隣人がDQNすぎて大嫌いなので異世界に送ったら美人一家が引っ越してきた件【仮】

三愛紫月

俺達がここに来た理由

俺は、家族全員でこの場所にやってきた。

H県にあるとある田舎町。

元々、俺はここではない世界に住んでいた。

そこでは、【勇者】って商売をしていた。

ただ、戦いが苦手だった。

だから、いつも【平和】って呼ばれる世界に憧れていたんだ。


ってのは、表向きの話し。

本当は、【ポンコツ】のじいさんのせいで……。

俺達、家族は人里離れた森にひっそり住んでいたんだ。

まずは、その話を始めようと思う。


▼▼▼▼▼▼▼▼


俺のひいひいじいちゃんである星井ノボルは、村一番の勇者だった。

そんな俺達は、代々勇者の一族で……。

【星井】という姓を名付けてくれたのは、その時の王様だったらしい。

【1等星】と【強い】という意味から名付けられたのだという。

俺達一家には、王様から立派なお城が与えられて、そこで祖父である星井ムワが産まれたのだ。

そんな祖父は、怪物や魔物を倒すために毎日毎日剣術をひいひいじいちゃんから教わった。

そして、祖父が12歳になった頃。

村人でも簡単に倒す事が出来る魔物である【オーダール】を倒しに行った。


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結果は【敗北】……。


その事がトラウマになった祖父は、二度と戦う事が出来なくなってしまった。

それから、祖父は村人達から、呆れられて恨まれるようになり。

ひいじいさんの代まで、【死人】は一人も出なかった村で、祖父に代わってから【何人】もの人が亡くなったのだ。


その事に悲しみと怒りを持った王様が、ひいじいさんが亡くなってすぐに【城】を祖父から取り上げた。

俺達一家は、路頭に迷い。

あてもなく、数週間さ迷い続けた結果。

たどり着いたのが、緑豊かなこの場所だった。


この場所は、かつて【魔導師】の村だったと祖父が話してくれた。

そのお陰で、この場所だけは怪物や魔物から守られている。

要するに、結界シールドが張られているらしい。

【祖父】は、何故かこういう話だけはやけに詳しかった。


【魔導師】達は、ある程度の期間同じ場所に住み続け。

食料が尽きれば、別の場所へと移動する。

だからここは、怪物や魔物にも襲われない代わりに食料も全くない場所なのだ。


「じゃあ、ここに住もう」


祖父の提案に、俺達家族は口を揃えて「馬鹿なのか?」と言った。


「じいちゃんに向かって馬鹿とは何だ!!」

「言わせてもらうがな!親父のせいで、俺は剣さえも握らせてもらえなくなったんだよ。【勇者】に憧れていたのに【城】は追い出されるわ!こんな食い物もない場所に住めと言われて。これじゃあ、死亡確定じゃねーーかよ」

「何だと!!ユウシを今まで育てたのはわしとマドカだぞ!ふざけるのもいい加減にしろ」


俺達の言葉を代弁するように父ユウシは怒っている。

ちなみに親父の名前は、【勇者】からとってつけたらしい。



【戦いたくない】癖に【勇者】に未練タラタラじゃねーーかよ。

俺は、親父の名前を聞きながらいつも祖父に思っていた。


王子おうし。とりあえず何か作物を作るぞ」

「どうやって?」

「知らねーーよ。とりあえず、これを植えたら何とかなるんじゃねーーか?」


俺は、親父からリンゴを受けとった。

こんなものをどうすればいいんだよ。

俺は、リンゴを見つめながら固まっていた。


あっ!!!

ちなみに、俺の名前が王子なのは……。

ひいじいさんが、【王様】をリスペクトしていたからだ。

俺にも【王様】のようになって欲しかったらしいが……。

当たり前に、なる事は、叶わなかった。

俺は、リンゴを埋めようと考える。


「父さん。ここに埋めたらいつか、食べれるかな?」 

「そうだな」

「何か、耕すものはないかな?」

「あーー。それは、これ使え」


親父が何の躊躇いもなく渡してきたそれは、錆びた短剣だった。


「ありがとう」

「いいって、いいって。どうせ、何の役にも立たないから、捨てようかとも思っていたんだけどな。ひいじいさんの形見だから仕方なく持ってきたけど……。役に立ってよかったわ」


親父の言葉に、胸いっぱいに広がる切なさを感じる。

せっかく、ひいひいじいさんが築き上げてくれたものを……。

ポンコツの祖父のせいで、一瞬にして奪われてしまったのだ。


俺は、錆びた短剣で穴を掘るとリンゴを埋める。

隣にいる親父は、【錆びた盾】で穴を掘っていた。


「じゃあ、これを育ててリンゴがなるのを祈ろう」

「そうだな」


本当にリンゴがなるかどうかは、謎だけど……。

食い物を確保できた事はよかった。



「取り敢えず、これだけの食料があればしばらく暮らしていけるなーー。王様もこういう所が優しいんだよな」


祖父は、王様がお情けでくれた食べ物を撫でている。

どうにか【勇者】にさえ戻れればそんなのいくらでも食えるじゃないか!

内心思っていたけれど、口には出せずにいた。

まあ、ここに住むのは確定したから畑とか作るしかないよな。




3ヶ月後ーー


「おい!じいさん。食べ過ぎなんじゃねーーか」

「五月蝿いな!ちょっとぐらい食べ過ぎたからってガタガタ言うな」

「ふざけるな!言うに決まってんだろ?お前のせいで、じゃがいも三つしか残ってないじゃねーーかよ。晩御飯で食べたら、明日から何食べるんだよ」

「お前が、作物の一つも作れないからこうなるんだ」


俺達一族の死亡が確定した。

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