第6話 絶望
「うえ~~~ん!!!だまされたあああ!!!」
「うえ~~~ん!!!当てられなくなったあああ!!!」
それぞれ別の場所で。
雪女は二回目の豆まきを終えた巫女に抱き着いて。
赤鬼は小さな蕾がなる桜に抱き着いて。
わんわんわんと大泣きし続けた。
いやだまされてないけど。
巫女は思ったが、口にはしなかった。
あの赤鬼が狐か狸が変化した姿だと思っているのならば、それでいいと思ったからだ。
これでもう鬼を氷漬けにしようと考えないだろう。
無駄に労力を使う必要はないのだ。
よしよし。
巫女は雪女の頭をやさしくなでながら、鬼は諦めて、梅にしなさいと言った。
そうしようかな。
雪女は思った。
自信がなくなったのだ。
鬼と鬼ではない存在を見分けられないなんて、自分でもびっくりだめちゃくちゃ落ち込む。
もう、動かない梅に狙いを定めようか。
美味しいしね。梅。
もう諦めようか。
赤鬼は思った。
もうちょっと。感覚だが、あともうちょっとで福神になれそうな、気がしたのだ。
なのに。
ピタリと止んだ豆まき。
熱の籠った目だったのに、突如として豹変したのだ冷たい目に。絶望していたと言ってもいい。
自分の何がいけなかったのだろうか。
諦めよという鬼界の主のお告げだろうか。
おまえはこのまま一生追い払われる運命だと。
おまえはこのまま一生鬼界で苦しむ運命だと。
「くぅ」
赤鬼は少しの間、桜の下で蹲っていたのであった。
(2024.2.1)
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