34.最悪のパターン

 閉経したら何が起こるのか、具体的に調べてみました。

骨粗しょう症・筋力低下、動脈硬化・脂質異常症、冷え性肩こり、子宮体癌、性交痛、性欲なくなる、もう帰っていいかなぁ!?

 泣いちゃいそう。作ってるホルモンにもろもろ直結してるんだってさ。

 特有の不安定さは解消されるかもらしい。

 ふーん。ふーーーーーーーん???

 そっかー。そっかぁ……。


 本当に、早いうちから準備しといて良かったって思ってます。

 お出かけコスメの厳選とかめちゃくちゃ好きなはずなのに、全然気乗りしない。

 これをスーツケースに詰めてしまったら、本当に全部が始まってワンチャン終わってしまうんだなと思うと何も考えられなくなります。


 生きてる限り最悪の選択肢は常に目の前にあって、残念ながら今回はその確率が少し上がっているだけのことですが。

 あーあ、こえーな。です。


 最初にその選択肢はなくなったと一度安心していた分、最悪のパターンを提示されたあの日から何かが私の体を薄い膜のようなもので覆っているような気がしています。

 極端な結論ではありますが、明日は今日の自分ではなくなってしまうかもしれない。

 それに付随する現実的な症状や、可能性の上がる病気についても、恐れないわけではないのですが。

 今はただ、この目に見えるものが、明日きらめきを喪ってしまうかもしれない。

 そのことが、ひたすらに怖いです。


 死ぬわけじゃないから、人生は続く。

 けれど、ときめきが失われた時に、私が笑っていられる理由が、この世界にどれだけ残されているのか。

 考えるだけで少しだけ、泣きたくなってしまう午後です。

 今起こってないことを考えて心配するの、本当非効率なんですけどね。


 腫瘍ができて、よかったと思うこともなくはないのです。

 新しい趣味のこと。

 別に術後だって、痛みさえなければいくらでもできるけれど。

 今までとまったく同じ生活がすぐ戻って来るなんて、さすがにドアホウの称号を欲しいままにしている私だって思えるわけがありません。

 ただ、今すごく楽しいです。いい年こいて何やってんだって思う人もいるかもしれないけど。踏み出してよかったって思ってます。

 知らない人と遊ぶのって、こんなに楽しいことだったんだなって。

 なんだか新鮮に、シンプルに楽しくて仕方がないです。

 負けるともっと強くなりたいって思うし、新しいものもいっぱい触りたいし。

 まだ見たことのない景色があるのなら、手を伸ばしてみたいなって今は少しだけ思います。


 不安なのが、自分だけではないことも実感しています。

 情報開示のタイミングは本当に悩んだけれど、ひとりじゃ絶対耐えられないと思ったからさ。

 事後報告じゃなくてごめん。

 まあ、死なないやつだからさ。もうちょっと付き合っていただけたら幸いです。

 皆様、ここまで読んでくれて本当にありがとうございます。


 最悪なんて、起こらないかもしれないから。

 今はただ、そう願いながら。

 なんでもない最高の一日に、明日もなりますように。


(続)

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