第17話 夜明け前の誓い

 ラティアはディークが消えてしまった女神の宮殿から立ち退いたのは陽が登り、空が明るくなり始めてきた頃であった。

 街〈ベルン〉へと戻る為、たった一人、アバール砂漠の地を歩きながら、ラティアはディークの体の一部であったアメジスト色の宝石の一部である欠片をポケットから取り出し、自身の両手で強く包み込む。


「ディーク、私は貴方という人がいたこの世界で、果たさなければいけない役割を精一杯こなしてから、貴方がいる天の国へ行くわ。だから、その時まで私のことを見守っていて」


 自分の病を命をかけて治してくれた彼に対して、恥ずかしくない道をこれから歩み進んでいきたい。それが少女がこの地で決意した最後の物だった。


✾        


 その後、アバール砂漠を出たラティアは己の騎士である三人。ベルロット、バロン、ハレクと再会を果たし自国ラピティーアへと帰る為、歩みを進め4日かけて、ラパニア国の港に辿り着きラピティーア国行きの船に乗車した。


「良かったわ、貴方達、三人が無事でいてくれて」

「はい。私達もラティア王女と無事にこうして再会出来て安堵しております」

「ええ、」


 ラティアはハレクにそう返答し、出航した船から、まだ少し遠くに見えるラパニア国の港を見据えた。今に至るまでディークと過ごした時間の中で、色々な事があったなとラティアは船の甲板から見える陽の光に照らされた水面を見つめながら思い馳せる。


(彼は、私の命の恩人であり、生涯忘れられない人)


 ラティアは心の中で呟きながら、病を治した自分がこれから向き合い、やらなければならないことを精一杯取り組もうと強く心に誓ったのであった。

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