三二。山怪
父は登山中に亡くなった。救出時には満身創痍で滑落と思われた。遺言は「山に撃たれた」。どういう意味だろう? それを知りたくて同じ山を登り、同じ沢沿いのルートを辿り続けた。謎が解けたのは初夏のことだった。湿った風、川の水の濁り。父の死因が目の前に襲いかかる。鉄砲水だ。
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