3話目・俺は、なんでもできるようになってしまった
◇◇◇
「おお、ター坊か。アンタも飽きないねぇ」
先月末で俺は20歳になった。
そして今日も俺は、いつものごとくF級ダンジョンに潜る。
「はい。今日は
「ははは。ちょっとは難易度が高いダンジョンにも潜ってるみたいだけど、すぐにここに戻って来ちまうなぁ」
「まぁ、色々あるんですよ」
「そうかい? まぁ、アンタぐらい長くワシの話し相手になってくれる人間も稀だ。これからも、そうであってくれれば嬉しいねぇ」
「ええ、善処しますよ」
おっちゃんと適当に喋ってから、ダンジョンに挑む。
ダンジョン入口の門を潜り、自分の肉体が幻想体に置き換わったのを確認する。
「
俺の目の前に半透明の板が浮かび上がる。
そこには、このような文字が書かれている。
・━・━・━・━・
【名前 セリウス・タキオン】
【性別 男】
【年齢 20歳】
★★★★★★★
Key3
↓
↓
【消耗度】
HP・100.00/100%
PP・100.00/100%
【ステータス値】
LV・1(stock=0)
知力・G+(8)
心力・G+(9)
速力・E(36)
技力・G+(7)
筋力・G+(6)
体力・F(19)
【装備品枠・28/70(+50)】
『マップ(1)』
『レーダーB(2)』
『通信装置(1)』
『ミドルブレード(2)』
『ミドルボウ(2)』
『ファイヤアロー(1)』
『サンダーアロー(1)』
『コールドアロー(1)』
『フェンスシールド(3)』
『こそこそマント(1)』
『デコイマフラー(2)』
『フックロープ(1)』
『グリップブーツ(1)』
『暗視ゴーグル(1)』
『水中マスクC(1)』
『バウンドボード(1)』
『緊急脱出装置C(4)』
『煙幕(1)』
『爆弾(1)』
【所持品枠・11/20】
『煙幕(1)』×3
『爆弾(1)』×3
『下級修復剤(1)』×4
『中級修復剤(1)』×1
・━・━・━・━・
問題なし。
設定したとおりだ。
「……よし。行くか」
俺は歩き始める。
目的地は、次の階層への階段。
真っ直ぐ最短ルートを通っていく。
余計な寄り道をしてアイテムを拾うこともせず。
エネミーに見つかりそうになったら「こそこそマント」と「デコイマフラー」で目眩ましをして戦わずに逃げる。
そうしていれば15分ほどで階段に着く。
階段を降りれば、第2階層も同じように進む。
サクサク行こう。サクサクだ。
第2階層では1回だけ戦闘をすることにしている。
「
「ピミャアアアアッ!?」
体表がヌルヌルしたトカゲみたいなエネミーだ。
比較的体力はあるが、ノロいし力も弱い。
口から毒属性の粘液を吐くのが厄介と言えば厄介だが、それも距離を取って弱点の炎属性で一方的にボコれば関係ない。
三発ほど火矢を撃ち込むとすぐに動かなくなって光の泡になった。
いつもスマンな。世話になるよ。
「今回は18か」
レベルが2つ上がって3になる。
レベル1でも楽に倒せる敵の中で、このトカゲが一番多くの経験値をくれる。
そうすると、ステータス画面ではこうなる。
・━・━・━・━・
【ステータス値】
LV・3(stock=18)
・━・━・━・━・
この、レベルの横にある
ステータス値の6項目に割り振って、最大で合計18までステータスを上げることができる、ということになる。
これは、レベルが1上がるごとにおおむね7増える。6から8の間が大半で、稀に2から12までの間でぶれる(有識者はこれを2d6と表現したりもするらしい)こともある。
今回はレベル2つで18なので、まぁ良いほうのぶれを引いたということだろう。
このストックを、今この場で割り振るとこうだ。
・━・━・━・━・
【ステータス値】
LV・3(stock=7)
知力・G+(8)
心力・G+(9)
速力・E+(36+6)
技力・F-(7+5)
筋力・G+(6)
体力・F(19)
・━・━・━・━・
これで、俺の
低レベル帯での一段階差は、マジで別次元の能力差になるといっても過言ではない。
ここで悪いほうのぶれを引いたらもう何体かトカゲを倒さなくてはならなかったが、大丈夫だったので次へ向かおう。
ちなみに、通常はレベルアップ時に増えるストックの数値は見えないし、全てランダムにステータス値に割り振られるので残しておくこともできない。
これを残しておいたり自由に割り振ったりできるのは、俺の持つ「ストック」という特殊スキルの効果だ。
これも、ダンジョンを
「さて、次だ」
俺はそのまま第3階層、第4階層と順に進み、途中で1回ずつエネミーを倒す。
第5階層ではボス部屋の少し手前にある水場で時間を使う。
ここでレベルを10ぐらいまで上げるのだ。
「
ミドルボウにサンダーアローを乗せて、水中に向かってひたすら射ち続ける。
心力が初期値のままですぐに息切れしてしまうので、時折休みを挟みつつ矢を放つ。
水中エネミーの大半は雷属性が弱点なので、とにかく射てば当たったものから経験値に変わっていく。
岸から少し離れて水中を射てば反撃も一切来ない。
20分ほど続けているとレベルが11まで上がった。
それをステータス値に割り振るとこうだ。
・━・━・━・━・
【ステータス値】
LV・11(stock=30)
知力・F-(8+4)
心力・F-(9+3)
速力・D(36+18)
技力・F(7+11)
筋力・F-(6+6)
体力・F(19)
・━・━・━・━・
このぐらいのステータス値があれば、俺ならこのダンジョンのボスである「暴れ兎」は難なく倒せる。
「さぁ、今日も兎狩りだ」
ボス部屋に入ったらいつものように距離を取りつつ通常の矢で滅多撃ちにする。
全力で引き下がりながら矢を撃ち、壁際に来たら爪の攻撃に合わせてタイミングよく飛び避ける。
そしてまた下がりながら矢を当てていく、というのを何度か繰り返すだけでいい。
そうすると、寂しくなくても兎は死ぬのだ。
「はい、終わり」
肉だけ残して消えていく兎を尻目に、俺はステータス画面を開く。
兎を倒したので、さらにレベルが1上がった。
・━・━・━・━・
【ステータス値】
LV・12(stock=32)
・━・━・━・━・
「……たったの2かよ」
どうやらここでは一番悪いぶれだったようだ。
ストックは2しか増えていない。使いにくいな。
ステータス値はいじらず兎の肉を回収した。
今回ほぼ唯一の換金可能アイテムだ。
逃す気はない。
「サークルを踏んで、っと」
帰還用のサークルでダンジョン入口門前に戻る。
これでもまだ昼前だ。
昼飯を食って次のダンジョンに潜る余裕がある。
「だいぶ、この生活も安定してきたな」
この後は兎の肉を肉屋に卸して得たカネで昼飯を食ってからE級ダンジョンに向かう。
いつもの流れだ。
サクサクいこう。
……と、この時はそう思っていたんだが……。
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