第21話 会得した能力
パラサイトフライの捕食した日から四日が経過。
罠を仕掛けた翌々日には獣がかかったため、この期間は罠にかかった獣の処理を行っていた。
今回罠にかかった獣はイノシシではなく、それなりに大きい雌鹿。
イノシシに比べたら体重も半分ほどしかなく、食べられる量も少ないが食材としては非常に優秀。
いつものように仕留めるところから始まり、血抜きに皮剥ぎに解体。
内臓部分は俺達で平らげ、翌日からは解体した鹿肉をジャーキーにする作業を行っていた。
これでイノシシのジャーキーと鹿のジャーキーが手元にあり、合計の重さは六十キロほど。
生の状態だったら余裕で百二十キロを超えていただけに、半分以下になってしまったのはかなり痛い。
ただ、これで次の食材を収める目途が立ったし、イチ、ニコ、サブに野草採取を行ってもらうことで、俺は自身の強化だけに力を注ぐことができる。
そして予定通り、最後の一週間で再び狩りを再開し、獣を狩ることができればその獣の肉を献上するつもりだ。
予定が決まったところで、いつものようにバエルとイチ達に指示を出す。
各々が動き出したのを見てから、俺は今日何を狩るかを考えることにした。
ちなみに【魔喰】のスキルによって、前回捕食したパラサイトフライの能力が発現している。
その能力というのは――手足から毛が生え、その毛によって壁に張り付くことができる能力。
正直コボルト以上に微妙な能力で、手から毛が生えた時は苦い顔をしてしまった。
不幸中の幸いなのは、使用したいと念じない限りは毛が生えてこないこと。
普通にしている分には以前と変わらない姿のままで、剛毛なゴブリンとして他のゴブリンから白い目で見られることはない。
それを差し置いても使いどころに困る能力だし、能力を使用中の体力の消費も想像に激しい。
逃げる際は助かるだろうが、どうせなら羽が生えて自由に空中が移動できる能力や、敵を自由に操ることができる寄生能力が手に入れることができれば相当な強化に繋がったんだけどな。
まぁ所詮はルーキーランクの魔物だし、過度な期待をした俺が悪かった。
とまぁ、命懸けで狩った割りにはしょぼい結果だったが、今の俺はルーキーランクの魔物しか討伐することができない。
いずれはあの洞窟にいたブラッドセンチピードも狩ってやるつもりだが、今はまだ早いため別の魔物を狙う。
この四日間で狙う魔物についての候補は決めており、とにかく攻撃手段を得ることができそうな魔物に絞った。
候補の一匹目は、パラサイトフライを狩った際の道中で見かけた――スイートアピス。
俺がアイアンランク冒険者の時に依頼でよく討伐した魔物で、人間の拳大のハチの魔物。
非常に強い毒針を持っており、特徴的なのはその毒針を飛ばして攻撃してくること。
単体の強さでいえばパラサイトフライ以下だが、大群で行動していて見つかると一斉に毒針を飛ばして攻撃を仕掛けてくる。
ちゃんと危険な魔物だが、単体でみた時は討伐難易度がグッと下がる魔物のため第一候補とした。
候補の二匹目は、どんぐりボマーという非常に温厚な魔物。
普段は木の上に生息しており、自らは人間すらも襲わない丸っこくて可愛らしい見た目をした魔物だが、自分の身に危険を感じた時は爆発する魔物。
弱って木から落ちたどんぐりボマーを踏みつけ、死亡した冒険者は数少ないほどその爆発の威力は強烈。
ルーキーランクで討伐難易度が低い割に、良い能力が得られそうな魔物の一匹。
そして最後の候補は、スライムという比較的どこにでも生息するメジャーな魔物。
水辺の近くに生息する魔物で、水の中に引きずり込んで自分の体の中で窒息死させて捕食する。
水の中では厄介極まりない魔物だが、陸地では比較的戦いやすい。
ただ物理ダメージは一切通らないのが特徴的で、物理で倒すとなるとスライムの中心にある核を壊さないといけない。
俺はスライムの倒し方を熟知しており、戦闘面で使える能力を得られるかは微妙だが、この中で一番戦いやすいのはスライムということで候補に入れた。
水場なら前回の探索で泉を見つけているし、あの泉の近くに生息しているということも分かっているしな。
一番危険だが居場所が分かっているのが、スイートアピス。
安全に倒せるが見つけるのが困難なのが、どんぐりボマー。
倒し方を熟知しており居場所にも心当たりがあるが、得られる能力が微妙そうなのがスライム。
三者三様にメリットとデメリットが存在しており、どの魔物を狙うか非常に判断に困る。
悩んだ末に出した答えは、まずはどんぐりボマーを探して見つからなければスイートアピスを狙う。
安全第一に動くつもりであり、単体を誘き出すことが不可能だったらすぐに諦め、スライムの討伐に変更するという流れでいいだろう。
そうと決まれば、早速どんぐりボマーを探しに行くとしよう。
巣で荷物の準備を整えてから、俺は森の中の探索に向かったのだった。
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