第100話 NPC、汽車の運営を始める
ユーマ達が待つ町に戻ると、入り口に人が集まっていた。
俺達が近づくと女性の悲鳴のような叫び声が聞こえてくる。
やっぱりキシャの見た目が受け入れられないのだろうか。
普通のムカデよりはツルツルして、つぶらな瞳で返事もするから、俺にとったら少し可愛く見えるけど他の人は違うらしい。
「お前も大変だな」
『キシャ?』
今も俺の言葉に返事をして、首を傾げていた。
「おーい、ヴァイト!」
ユーマは人混みの中で手を振っていた。
「何かあったのか?」
「いやー、俺達の話を聞いていた人達が、ぜひ町に一緒に連れてって欲しいって言っててな」
どうやら違う町に一緒に行きたいらしい。
さすがに山岳地帯を通って行くのも面倒なんだろう。
「んー、お金を取るけどいいか?」
せっかくキシャが運ぶなら、汽車らしくお金を稼ぐのも良さそうだ。
この世界の移動って基本馬車か徒歩だから、良い交通手段にもなりそう。
ついでに宣伝活動をしてもらえば、さらに稼げそうだしな。
「おい、なんか気持ち悪い顔しているけど大丈夫か?」
「ユーマは置いてくぞ」
「うわああああ、それだけはやめてくれ」
うるさいユーマだけ置いていこうとしたら、俺に引っ付いて離れようとしない。
さらに他の冒険者が悲鳴をあげたり、その場で崩れ落ちるから地獄絵図だ。
町の中にいる人達も何が起きたのかと、覗くぐらいだからな。
ただ、キシャを見てびっくりしていたから、やはりキシャが嫌われているからだろう。
「やっぱり大変だな」
『キシャ?』
一番幸いなことは、当の本人であるキシャが気づいてないことかな。
「じゃあ、落ちないように掴まれよ」
キシャの体に冒険者達はよじ登り、次の町に向かって進むことにした。
「おおお、おい!」
「なんだ?」
「どうやって体を支えるんだよ!」
キシャに冒険者を乗せて少し走ったら問題が起きた。
それは冒険者のほとんどがその場で落ちてしまうということだった。
体がツルツルしてるキシャの上では、あまりの勢いに体が投げ飛ばされてしまう。
今まで俺やヴァイルが落ちることはなかったから、気にしたことはなかった。
それだけ冒険者のステータスが低いのだろう。
次々とキシャから投げ出される冒険者はその場で諦めて、町に帰っていく。
もちろん現金はついた時に払う仕組みにしてあったから問題はないだろう。
それに投げ出された冒険者を拾っていたら、町に着くのに時間がかかってしまう。
その場で放置するしか方法がなかった。
一方、ユーマ達はステータスが高いのか、体が起こせないものの必死にキシャの体の隙間に指を入れてしがみついていた。
初めはみんな悲鳴を上げていたが、これもステータスが上がるから嬉しい悲鳴になっているようだ。
「あっ、魔物がいるな」
進行方向にゴリラのような姿をした魔物が現れた。
俺はキシャの上に立ち上がり、魔物に向かって弓を放つ。
まぁ、俺の弓って結構な威力が――。
――ドゴーン!
魔物を倒すつもりがそのまま貫いて、大きな道ができてしまった。
「やっぱり人間をやめているな……」
「よし、振り落とせ!」
『キシャ! キシャ!』
キシャも楽しそうにわざと体をしならせて、ユーマを振り下ろそうとする。
「うおおおお! やめて……。いや、もっとくれええええ!」
やめて欲しいのかもっとやって欲しいのかどっちなんだろう。
ただ、本当についていけない冒険者は次々と振り落とされていく。
気づいた時にはユーマ達しか残っていなかった。
「ちゃちく、たのしいね」
「おっ、ならもっとやるか!」
「うん!」
ヴァイルも楽しいのかその後もゆらゆらと揺られながら、俺達は町に向かった。
後にこれがイベント地獄の汽車と冒険者達に言われるようになったとか……。
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【あとがき】
「ねえねえ、オラにもあれほちい」
ヴァイルが話しかけてきた。
指をさしているのは画面下の関連情報のところのようだ。
「おほちちゃまとれびー!」
「ん? それって★とレビューってことか?」
「うん! オラにもちょーだい!」
どうやらヴァイルは★★★とレビューが欲しいようだ。
ぜひ、ヴァイルにプレゼントしてあげよう!
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