時空シール

第30話 七尾城城主

　アレックスと凜は七尾城の中庭に立ち、周囲を見渡します。城下町からは賑やかな声が聞こえ、武士たちが行き交う様子が目に映ります。彼らは時空を超え、まさに戦国時代の世界に迷い込んだのです。

「凜、これが本当に戦国時代の七尾城だなんて、信じられないよ」とアレックスが驚きながら言います。

　凜はしばらく周囲を見渡し、深く考え込んだ後で、言葉を返します。「そうね、でも私たちはここにいる。そして、どうやら時空の力が私たちをここへ連れてきたようだわ」

　彼らの目的は明確でした。闇の力との戦いを終わらせ、加賀藩とその民の安全を確保すること。しかし、戦国時代の世界でそれを実現する道筋は見えません。

　その時、七尾城の門から一人の武士が姿を現します。彼は颯爽とした姿で、アレックスと凜に向かって歩みを進めます。

「おい、そこの者たち。どなたかご用件か？」武士が問いかけます。

　アレックスと凜は互いに顔を見合わせ、戦国時代の人々との接触に戸惑いながらも、彼らに自分たちの状況を説明する決意を固めます。

「私たちは…」とアレックスが口を開こうとしたその時、城内から何者かの気配が感じられました。

　その気配が何か、彼らの運命をさらに複雑に絡み合わせるものであるかどうか、彼らはまだ知る由もありませんでした。

　その気配が近づくにつれ、アレックスと凜の緊張が高まります。彼らは身を固くし、警戒しながらその方向を見つめます。

　やがて、城内から現れたのは、七尾城の城主であると思われる人物でした。彼の装いは華やかで、威厳を感じさせるものでしたが、同時に何か深い哀しみを秘めているような雰囲気も漂っています。

　城主はアレックスと凜に向かって一礼し、親しげに微笑みます。「ようこそ、旅の者よ。私は七尾城の城主、石川五右衛門尉。あなたたちの名は？」

　アレックスと凜は少し戸惑いながらも、礼儀正しく自己紹介します。彼らは時空を越えてきたことや、現代から来た者であることを説明しました。

　石川五右衛門尉は興味深そうに彼らの話を聞き入りますが、その表情には深い考えが浮かんでいるようでした。

「なるほど、時空を超えてきたというのか。奇妙な運命を持った者たちよ」石川五右衛門尉が静かに言葉を紡ぎます。

　その時、城内から響く急報の音が聞こえました。城主の顔が一変し、慌ただしく内に引き返すように命じます。

「旅の者よ、申し訳ないが、今は私の使いに従ってほしい。後ほど、話を続けよう」石川五右衛門尉が言い残し、城内へと急ぎます。

　アレックスと凜は混乱したまま、城主の使いに従い、城内へと向かいました。彼らの旅はさらなる謎と挑戦が待ち受けているようでした。