第9話 この世は幻、虚構の世界
西日が射す帰り道、一人歩くカイルは妙な気分に襲われた。
「何だろう、前にもあったような」
なんてことは無いが、今このような景色の中で歩いているのが過去にもあったシーンに思える。毎日同じような時間に通る道だから当たり前と言えば当たり前だが、それとは違う。毎日とは言っても少しずつシチュエーションが違う筈なのに、今日のこの感じは完全に過去に一度あったような感触なんだ。
「
カイルは気が付き始めた。
「おかしい。最近デジャブを感じることが増えた」
********* @ヘブン **************
「スターバック、あなたシチュエーションをコピーして使い回しているでしょ」
「ばれた?」
「カイルにもばれ始めてるわよ」
「いちいち新しく作るのはたいへんなんだよね」
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カイトは何人かの通行人とすれ違う。
(あれ、あの人、鳥の巣を出たところでも会ったような……)
********* @ヘブン **************
「スターバック、人の使い回しも多すぎるよ」
「気が付かないかと思ったけど」
「顔変えるとかきちんとしないと……」
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カイトは疑り深くなってきた。探ってやる。
次の日カイトはアバターを連れて市街地の散歩に出かけた。
まるで双子の散歩だ。
街並みは以前と変わらず、人々も賑やかに街を活気で潤している。
しかし、感覚の鋭い今のカイトには市民がエキストラ、演技に見える。
アバターを連れてきたのは、高速で移動させて、陰でエキストラがさぼっているのではないか?を確認するためだ。
サーシャから伝授された一連のサファイヤフラッシュテクニックを使えばいい。
通行人が曲がり角から見えなくなった瞬間、通り過ぎたオープンカフェの人達。
カイルはアバターを瞬間的に移動させて、変な動きがないかチェックし始めた。
もし演技を終わっていたら、陰では一息ついているはずだ。俺に見られている時だけ演技をしているはずだ。
アバターを瞬時に、
『動かす!』そして確認する。また、
『動かす!』そして確認する。
民衆は一瞬、動きが遅れて始まっているようにも見えるが、そこそこ違和感は無い。
********* @ヘブン **************
「ふーっ。
「私のフラッシュ技使ってる。ばれるのは時間の問題だわ」
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次の日、カイルはリンを連れ出してまた調査を行うことにした。リンの力も借りれば、絶対虚構の証拠を掴める!
「何カイル、まだそんな事言ってんの? 大事なアバターをこんな変な調査に使うなんて……」
「いや、リン。たぶん今日分かる。この世は幻、虚構の世界なんだ」
「はいはい。被害妄想ってやつね」
「アバターの準備はいいか?」
「いいよ。ばっちり」
「よし、調査に行くぞー」
二人は色々調査を進めた。市街の人達を観察し、乗り物の人達やイベントの参加者をチェックした。虚構は発見できていないが、さすがにリンも少し違和感を持ち始めた。
「どうだ? リン」
「うーん。確かに言われてみれば少し人々のレスポンスがわずかに遅めかも」
「だろ、おかしいって」
「でもこれだけじゃ……」
カイルは考えていた。何か決定的な調査方法は……? リンがこそこそとカイルに耳打ちした。
「サファイアフラッシュでさ、あの空き地を吹き飛ばしてさ……」
「何い? それはまた過激な……」
カイルはリンのアイデアに躊躇したが、結局合意した。
********* @ヘブン **************
「スターバック、あの子達何かやらかすつもりよ」
「うう。ばれてしまうか?」
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