水剣と休み

 今でも驚いている様子のユラス・アデルナさんに水らしき液体を纏った剣で斬りにかかった。

「うおおおりやーーーー」と叫びながら一直線に進む。

 重くもないけど軽くもないこの剣で勝負を賭ける。

「おっと油断していたな。ぐわっ……」

 ユラス・アデルナさんは油断をしていたからなのか、俺の剣を避けなかった。

 剣でユラス・アデルナさんの体に右斜めに斬った。

「そこまで!!」

 王は、俺たちとユラス・アデルナさんの間に入って止めた。

「おつかれ」とユラス・アデルナさんは、俺たちに手を差し出した。

「「こちらこそありがとうございます」」

 俺たちはその手を握りながら立った。

「さて、帰るとするか」

 空は柑子色こうじいろに染まっている。

 前の世界では、5時を知らせるチャイムでも鳴る頃だろう。


 行きと同じ道で王都へ帰って行く者たち。

 これがだとはまだ知らない一同。


「着きました。では、お休みなってください」と気を遣っているようだ。

 俺たちは別れて、それぞれ別行動となった。

『さて、あいつらに会いに行くか』と思いながら、気晴らしに散歩をしている。

「はぁー今日は疲れたなーいたたた」

 怪我した場所を摩りながら独り言を呟く。

「あれ、青葱静あおぎせい君」

 女の子に呼び止めたれた。

「何で俺の名前を知っているんだ?」

「あれ?忘れちゃった?わたしのこと」

「ごめん。名前が出てこない」

 クラスメートの今だに覚えていない。覚えているといえば、昨日の豚林とんばやしぐらいだ。

「いやいや、いいよいいよ!」

 許してもらったが、名前を覚えていないという罪悪感をおぼえる。

「私は髙田名姫鳳たかだなきおです。あなたと一緒にこの世界に来たクラスメイトだよ。これからよろしくね。青葱静君」

 紅く頬を染めながらニコッと微笑んだ。

「こちらこそよろしく。あと、青葱でいいよ」

「なら、青葱君。じゃあね」

 手を振りながらどこかに向かって行った。

 俺も手を振り返した。

 あの子がクラスメイトに居たのが不思議に思える。

 気晴らしに散歩を楽しんでいると、また、クラスメイトと出会ってしまった。

 何で今日は2人のクラスメイトと出会わなければならないだ……

「おや、青葱静君ではないかー!」

 目の前から喋りかけてる者が居た。見覚えのある顔のやつだ。

豚林馬走とんばやしばそうではないか……あははは……」

「君こそ、訓練の帰りかい?」

「そうだ。疲れたからゆっくり散歩でもしながら帰ろうかなって」

「そうか。一緒に帰らないか?」

「構わないが……」

 今日は、豚林と帰ることにするか。





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