第62話 命名
これでサブリーダー全員の意思をまとめることができた。
ここからは三匹の地力を上げることを考え、ニコに行ったように魔物を狩らせようと思っている。
……が、その前に三匹に名前をつけたい。
いつまでもホブゴブリンやゴブリン希少種なんて呼ぶのは嫌だからな。
「三匹共に乗り気になってくれたのは良かった。これから俺の指示に従って強くなってもらう前に――俺が名前をつけたいと思っている。ホブゴブリンは嫌がると思うけどな」
「確かに私は嫌ですが、従うと決めた以上は受け入れますよ。私だけ名無しの方が今後浮きそうな感じがありますし」
「名前は本当に便利ですよ! 僕はシルヴァさんからバエルという名前を頂けて本当に良かったと思っています」
「オレもソウおもってまス!」
「うがっ!」
バエルの言葉にイチとニコも賛同したのだが、イチとニコに関しては適当につけただけだからな。
意思疎通がしっかりできると分かっていたなら、もう少しまともな名前を考えてやれば良かったと思わなくもないが……割と可愛いらしい名前だしまぁいいだろう。
「私は構いません。可愛い名前をつけてくださいね」
「シるヴァ! ナマエをツケてくレ!」
「分かった。まずは……ホブゴブリンがストラス。ゴブリン希少種はシトリー。そしてゴブリンソルジャーはアモンだ」
「ストラスですか。思っていたよりも……悪くありませんね」
「私も気に入りました。これからはシトリーと名乗らせて頂きます」
「アモン……アモン!」
バエルと同じように七十二匹の最悪の魔物から取った名前。
三匹とも気に入ってくれたようだし良かった。
「ストラス、シトリー、アモン。これからよろしく頼む。これから引っ越しをしようと思っているんだが三匹はどうする? 俺達のところで住むようにするか?」
「私は一緒に住みますよ。元の巣から結構離れていますし、明日から共に行動するとなったら不便ですからね」
「私は仲間を連れてきても大丈夫なら行きたいです 菜園とかも行っているので、皆で越してきたいと思っています」
「かなり大きな巣を作ったから、恐らく全員でも大丈夫だ。アモンはどうする?」
「オ、オレもナカまとイッショならイキたい!」
「あのゴブリンビレッジャー達か。シトリーにも言ったがもちろん大丈夫だ。とりあえずここで解散として、もう一度集まるって形を取った方がよさそうだな」
こうしてサブリーダーの三匹とは一度解散し、俺はバエル達ともに引っ越しの準備を進めることとなった。
引っ越しの準備と言っても既にイチ達がほとんど完了させているため、移り住むだけの状態。
「ようやくあの狭くて臭い洞穴の巣から出られると思うと嬉しいな」
「ですね。もう少し早く引っ越しても良いかと思っていましたが、時間をかけて作っただけあって良い巣が作れたと思います」
「巣に関してはイチのお陰だ。かなり気合いを入れて作っていてくれたもんな」
「タテモノつくるのタノしかったです! またナニカあったらオレがツクリます!」
「タンク兼、大工って感じだな。数が増えてきたら必要なものも増えるだろうし、イチには色々と建ててもらうことになるかもな」
「マカせてください! ニコはせんとうで、サブはカリでヤクにたっているので、オレはケンチクでがんばります!」
胸をトンと一つ叩き、頼もしい言葉を言ってくれたイチ。
本当にこの三匹は、三者三様で役に立ってくれている。
そんな会話をしつつ、俺達は新しい巣へとやってきた。
やはり要望通り建ててくれたこともあり、新しい巣の仕上がりはかなりいいな。
ぐるりと木の柵で覆われていて、そんな柵の中には複数の木の家が建てられている。
材料が足らなかったこともあり、何軒かは藁ぶきの家になってしまってはいるが、藁ぶきの家もしっかりと作られていて見栄えもいい。
これをイチ、ニコ、バエルの三匹で建てたというのだから、本当に賞賛に値すると思う。
何か報酬でもあげたいくらいだが、この森で暮らしている以上報酬となるものが手に入らないんだよな。
「本当に素晴らしい出来だな。俺達だけでなく、ストラス達が来ても余裕で住める大きさだ。もはや巣というよりも集落って感じだな」
「集落……いいですね。集落を拡張したい場合も、木の柵を広げればいいだけですので簡単に行えます。簡易的だからこそのメリットですね」
「数が増えていっても対応できるってことか。流石はバエルだな」
「いえいえ。建築図面を書いてくれたのはシルヴァさんですし、ほとんど建物はイチが主導でやってくれましたから」
謙遜しているが、バエルの知能の高さは本当にありがたい。
頭が良いであろうストラスとシトリーが下についてくれたことで、バエルの負担が少なくなってくれたらいいな。
「荷物の運び込みも既に終わっているし、これで引っ越しも完了か。後はシトラスたちが気に入ってくれるかだな」
「きっとキニいってくれます! モンクをいったら、モンクをいったやつにツクらせる!」
「確かにそうだな。まぁこの出来を見て、文句を言うとは思えないがな」
これで寝床の問題は完璧に解決した。
何の憂いもなく、明日から本格的に下克上に向けての準備に取り掛かることができる。
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