第82話 NPC、ユーマを探す

 この時間帯ならユーマは依頼を終えて町の中にいるはず。


 俺達は分かれてユーマを探すことにした。


 オジサンと子どもだけで歩いてて問題ないかって?


 勇者達の精霊がその辺にたくさんいるため、特に目立つこともないだろう。


 どの精霊も基本は一緒にいるが、放し飼いのようなものだ。


 むしろオジサンの方が活発的に動かないため、紐で結んで引っ張っている。


 ヴァイルにはしっかり紐を持って歩くように伝えたい。


 まず俺はレックスの家に行くことにした。


 ユーマは冒険者ギルドの訓練場にいるか、レックスの家で家事を一緒にやっている。


「レックスー!」


「おっ、今日も一緒にパンでも作るか?」


 俺はレックスの家に入ると、いつも・・・のように家の掃除をしていた。


 あれからレックスは家事をしっかりするようになった。


 パン職人のデイリークエストで一つはパンを作らないといけないため、せっかくだからとレックスと一緒に作ることが多い。


 人っていつ変わるかわからないからな。


 昔の俺も病気で遊べなくなったら、誰も遊びに来なくなった。


 そんな悲しい思い出もある。


「いや、今ユーマを探しているんだけど」


「ユーマか? 今日は来てないぞ。訓練場にでもいるんじゃないのか?」


「わかった! ありがとう!」


 俺はレックスにお礼を伝えて、冒険者ギルドの訓練場に向かう。


 訓練場には勇者達がたくさんいた。


「ヴァイト鬼ごっこしようぜ!」


「いや、ここは顔面落下だぞ」


「いやいや、俺はAGI重視だからな」


 気づいた時には勇者が寄ってくる。


 この世界では俺も人気者になった。


 みんなして遊びたいって言ってくれるぐらいだからな。


「あれ……? こんなところでどうしたんだ?」


 声をかけてきたのは解体師の男だ。


「ふふふ、君も一緒に捌こうか?」


「相変わらず迫力がありますね……」


 隣には解体師の弟子になった勇者がニコニコしながら、大きな包丁を持っていた。


 明らかに何かヤバいやつの目をしているが、犯罪は犯していないらしい。


 世の中変わった人が多いが、死んだ目をした勇者は盗賊の確保と解体師を生業としている。


 犯罪をしないためにここで衝動を抑制しているとか。


 見た目と違って良いやつだ。


「ユーマを見なかったか?」


「俺達は見ていないぞ?」


「へへへ、俺が捌いて――」


「ないだろ!」


 男は勇者に強めのツッコミを入れていた。


 衝撃でよろついているが、それでもニヤニヤとしている勇者。


 色んな意味で彼は勇者なんだろう。


 自分から大柄の男に叩かれて嬉しそうにしているからな。


「じゃあ、斥候の練習でもしているのか……」


 斥候のスキル練習をしていたら、正直見つけられるかどうかわからないだろう。


 隠れるために練習をしているからな。


「俺と鬼ごっこ……あれ? ヴァイトはどこ行った?」


 俺も斥候スキルを発動させて、勇者達から逃れる。


 ひとまず店に戻って、ヴァイルとオジサンが帰ってくるのを待ってみよう。



 しばらくするとヴァイルとオジサンが帰ってきた。


 手にはたくさんの食べ物が抱えられていた。


 たくさんお土産をもらったのだろう。


 町の人達もそれだけ慣れてきたってことだな。


 いや、思ったよりも目立っていたようだ。


 弟は世界一可愛いからな。


「ユーマは見つかったか?」


「いにゃいよ?」


「ワッシも見つからないぞ!」


 やはりユーマがどこにいるのかはわからないようだ。


 勇者達であれば居場所を知っているのかもしれないが、声をかける人を間違えるとナンパに思われる。


 稀に聞いたことのない、地獄からのような低い呻き声が聞こえてくるからな。


 ある程度距離は取っていたほうが良い。


「んー、どうやって作れば良いんだろうな」


「にゃ!」


 レモンをテーブルの上に置いてどうするのか考える。


「主人がいつも突っ走るからいけないんだぞ?」


「すまない」


 それを言われたら何も言えない。


 時間効率を良くするために、いつも急いでるからな。


「深刻な顔してどうしたの?」


 そんな中、デイリークエストを終えたチェリーが帰ってきた。


「ユーマがどこにいるかわからなくてな」


「あー、勇者のお友達だよね? この時間なら宿屋にいるんじゃない?」


「宿屋?」


 前に探したがこの町に宿屋はなかったはず。


 チェリーも職業体験を頑張りすぎて疲れているのかもしれない。


「あー、お兄ちゃん達には入れないもんね」


 どうやら勇者専用の勇者しか見つけられない宿屋があるらしい。


 リスポーンの宿屋と、また知らない勇者語を話していた。


「しばらくは臭い消しは作れないな」


「ワッシのモテモテ計画は遥か彼方に――」


「調べてみようか?」


 そう言ってチェリーはHUDシステムで何かをやり出した。


「レモンで臭い消し――」


「うわぁ! 別にユーマじゃなくてもよかったんだよ!」


 俺達は臭い消しの作り方を聞くために、ユーマを探していた。


 だが、調べられる人が他の勇者でも良いことを忘れていた。


──────────

【コンテスト新作】


ビーズログコンテストの作品です!

BL臭強めだが、恋愛しない笑い多めの作品です笑

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悪役令嬢の弟は今日もBLルートを突き進む〜視聴者参加型の乙女ゲームに転生したが、破滅フラグは折れてもBLフラグは折らせてくれないようです〜


https://kakuyomu.jp/works/16818093073684166952



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