第14話:溶けた愛
「礼央君、もしかしてこの香り、優樹菜ちゃんの部屋のキャンドルと……」
「あ、そうそう。偶然おんなじだったんだよ。これ珍しいのに。俺は兄貴にもらったんだけどねー」
「だから私この香りを知っているような気がしたんだ」
「あ、それから優樹菜ちゃんが持っていたもう一個のキャンドルの香りも良かったよ。女の子が好きそう」思い出したように礼央君が言った。
「二個持ってたの?」
「うん。結構キャンドルって重いのに二個も持ってきてるんだって思った。確かもう一個は甘い感じの香りだったな」
二個のキャンドル。優樹菜ちゃんの部屋でした香りは礼央君と同じ香水の香りだった。
良い香りだったな。私も欲しいけどちょっと高い。バイト頑張るか……。
「あーぁ。アイス溶けちゃって中身のみかんが外にでちゃってるよ」
翔君が買ってきたカップアイスの蓋を開けながら言った。
「もっかい冷やして食べなよ」
沙耶香がスマホをいじりながら言う。
「今食いてーの」
翔君はそう言って、ドロドロに溶けてでてきた中のみかんを棒でさして、口に運んだ。
うん? 溶けて中身が出る?
溶けて中身が出る。溶けて中身が出る。
ふと昔の情景が頭に浮かんだ。妹が家でキャンドルを使っていた時、火を十分くらいで消すので、キャンドルの表面の全体の蝋が溶けず、中心部の蝋だけが円を書いて窪んで減ってしまっていた。それだと勿体無いと、カッターナイフで残ってしまった外側の表面の蝋を軽く削り、空洞ができてしまった中心部に削った蝋を埋める。
そうすると、再度火を灯せば蝋が溶け、表面は綺麗に復活し、空洞が無くなった。
そういえば、冷蔵庫の上の机の奥にキャンドルが置かれていた。皆で指輪を探していた時はキャンドルの火は消えていた気がする。
もし優樹菜ちゃんがキャンドルのその空洞に指輪をいれていたら?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます