汽車での出来事【1】
———
筆者から
展開の文句はもう皆ないね?おけですよね??
毎週日曜日更新。
また会おうね!
———
汽車に入ると、素朴ながら洋風を兼ね備えた空間が広がっていた。緑色の座席を見渡しながら自分達の座席を探す。
3人席の一番手前。そこが僕達の座席である。しかし、通路側の座席に仮面をつけた異質な存在が確認できた。こんな奴は事件の犯人の類に入るぐらい。それぐらい怪しい。
「君…」
言いかけて言葉に悩む。誰、と言えばそれは知らないし、なぜ仮面をつけているのか、理由を聞くのも野暮というやつだ。
「んー?お兄さん、僕のことかい?」
視線、表情は仮面で隠され、考えている事は分からない。
人差し指を自分自身に向け、僕に質問する。そのポーズは子供らしい。声は中世的である。見た目は男性なのだが。そんな思考をしつつ、答える。
「あぁ…。失礼だが、仮面をつけている理由をお聞かせいただければ…」
「その前に座らない?」
麻美さんが僕の後ろから声を掛けてくる。仮面を見て何か言いたげだったが。
それもそうだ。通路に棒立ちするのもよくないだろう。
「お兄さん達は、ここの座席なのかい?」
「うん!そうだよ」
麻美さんが代わりに答えてくれる。
「これも何かの縁だね。あなた人生が幸福でありますように…」
仮面の人間が何やら言葉を送ってくれる。別れの言葉があるように邂逅の言葉があるのだろうか。疑問を抱きつつ、座席に座る。
少なくとも悪い人間ではなさそうだ。感情移入は発動したくない。そもそも仮面があってできないのだが。
「それで…仮面の話だよね」
「あぁ」
「うん!」
僕と麻美さんが答える。
「それは…」
言いかけて言葉を止めた。そして顔はある方向をずっと見つめている。何を考えているのだろうか。
「あの女…
あっ。ごめん。こっちをずっと見ている女性がいて」
あそこ。と指がさす方向を向くと確かにずっとこちらを向いている女性がいる。
「僕が聞いてくるよ」
座席を立ち、女性の元に進む。
「あなたは、何を見ているのですか?」
失礼を承知でお聞きする、と後で付け足した。
「…」
「…」
「……あー人間観察」
?
意味が分からない。第一印象は変な人、というか関わりのある人間全員そうだ。
それと同時に汽笛が鳴り、列車が動き出す。
「どういう意味だい?」
「…」
「…」
「……あー珍しくて。王都グロニカ。えーと誰も行かないもん」
周りを見渡すと、麻美さん、隣に座る仮面の人、人間観察をする女性、座らず傘をさすもう一人の仮面の人間。
3人しか、この車両にいない
麻美さん以外、まともな人間がいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます