瞬間
「クレア嬢、これはアメリナにあげたマカロンですよ。人の物を取るだなんて、一体何を考えているのですか?」
ものすごい勢いで、クレア様に文句を言っているルドルフ様。それもなぜか敬語だ。一体どうしたのだろう。2人は恋仲なのではないのかしら?
「あら、1つくらいいいではありませんか。それにしてもこのマカロン、本当に美味しいですわね。私にも作って来てくださいませ」
クレア様がルドルフ様に寄り添おうとしたところで、すっとルドルフ様がよけた。
「悪いが俺は、君の為にお菓子を作るつもりは…」
「皆さん、席に着いて下さい」
絶妙なタイミングで、先生がやって来たのだ。急いで席に着く。ふと視線を感じる。視線の方を向くと、ルドルフ様と目があったのだ。その瞬間、なぜか悲しそうにルドルフ様がほほ笑んだ。
一体どうしたというの?どうして急に、私にほほ笑むの。今まで私に全く興味を持っていなかったじゃない。その上、私とは絶対に結婚したくない、大嫌いだと言っていたのに…
「アメリナ、大丈夫?どうしたの?顔色が悪いわよ」
私の元にやって来たのは、サーラだ。
「いいえ、何でもないわ。ただ…ルドルフ様、なんだか雰囲気が変わった気がしない?」
「ルドルフ様?そう言えばなんだか少し柔らかい雰囲気になったような…昨日までは感じの悪い男だったけれど…一体どうしたのかしら?」
コテンと首をかしげるサーラ。この子、やっぱり可愛いわね。
「まあ、私達には関係ない事よね。変な事を言ってごめんね」
ルドルフ様の雰囲気が変わろうが私には関係ない話だ。どっちにしろ、私は彼に嫌われている。ふとルドルフ様の方を見ると、なぜか私の方に近づいてきたのだ。
「アメリナ、あの…今まで君に酷い態度を取ってしまって、本当にすま…」
「ルドルフ様、見て下さい。このブレスレット、素敵だと思いませんか?家の領地で取れたアクアマリンで作ったのですわ。まるでルドルフ様の瞳の様でしょう?よかったら受け取ってください」
やって来たのはクレア様だ。美しい微笑を浮かべながら、ルドルフ様にブレスレットをプレゼントしている。本当にこの2人、仲が良いわね。もしかしたら彼女のお陰で、ルドルフ様の性格が少し丸くなったのかしら?
まあ、私にはどうでもいい事だわ。
すっと2人の傍を離れると、そのまま教室を後にしたのだった。
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