36.桜が咲いて春が来て、

 柔らかな風が強く吹き付ける、快晴の水曜日。

 気圧は相変わらず人類に優しくなくて、明日はまた雨らしい。

 短い太陽の光を浴びようと、脳が起きる前に顔を洗って服を着て外に飛び出しました。

 欲求が、毎日交代でひとつずつお休みしている感じです。

 昨日は物欲、今日は食欲。

 まあ、多少なくてもそう困らないものばかりなので今は静観しています。

 慌てるほどに足を取られる、泥の沼。

 ここは、そういう場所なのかなと。


 山のような同意書に、まだ手をつけていません。

 手術まで一週間なのに、困ったもんだ。

 覚えている限りでも、麻酔、輸血、研究使用、となんだかたくさん名前と住所と生年月日を書く書類が、病院の名前を印刷した大きな封筒に詰め込まれています。

 あと、パジャマの申し込み書な。

 なんとなく気が重くて、でもやらなきゃいけないので予定としてサインをする時間をがっつり作ることにしました。

 せっかくなので、ロイホで最高のモーニングなんか食べちゃいながら倒そうと思います。

 ご褒美はなんぼあっても困ることなんてないですからね。


 明治通り沿いの桜が、ずらりと花をつけていました。

 ようやく、春がやって来ましたね。満開はまだもう少し先かな。

 三ヶ月、長いような短いような毎日でした。

 この日記は術後のオチがつくまでは、ぽつりぽつりと続けようと思っています。

 夏が来る前には、終わるといいね!

 フラグじゃないよ! フラグじゃないってば!


(続)

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