第15話
この特徴的なドライアドの住む村は、マップ上ではドライアドの里という表記がなされており、村の名前が定まっているわけではない。
このドライアドの里では草や植物に関するアイテムを手に入れることができ、中でも
例えば靡葉の指輪は、装着することによって草属性の攻撃力が上がったり、草を使ったポーション作成などの成功率や品質向上率が上がる。靡葉結晶は主に素材として使用されるものなので、私はあまり関係がない。生産職向きのものだ。
ちなみに、私はそのいずれも買う予定はないので、さくっとテレポートの登録をしたらドライアドの里を抜ける。
里を抜け、また街道を歩いているが、先ほどの街道と様子が異なっている。先ほどまではまだ木々が茂っているような森を進んでいたが、こちら側はどちらかというと岩場が多い。ポップするモンスターもロックゴーレムやアルマロウといった岩場系のモンスターが多いようだ。
ちなみに、アルマロウというのはアルマジロ型のモンスターで、防御力が高く、時折転がりながら移動すると言った面倒くさいモンスターだ。なお、討伐の最適解として研究がなされた結果、土属性の魔法で周りを囲い、その中に火を放つと勝手に蒸し焼きになるというのが発見された。非常に残酷であるが、現状でこれが最も効率の良い方法だそうだ。
それができない人はチマチマと攻撃するしかないようであり、素材などがいらないなら無視して進むのも手だそうだ。攻撃力はあまり高くない。
今私が歩いているような岩場は、武器などに使える素材が多く取れる場所でもある。確かに草原でも素材は採集出来るが、あくまで薬草であったりとか、そう言ったものが主になる。しかし、このような岩場で採集出来る素材は金属であったり、鉱石、宝石と言ったものになる。
それ故に、先ほどから時折プレイヤーとすれ違う。パーティーを組んでいる人が多く、誰かが採集をしている間に他のメンバーでその人を守ると言った形式を取っている人や、狩りをしながらチマチマと採集している人など、多種多様だ。
私はパーティーを組めるほどに交友関係が広くないので、私には関係のない話だなぁと思いながらそれらを無視して歩いて行く。
唯一採集依頼が来そうなくろねはゲームのトッププレイヤーの1人だし。わざわざ私に頼まなくてもいいんだろうね。チクショウ……!
まあでもいいし? 彼女曰く私も既にトッププレイヤーの1人らしいし。どうせここら辺にいる奴よりも強いから。あいつらは群れないと何も出来ないだけ。私は一人で何でも出来る。
「……はぁ、虚しい奴」
自分で考えていて虚しくなってきた。そんなことより今は攻略に集中するべきだ。
起伏の激しい岩場は、道もくねくねとしている。時折崖の様なところを進んでは、見える景色に圧倒される。このゲームにはもちろん天候というものが存在する。今日は雲量4といった程度だろう。過ごしやすい。
ちなみに、天気は層によって変わる。この層が土砂降りザーザーでも1層は快晴なんて言うことは普通にある。
先ほどまでの卑しい考えはいつも間にかどこかへ飛んで行き、山の斜面に沿って小さな道を進んでいく。
そんなとき、どこからともなく謎の叫び声が聞こえてきた。
「らぁぁぁあ~~くっ!」
???
よくわからないかけ声だ。どこかでパーティーが痴話げんかでもしているのだろうか。
そう思って気にせず進んでいたら、
ゴンッッッ!!!
「あがッ?!」
急に頭に強い衝撃が加わり、HPが一気に3割ほど持って行かれた。
そう、落石だ。
先ほどの叫び声、どうやら“落”というものだったそう。すなわち落石を知らせる合図である。私はそのような知識を持ち合わせておらず、避けられなかったというわけだ。
「ごめんごめん。怪我ない?」
「え? ああ、大丈夫」
「ごめんよ~、まさか下に人がいるとは思わなくて……」
先ほどの叫び声の人だろうか。斜面を急いで下ってきては転んでいた私に手を差し伸べてきた。
顔を上げてみると、そこにいたのは肩に付かない程度の短めの青色の髪の毛で、大分貧相な胸をお持ちのかっこいいお姉さんがいた。
「ごめんね。これポーションだから使って」
「ああ、ありがとう。でも本当に大丈夫だから……」
そう口では言うが、3割持って行かれたので遠慮なくポーションを使わせて貰う。
「あ、私サエっていうの。よろしく~」
私が立ち上がり、呼吸が整ったのを確認してから、彼女は右手を差し出しそう言った。
「私はハル。よろしく」
そういうと私は、彼女から差し出されたその右手を握った。
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