第6話
バスの中で、飛行機の中で、暗いターミナルと空港で、耳を塞ぎ、眼を閉じ、シミーがこちらに送ってくるメッセージを遮断した。
暗い場所でガラスのあるところ、鏡があるところ。
少しでもシミーと目が合わないようにした。
きっと、次にシミーの存在を確認したら、
その瞬間、わたしは。
飛行機で沖縄へと向かった。
南国にたどり着いた。
暖かい空気、晴れ渡った空、透き通った海。
飛行機を降りたら、沖縄の伝統衣装・ウチナースガイ(琉装)の女性に、ハイビスカスのレイをプレゼントされた。
そういえば、誕生日プレゼント、もらうこともなければ自分で自分に用意することもなかった。
今回の旅を、自分へのプレゼントにしよう。
今まで頑張ってきたんだから、いいよね。
ここにはシミーの気配はない。姿もなければ声も聞こえない。もうシミーの脅威に怯えることは、ないのだ。
この晴れ渡った空を見ると、学生時代の県の陸上大会に出場したことを思い出す。
晴れ渡った空の下、42,195キロを走りきった。
あの頃は日焼け止めもつけず、今よりもスリムな姿で黒く日焼けしていた。
頑張ったなぁ。
わたし。
「お前、あの頃から俺らのこと酷使してたよな」
恐ろしい声が聞こえた気がしたが、
気のせいだと思うことにした。
ゆいレールで好きなところに行ってみた。
ショッピングモールでは免税店でハワイアンジュエリーを買ったし、シークヮーサーのジュースを片手にサーターアンダギーを食べた。
お土産は何にしようかな。
もうシミーなんてどうでもいいや。
シミーに費やしたお金、もうだいぶ残ってないけど、この残りは沖縄土産にしよう。
タクシーに乗り換えてきたのは、海に面する見晴らしのいい崖の上だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます